地目が原野と聞いて、すぐにどのような土地のことだか想像がつかない方もいるでしょう。
こちらでは、地目が原野の土地について、その売買は可能か、家を建てることは可能か、原野売買にまつわるトラブルのお話など、さまざまな角度から解説していきます。
原野の売買を考えている方はもちろん、他の地目の売買を検討している方も参考になさってみてください。
地目が原野とはどのような土地のことをさす?
地目とは、不動産登記法によって定められた土地の区分のことをいいます。
つまり、その土地がどのような土地か、何を目的に使用するための土地かを表し、その「土地の目的」を略して地目と呼ぶ、と置き換えると理解しやすいですね。
また、地目は23種類に区分され、特に多い地目には宅地、田、畑、山林、雑種地などがあげられます。
この5つの地目は、土地売買の対象になりやすく、地目の中でも重要な地目であるといっても良いでしょう。
そのほか18種類の地目の中でも、比較的雑種地との違いが分かりにくい「原野」という地目に焦点を当ててお話ししていきます。
原野は、「耕作の方法によらないで雑草、灌木類の生育する土地」とあります。
つまり、農地としての利用には向いていないなどの理由から、長年手も加えられずに雑草や灌木のような低い木が生い茂った土地のことをさします。
一方、雑種地は竹木、雑草、灌木類が生えておらず、ほかのどの地目にも当てはまらない土地のことをさします。
代表的な雑種地には駐車場があげられ、その漢字のイメージから原野と似た土地と誤解されがちです。
ほかにも、畑や田などでも、原野の説明のような外観になることもしばしばあります。
しかしながら、耕作をしていない土地でも、畑や田といった農地には変わりなく、原野として取り扱われることはありません。
数ある地目の中で家を建てることができる土地とは
では、数ある地目の中で、建物を建てられる地目は宅地だけなのでしょうか。
結論からいいますと、宅地以外でも山林や原野、雑種地などで家を建てることは可能です。
むしろ、家を建てるとなって、地目を山林や原野、雑種地から宅地に変更するケースは少なくないようです。
そのため、これらの土地を、家の建設を目的として売買をすることは、当然可能といえます。
また、田や畑は農地法によって、公衆用道路は道路法によって使用の制限があります。
しかし、山林や原野、雑種地といった地目の場合は、建築基準法上の制限はありませんので、そのまま家を建てられます。
しかしながら、宅地とは別の地目に家を建てた場合は、固定資産評価額が宅地相当に評価され、固定資産税も宅地並みになると思った方が良いでしょう。
そうでなくても、住宅ローンで家を購入する場合、後から宅地への地目変更を求められることが多いので、家を建てた後には地目変更の手続きをしておくようにしましょう。
原野の土地に家を建てたい!地目変更はどうする?
こちらでは、原野の土地に家を建てたい場合に、どういったことに気をつけたらよいのかお話ししていきます。
前述のとおり、地目が原野でも家を建てることはできます。
その際には、その土地を原野から宅地へ地目変更する必要があります。
もしも地目変更をしないでいると、違法となりますので注意しなければなりません。
違法と認められた場合には、後から余計にお金を払うことになってしまいます。
タイミングとしては、家が建ってからで問題ありませんので、ひと月以内に確実に変更手続きをしてください。
また、地目変更以外にも気をつけておきたいことがあります。
それは都市計画法の制限がないか確認しておくことです。
もしも、原野のある該当土地が市街化区域内にあれば、問題なく家を建てられるでしょう。
しかし、該当土地が市街化区域外の場合は、都市計画法の許可を得なければなりません。
さらに、市街化区域外の中でも、市街化調整区域に該当する土地がある場合は、原則として市街化調整区域は住宅などの建設が禁止されているため、家を建てることはほぼ不可能でしょう。
そのため、地目が原野の土地を売買するときには、建築に制限がないか確認してから土地を売買することをおすすめします。
地目が原野の土地の売買は可能なの?農地法にも注意!
