個人事業主に対し、報酬や料金を支払った事業者は、その明細を税務署に提出しなければなりません。
その書類を支払調書といい、源泉徴収票などと同じで法定調書になります。
法人または不動産業者である個人は、不動産の使用料等の支払調書の提出義務がありますが、はじめて提出する方や、書き方を忘れてしまった方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、不動産の使用料等の支払調書の書き方、提出期限などをお話しします。
不動産の使用料等の支払調書を提出すべき対象者とは
はじめに、支払調書についてお話ししていきます。
2019年6月時点で、法定調書は60種類あり、そのなかで所得税方に規定するのが、不動産の使用料等の支払調書です。
不動産の使用料等の支払調書の書き方をお話する前に、対象となる人についてチェックしていきましょう。
対象になる人については、すべての法人と不動産業を営んでいる個人になります。
しかし、建物の賃貸借の代理や、仲介目的とする不動産業の方には、提出義務は生じません。
では、どのような場合に、不動産の使用料等の支払調書の対象となるのでしょうか。
①不動産(不動産の上に存する権利も含む)、船舶(総トン数20トン以上の船舶のみ)、航空機の借受けの対価
②不動産の上に存する権利の設定の対価
ただし、提出範囲というものがあるため、1月1日~12月31日までに支払った金額が合計15万円以下である場合には、不動産の使用料等の支払調書の提出義務がなくなります。
なお、合計15万円以下であるかどうかは、消費税、地方消費税を含めて判断しますが、明確に区分されている場合には含めずに判断することができます。
不動産の使用料等に含まれるものを確認
それでは、不動産の使用料等に含まれるものについて、見ていきましょう。
●礼金や権利金
地上権、地役権の設定。
あるいは不動産の賃借に伴って支払われるものになります。
●更新料や承諾料
契約期間の満了に伴い、または借地の上にある建物の増改築に伴って支払われるものです。
●名義書換料
借地権や借家権を譲り受けた場合に、地主や家主に支払われるものになります。
このほかにも、イベント会場を賃借するような一時的な賃借料や、陳列ケースの賃借料、広告目的で塀や壁面など、土地や建物の一部を使う場合の賃借料についても、支払調書を提出する必要があります。
ちなみに、一時的に預かっている敷金や保証金については、返還されないと確定したときのみ、支払調書を提出してください。
不動産の使用料等に含まれるものがお分かりいただけたところで、次項からは不動産の使用料等の支払調書の書き方について解説していきます。
順番に書き方を見ていこう!
ここからは、不動産の使用料等の支払調書の書き方について、解説していきます。
書き方といっても、国税庁によって作成されたひな形を使って欄を埋めていくだけなので、むずかしいことではありません。
▼支払いを受ける者の住所(居所)または所在地
不動産の所有者、または転貸人の住所、主な事務所等の所在地を確認して記入します。
▼支払いを受ける者の氏名、または名称
書かれている通り、支払いを受ける者の氏名、または名称を記入します。
ここでは、屋号のみの記入ということのないように、気を付けましょう。
▼個人番号、または法人番号
社会保障・税番号制度の導入により、個人番号(マイナンバー)の記載が必要になりました。
こちらに、記入してください。
▼区分
支払金額の内容等に応じて、以下の区分を記入していきます。
・地代
・家賃
・権利金
・更新料
・承諾料
・名義書換料
・船舶の使用料
▼物件の所在地
物件の地代、家賃などの支払の基礎となった物件の所在地を記入していきます。
船舶、または航空機につきましては、船籍、航空機を登録した機関の所在地を記入してください。
▼細目
土地の地目や、建物の構造、用途を記入します。
▼計算の基礎
本年中の貸借期間、単位あたり賃借料、戸数、面積等を記入していきます。
▼支払い金額
未払いを含む確定をした金額を、区分別に記入していきます。
なお、消費税などの金額が明確に区分されている場合には、消費税などを含まない金額を支払い金額として書きましょう。
摘要からの不動産の使用料等の支払調書の書き方
不動産の使用料等の支払調書の書き方の続きです。
▼摘要
不動産の使用料等が地上権、賃借権、その他土地の上に存する権利の設定による対価である場合は、その設定した権利の存続期間を記入します。
▼あっせんした者
不動産等の借受けについて、あっせん手数料を支払った方が、「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の作成・提出を省略する場合は、以下の事柄をこちらに記入します。
・住所(居所)または所在地
・氏名または、名称
・個人番号(マイナンバー)または法人番号
・支払確定年月日
・あっせん手数料
▼支払者
不動産の使用料等を支払った者は、以下の事柄を記入します。
・住所(居所)または所在地
・氏名または、名称
・電話番号
・個人番号(マイナンバー)または法人番号
パターン別の書き方の例
不動産の使用料等の支払調書は、ひな形に沿って記入していきますが、さまざまなパターンがありますよね。
そこで、書き方の例をいくつかご紹介します。
●パターン①事業者が事業用に借りた宅地の使用料を支払った例
・区分 地代
・物件の所在地 契約書や不動産登記簿の記載に沿う土地の場所
・細目 宅地
・計算の基礎 本年中の貸借期間、単位あたり賃借料、戸数、面積など
・支払金額 土地を借りる際、貸主に支払った金額
事業者は、支払った地代を記録して、法定調書を作るときに備えておきましょう。
●パターン②土地や建物の所有者と法人が、賃貸借契約を結ぶときに支払った権利金を記録する例
・区分 権利金
・物件の所在地 賃貸借契約の対象になっている場所
・細目 土地の場合は地目、建物の場合は構造や用途
・計算の基礎 権利金の算定方法を詳しく記入する
・支払金額 所有者に支払った権利金の金額
なお、敷金については、返還されないことが決まっていれば、法定調書への記載が必要になります。
支払調書には提出期限がある
これまでお伝えしてきた不動産の使用料等の支払調書ですが、提出期限が決められています。
提出期限は原則、支払った年の翌年、1月31日までです。
この期限内に、所在地を管轄する税務署へ提出しましょう。
多くの場合、源泉徴収票など、ほかの法定調書の作成を一緒に行わなければなりません。
提出義務がありながら提出期限を過ぎてしまった場合は処罰の対象となってしまうため、全ての法定調書を期限までに提出できるよう十分に気を付けましょう。
どのように進めていくべきか計画を立てて、早めに作成に取り掛かれるといいですね。
法定調書は、税務署が資料情報により調査を行う上で、基礎資料として使用される重要なものです。
書き方は間違っていないか、記入漏れがないかなど、提出前に今一度確認しておきましょう。
また、e-Taxソフトでも、不動産の使用料等の支払調書を作成することができますので、利用してみてくださいね。
早めの準備を!
支払調書にはひな形があるとはいえ、確実に期限内に提出するためにも、早めの準備をしましょう。
通常であれば、支払った年の翌年の1月31日までが、提出期限になります。
記載漏れがあると再提出を求められることもあるため、提出する前に一度チェックしましょうね。
間違っていないか心配な方は、国税庁のホームページに手引きが記載されていますので、内容を確認してみてください。