擁壁について深く考えたことはあるでしょうか。
何気なく見かける擁壁にも、存在する意味やいくつかの種類があるのです。
今回は、そんな擁壁の意味や種類についての基礎知識をご紹介し、擁壁に欠かせない水抜き穴や、水抜き穴に設置するフィルターに焦点をあててお話ししていきます。
擁壁の見た目や耐久性を維持するためにも、擁壁についての知識を深めていきましょう。
擁壁の意味とは
斜面に建てられている家の境界線に、高低差を埋めるような壁状の構造物を見かけたことはないでしょうか。
その構造物は「擁壁」と呼ばれます。
斜面に家を建設する場合、その土地を一度平らにならす必要があります。
すると、隣の敷地との間に高低差が生まれることになります。
その高低差を何もせずにそのままの状態にしておけば、いずれ崩壊してしまうことでしょう。
そこで行われるのが擁壁工事です。
崖になってしまった部分を壁状にしっかりと舗装することで、土や水からの圧力によって崩壊することを防ぎ、家を危険から守ることになるのです。
この擁壁には、いくつかの種類があり、その種類によっては水抜き穴の設置が義務付けられていることがあります。
また、水抜き穴を詰まらせないためにも、フィルターの設置がおすすめです。
今回は、擁壁の中でも水抜き穴に焦点をあててお話ししていきますが、そのためにもまずは、擁壁の種類についてご紹介していきましょう。
擁壁の種類について
擁壁は大きく5つの種類に分けられます。
それぞれの種類の名前と簡単な説明をしていきましょう。
●コンクリート擁壁
別名RC造擁壁とも呼ばれるコンクリート擁壁は、その名の通りコンクリートでつくられた擁壁です。
現在では、一般的にコンクリート擁壁が採用されることが多いようです。
このコンクリート擁壁には、水抜き穴を設置しなければいけません。
フィルターの設置が義務付けられているわけではありませんが、水抜き穴に通したパイプが詰まることを考えると設置しておいたほうが賢明です。
●間知ブロック擁壁
ブロックを積み上げてつくられるのが間知ブロック擁壁です。
ブロックの間や裏側はコンクリートなどでしっかりと固められます。
この擁壁にも水抜き穴の設置が必要です。
●大谷石積み擁壁
採掘された大谷石を積んでつくられた大谷石積み擁壁は、昔ながらの家の擁壁によくみられる種類です。
耐久性に不安が残るため、新しい擁壁につくりなおすことが推奨されています。
●空石積み擁壁
石を積み上げただけの簡単なつくりをしているのが空石積み擁壁です。
大谷石積み擁壁と同じく耐久性が弱いため、こちらも新しい擁壁につくりなおす必要があるでしょう。
●二段擁壁
古い擁壁の上に新たに擁壁を積み上げる二段擁壁は、違法の構造物とされています。
5つの擁壁の種類をご紹介しましたが、この内「大谷石積み擁壁」「空石積み擁壁」「二段擁壁」は現在の擁壁の基準に満たない種類です。
そのため、もしご自宅の敷地にこの種類の擁壁がある場合は、新しい擁壁につくりなおすことを検討したほうがそこに住む人たちの安全につながるでしょう。
擁壁に水抜き穴が必要な理由は?
