家賃の支払いは、ひと昔であれば借主が貸主の元へ行って家賃を手渡しし、貸主から領収書をもらうということがありました。
しかし、近年家賃は銀行振り込みや自動引き落としなどになり、貸主が領収書を発行する機会は減ってきています。
とは言っても、なかには領収書を発行してほしいという借主もいますので、その際には領収書を発行する必要があるでしょう。
記事では、家賃の領収書の発行の仕方や、但し書きはどう書くのかをお伝えします。
最近の賃貸では家賃の領収書はどうしているの?
家賃を手渡しでもらうことが減っている今では、貸主が家賃の領収書を発行する機会は減っています。
それでは、実際に最近の賃貸では家賃の領収書はどうしているのでしょうか?
家賃を振り込みにする場合には振り込み明細書をもらうと思いますが、それを代用してほしいとしている貸主がいます。
また、自動引き落としでは通帳に引き落としが記載されますので、それを領収した証明として使ってほしいとする貸主もいます。
つまり、賃貸において家賃の領収書を発行しないケースが増えているのです。
家賃が手渡しだった時代には、その証明として領収書を発行することも当たり前でしたが、銀行を使っての家賃の支払いによって、直接お金のやり取りも領収書のやり取りもなくなってきたということですね。
領収書には但し書きを書く必要もありますし、間違いのないように注意しなければならないため、領収書を発行しないで済めば、貸主としては手間が省けることになるでしょう。
借主のほうでも、領収書の必要性がなければ貸主のところに出向く必要もないため、家賃に関わる領収書の手間が省けますね。
但し書きつき家賃の領収書!借主に請求されたら?
昔と比べ、家賃は銀行振り込みや自動引き落としが多く、借主からわざわざ家賃の領収書を請求されることはあまりないかもしれません。
しかし、賃貸を経営していれば、家賃の領収書を借主から請求されることもあるでしょう。
それでは、借主が家賃の領収書を請求してきた場合、必ず発行しなければならないのでしょうか?
これは、民法第486条による「受取証書の交付請求」で確認することができます。
その内容は、弁済者は弁済と引き換えに弁済を受領する者に対し受取証書の交付を請求できる、というものです。
賃貸の場合、弁済者というのは借主で、弁済を受領する者というのは貸主になります。
借主は家賃の支払いと引き換えに、貸主に領収書を請求することができるのです。
このように領収書を発行するのは民法でも決められていますが、もし借主が領収書を請求しない場合は一体どうなるのでしょうか?
もし借主側から何も言われないのであれば、わざわざ領収書を発行する必要はありません。
あくまでも、請求があった場合にのみ発行する必要があるのです。
なお、但し書きもきちんと書かなければならないでしょう。
家賃の領収書!基本の書き方を覚えよう
借主から領収書の発行を請求されたら、貸主としては領収書を発行しなければなりません。
こちらでは、家賃の領収書の基本の書き方を覚えていきましょう。
まずは、必ず記載すべき事項からです。
1.日付
2.借主の氏名
3.家賃の金額
4.但し書き
5.印紙
6.貸主の住所・氏名・印鑑
日付は、領収書を発行する日にちや領収した日にちにします。
年号や西暦も忘れずに記入してください。
借主の氏名は間違えることなく、正しく書きましょう。
家賃の金額の記載には改ざんできないようルールがありますので、それに沿う必要があります。
金額の前には「¥」を入れ、金額の最後には「-」を入れるようにするのです。
また、桁数をはっきりさせるためにも、3桁ごとに「,」も入れるといいでしょう。
但し書きは、何に対しての支払いなのか明確にするために必要になります。
印紙は、家賃が5万円以上の場合に200円分を領収書に貼る必要があります。
最後に、貸主の住所・氏名・印鑑を記載すれば完成です。
なお、但し書きや印紙の注意点については、後の項で詳しくご説明します。
領収書発行で忘れてはいけない但し書き!どう書く?
借主に家賃の領収書を発行する場合、忘れてはいけないのが但し書きです。
もし、但し書きが書かれておらず、家賃の金額だけ記載されていたらどうでしょうか。
金額がいくらかということや取引の相手は分かるものの、何のための領収書かは分かりませんよね。
そのようなことを避けるためにも、但し書きというものが必要になるのです。
具体的にはどのような記載するかというと、「但 〇月分の家賃として 上記正に領収いたしました」などと記載します。
ただ、領収書にあらかじめ「但 上記正に領収いたしました」という文面が入っている場合もあります。
その場合には、「〇月分の家賃として」とだけ記載すればいいでしょう。
但し書きがないと、借主が領収書を利用する際にきちんとした領収書と認めてもらえない場合も考えられます。
いつの家賃なのかをしっかりと明記することを忘れないようにしてください。
悪用される場合も!但し書きはきちんと書こう
借主から家賃の領収書を請求されて、もし但し書きを忘れてしまった場合はどうなるでしょうか。
通常なら、但し書きがある領収書を後から再度請求されるかもしれません。
この場合、もし領収書を再発行するのであれば、最初に渡した領収書は返してもらう必要があるでしょう。
借主のほうで最初の領収書を利用されてしまうかもしれないからです。
他に、但し書きがないことについて借主から何も問われなかった場合も考えられます。
この場合、借主のほうで好きな但し書きを書かれてしまい、悪用されてしまう可能性がないとは言い切れません。
最近では、但し書きがなかったり、金額がないような領収書をインターネットで扱って販売しているような人も見られます。
借主が但し書きを勝手に記載できるような領収書を発行しないことがまずは大切です。
金額を書く際に、後から改ざんされないよう金額の前に「¥」マークを付けたり、金額の後に「-」を付けるように、但し書きについても改ざんがされないよう気をつけることが必要なのです。
家賃が5万円以上の場合は領収書に印紙を!
借主に発行する家賃の領収書での注意点は、但し書きの件だけではありません。
家賃が5万円以上の場合に貼らなければならない印紙についても注意が必要です。
なぜ印紙が必要かというと、家賃を領収したことが明確である領収書などの文書には、印紙税がかかることが決まっているからです。
なお、貸主のなかには領収書の印紙代を借主に請求するような方もいるようですが、これは間違いです。
なぜなら、印紙代は家賃の収入に対しての税金であり、印紙代は領収書を発行した本人が支払う必要があるからです。
間違っても借主に印紙代を請求するようなことはしてはいけないのです。
また、印紙には、再利用されないように割印を押す必要があります。
割印を押すことによって、印紙を剥がして使われるような悪用を避けることができるでしょう。
家賃の領収書の但し書きは必ず書こう
家賃の領収書で大切なのは金額だと思いがちですが、何に使ったのかが分かるよう但し書きを書くことも忘れてはいけません。
もし、但し書きがない場合、借主が領収書を有効に使えないかもしれませんし、それを悪用されてしまう場合もあるかもしれません。
万が一のために、但し書きは必ず書く必要があるでしょう。
また、金額についての注意事項も忘れずに行ってください。
悪用を防ぐためにも、領収書は基本の書き方に則って記載漏れのないようにしましょう。