地目が原野であっても土地の売買はできます。
そのときに、前項でお話しした都市計画法の制限がないことはもちろん、農地法の制限がないかも重要です。
登記簿上の地目が原野でも、現状が田や畑として使用しているとすると、農地法の許可を取る必要があります。
もしも、該当する原野が田や畑といった農地に相当していたら、農業委員会に農地転用を届け出ましょう。
該当原野が市街化区域内であれば、農業委員会に農地転用の届け出をします。
市街化区域外であれば、農業委員会に農地転用の許可の申請をしなければなりません。
そのため、もしも原野の土地の売買を検討しているのであれば、この農地法に引っ掛からない原野を選ぶようにすると良いでしょう。
現状農地と認められる場合はもちろんですが、家畜の採草放牧地と認められるような場合にも、農地法の適用に該当しますので注意してください。
地目が原野の土地売買で気をつけたい手口とは
原野商法という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
原野商法とは、地目が原野や山林などの、価値のない土地をだまして買わせるなどの悪徳商法のことです。
主に1960年代から1980年代頃に流行った土地売買の詐欺で、その手口には以下のようなものがあります。
●土地を売る
実際にはあまり価値のない土地を、高額で売りつける手口です。
電話や訪問によって接点を持ち、全盛期には新聞や雑誌の広告を使った勧誘が行われていました。
原野商法でも最も典型的なやり方です。
●土地を売らせる
先述した価値のない土地を買わされた人向けに、そのような土地を高額で買い取る、と持ち掛けてくるやり方です。
売る気にさせた後に、「とりあえず別の土地を買ってもらいたい」と別の土地の購入をさせ、音信不通になるといった手口で、結果的にさらに要らない土地が増えてしまいます。
●土地を調べて手数料をだまし取る
土地の所有者だけにとどまらず、親の買った土地を相続した人を対象にする場合があります。
土地を売るために調査や測量が必要などといったのちに、手数料を請求してから音信不通になる、これが主な手口です。
ほかにも、土地の管理費用などを請求するケースや、立て看板に伴う広告費を請求するなどのケースがあります。
原野の土地売買で2次被害?!詐欺に巻き込まれないように注意!
近年では前項でご紹介した手口で、原野商法に関連した詐欺にあう人が増えてきています。
原野商法の2次被害とも言われており、土地の保有者の「土地を早く売買して処分したい」という気持ちにつけこんだ詐欺です。
原野商法の詐欺に巻き込まれないためにも、以下のような点に注意することをおすすめします。
●将来的に高値がつく、などの文言には注意する
道路や線路、駅ができるから将来的に値上がりする土地、と偽って地目が山林や原野などの価値のない土地を買わせるのが目的です。
ここ最近では、太陽光発電や、仮想通貨のデーターセンターなどといった説明をする詐欺の場合もあります。
●買い取る契約のはずが、下取りする契約になっていないか確認する
近隣の土地と合わせて売買する必要がある、などといって別の土地をさらに購入するように求めてきます。
契約書を良く見せなかったり、急かしたりするときには疑ってかかりましょう。
●クーリングオフの説明があるか確認する
土地売買でも、相手の業者の事務所以外で契約をした場合にはクーリングオフができます。
また、業者側には契約前にクーリングオフができる旨を説明しなければなりませんので、クーリングオフができない、または明言を避ける場合には詐欺の可能性を疑いましょう。
●相手がちゃんとした業者か契約前に調べる
相手の業者がちゃんと登録されている、不動産会社なのかどうか確認しましょう。
ネットである程度までは調べることは可能です。
以上のような点に注意するだけでも、未然に詐欺にあう可能性を低くできます。
このような悪徳商法では、被害者側の不安心理につけこんでくるので、きっぱりと断ることも大切です。
焦らずに、専門家や家族とじっくり相談しながら、土地の売買を進めることをおすすめします。
地目が原野でも売買は可能!家も建てられる
地目が原野の土地はどのような土地であるかお分かりいただけたと思います。
原野でも家を建てることはできますが、建てた後には宅地へ地目変更が必要です。
地目変更をしないでいると違法となって、後々余分にお金を支払うことになってしまいます。
また、地目が原野の土地を所有している場合は、近年原野商法の2次被害が多くなってきているので注意が必要です。
家族や専門家に相談して、慎重に土地売買をしてくださいね。