現在の法律の基準を満たした擁壁であれば、擁壁には水抜き穴が設置されているはずです。
そしてその水抜き穴には、法律によっていくつかの決まりが定められています。
宅地造成等規制法施行令では、壁面の面積3平方メートル以内ごとに、少なくとも1個の内径が7.5センチメートル以上の陶管その他これに類する耐水性の材料を用いた水抜き穴が必要と規定されています。
また、擁壁の裏面の水抜き穴の周辺その他必要な場所には、砂利その他の資材を用いて透水層を設けなければならないとも決められています。
このような明確な決まりがある理由は、台風や集中豪雨などの水による擁壁の倒壊を防ぎ、耐久性を増すためです。
水が持つ力は、私たちが想定している以上に強力です。
もし、水抜き穴を設けずに擁壁をつくってしまったら、水が排出できなくなり、擁壁の裏に溜まり続けることになるでしょう。
水が増えれば増えるほど水圧は大きなものになっていき、最終的には擁壁の崩壊につながる可能性もあります。
擁壁の崩壊による危険を防ぐためには、法律にのっとった水抜き穴の設置が必須です。
さらには、水抜き穴が詰まることのないように、フィルターを設置することを考えましょう。
水抜き穴の詰まりはフィルターで防ぐ
擁壁の裏側にたまった水を排出するためには、水抜き穴の存在が必要です。
しかし、水抜き穴が詰まってしまったら、水の排出ができなくなってしまいます。
このような事態を防ぐためにも、水抜き穴にはフィルターを設置しましょう。
水抜き穴には、擁壁の裏側から水が流れ出るように水抜きパイプが通っています。
そして、フィルターは水抜き穴の擁壁裏側の部分に設置します。
擁壁の裏側に接している水抜きパイプの入り口の周辺には、土砂が流れ込まないように砂利が敷かれているのですが、その隙間から細かな土砂が入り込んでしまうことがあります。
それを防ぐためにも、フィルターで穴を塞いでしまいましょう。
ただ、この場合は擁壁を工事する段階での設置が必要です。
そこで、すでにある擁壁に対しては、後付けのフィルターを水抜き穴に設置しましょう。
水抜き穴にフィルターを後付けしよう
もし、すでにある擁壁の水抜き穴にフィルターを付けたいのであれば、後付けのフィルターを設置してみてください。
後付けのフィルターの利点は、水抜き穴への異物の侵入を防ぐことです。
擁壁のそばを歩いているときに、水抜き穴の中にゴミが突っ込まれているのを見たことはないでしょうか。
あるいは、人の手が届かない場所の水抜き穴に、鳥や蜂などが巣をつくってしまうこともあるでしょう。
これでは、水の排出に滞りが出てしまいます。
いくら水抜きパイプの入り口にフィルターを設置しても、出口が詰まっていたら結局水はうまく排出されることはないでしょう。
水抜き穴を詰まらせないための最も効果的な方法は、水抜きパイプの出口と入り口をフィルターで2重にブロックすることです。
こうすることで、水抜きパイプの中に土砂や異物の混入を防ぎ、スムーズな水の排出が期待できるはずです。
フィルターだけで安心しない!流れ出る水にも注意
水抜き穴にフィルターを設置すれば、水抜きパイプが詰まる心配は少なくなり、擁壁への負担も減らすことができます。
しかし、水抜き穴から流れ出る水によっても、擁壁に被害が及ぶ心配があります。
水は植物が育つための一つの要素です。
そのため、地面に近い部分の水抜き穴の真下には、雑草が生い茂る可能性が高いです。
生えてきた雑草が見た目だけの問題であればいいのですが、雑草の種類によっては擁壁の内側まで根が侵食してしまう可能性もあるでしょう。
もし、長年その状態のまま見過ごしていれば、擁壁の耐久性にも影響を与えかねません。
擁壁の表面をきれいに保ち、雑草による被害を抑えるためにも、擁壁の下は水はけについても意識したほうが良いかもしれません。
もし費用面で余裕がある場合は、側溝の設置による排水も考えましょう。
擁壁の美観と耐久性のために水抜き穴にはフィルターを設置しよう!
擁壁をきれいに、そして強固に維持するためには、フィルターを設置して土砂や異物の混入を防ぎましょう。
フィルターを取り付ける部分は水抜きパイプの入り口と出口の2か所がありますが、両方を保護することによって、より安全性を保てます。
水抜き穴から排出される水は雑草などを繁殖させてしまいますので、定期的な草刈りや側溝の導入なども検討しましょう。