新築の住宅を建てる際に、ただ土地を購入して家を建てるだけではなく、「擁壁」を設置することが必要になる場合もあります。
ここでは、その擁壁についてのお話やその耐用年数、その他の構築物の耐用年数や対応策などについてもお話ししていきます。
これから新築・中古問わず、住宅の購入を考えている方は、ぜひ、参考になさってください。
「擁壁」とは?家を建てるのに擁壁が必要な場合
「擁壁」というのは、崖などのような崩壊の恐れのある土地の場合に、土留めをするために、コンクリートブロック・石などを使用して設置されるもののことで、構築物の一つです。
崖がある場合だけではなく、家を建てようとしている土地が道路から少し高くなっていたり、隣り合う敷地と高低差があったりする場合にも、盛り土の側面が崩れ落ちないようにするために設置する必要があります。
一般的には、上側に家を建てる人が費用を出して設置しますが、何らかの理由で下側を削る必要があり、高低差ができてしまう場合には、下側の家の人が費用を出すケースもあります。
擁壁は、隣家との間に設置するものですが、それをどちらかの敷地内ではなく境界線上につくる場合は、どちらか一方だけが費用を出すのではなく、折半をすることになる場合もあります。
境界線上に擁壁がある場合は、設置するときだけではなく、耐用年数が近くなり、補修が必要になったときにも、お互いがどのように費用を出すかの問題が起こる可能性もあります。
特に、中古物件を購入する際には、擁壁が境界線上にあるのかどうかということも事前に不動産会社に確認をしておくとよいでしょう。
擁壁にも種類がある!それぞれの特徴
擁壁というと、コンクリートでできている同じような壁のイメージがあるかもしれませんが、擁壁にもいくつかの種類があります。
●RC造擁壁(コンクリート)
コンクリートと言っても、無筋コンクリートと鉄筋コンクリートのものがあります。
そのなかにも、逆T字・L型・逆L型・重量式・もたれ式などと構造の違いがあり、立地条件に合う形で設置されています。
●間知ブロック擁壁
ブロックを使用している擁壁で、高低差の大きい場所に設置されます。
基準によっては5mほどの高さまでの擁壁を設置することが可能です。
●空石積み擁壁
石やコンクリートブロックを積み上げた簡単な構造の擁壁です。
造園用などのような高低差の少ない土地で設置されることが多くなっています。
強度が弱いため、1.5m以上の高さにするのは危険とされ、設置するとしたら対策が必要になります。
●大谷石積み擁壁
大谷石でつくられている古い構造の擁壁のため、風化や劣化が激しいことから、建て替えをする必要があるとされています。
空石積み擁壁や大谷石積み擁壁などのように、建築基準法の施行前につくられたものは、不適格擁壁とされています。
中古物件などでそのような擁壁が設置されている場合は、擁壁の改修工事費用も買い手が負担する必要がある可能性もあります。
耐用年数をふまえ、建物だけではなく、擁壁などの構築物についても不動産会社に前もって確認をしておきましょう。
擁壁は構築物?建物と構築物の違い
先述したように、擁壁は「構築物」の一つです。
構築物と建物の違いについてもお話ししましょう。
まず、建物というのは、次のようなものが含まれていることが条件とされています。
・屋根及び周壁などがある
・土地に定着している
・用途目的があり使用される
これらの条件を満たしている、住宅・アパートやマンションなどの共同住宅・店舗・工場などが建物と言えます。
そして、構築物は、その土地の上につくられた建物以外の工作物のことを言います。
構築物に含まれるものは幅広くありますが、おもなものとしては次のようなものがあります。
・擁壁
・門扉
・塀
・橋梁
・遊戯用具(すべり台など)
・駐車場などの舗装された設備
・トンネル
建物や構築物は、そのまま永久に使えるものではなく、それぞれに耐用年数が定められています。
この記事で取り挙げている「構築物」の耐用年数について、次章で詳しくお話ししていきます。
擁壁やその他の構築物の耐用年数
それでは、土が崩れ落ちないようにするために設置される擁壁の耐用年数はどのくらいなのでしょうか。
擁壁の構造の違いによって、耐用年数も異なってきます。
・鉄骨鉄筋コンクリートまたは鉄筋コンクリート造:50年
・コンクリートまたはコンクリートブロック造:30年
・石造:50年
・土造:40年
・木造:10年
また、擁壁以外の構築物の耐用年数は以下のとおりです。
・アスファルト舗装道路:10年
・水泳プール:30年
・すべり台やブランコなどの遊具:10年
・トンネル:75年
・橋:60年
・野球場や陸上競技場:30年
・水道用のダム:75年
擁壁の耐用年数は、ほとんどが30年以上となっていますが、中古物件の場合は、築年数が30年を超えている場合もありますので、擁壁のことを含めて検討をする必要があるでしょう。
また、子どもが使用する公園などのブランコやすべり台は、耐用年数が10年ほどと構築物のなかでも短くなっています。
特に耐用年数の短い構築物は、定期的に安全確認やメンテナンスをすることが大切でしょう。
耐用年数に近い擁壁は確認と補修が必要!費用を抑えるには
先述したように、擁壁を設置する目的は、斜面や盛り土が崩れ落ちないようにするためです。
しかし、長い年数が経ち、耐用年数に近くなってくると、擁壁内の土や水の圧力により、擁壁自体の崩壊などが起こる恐れも考えられます。
そのような崩壊などが起こってしまう前に、業者に依頼して擁壁の地盤の確認をしてもらい、新たな擁壁のつくり直しや補修を行なうことが必要でしょう。
ただ、擁壁を一度取り壊して新しくつくり直すとなると、費用や施工期間がかなりかかってしまいます。
そこで、今まであった擁壁を利用しつつその機能を回復させるという方法もあります。
その方法であれば、擁壁を取り壊すための費用や期間を抑えることができるでしょう。
自分たちがこれから住むと思われる年数と耐用年数を考えて、取り壊して新たにつくり直すか補修をするかを検討してみることをおすすめします。
次に、擁壁以外の構築物(駐車場のコンクリート)の耐用年数における対応についてのお話もしましょう。
擁壁以外の構築物も耐用年数を把握して対応を!
前章でお話ししたように、耐用年数が近くなってきた擁壁は、安全のために、つくり直しや補修が必要になってきます。
擁壁以外の構築物も同様で、家の周りに設置した塀や駐車場のコンクリートによる舗装など、年数が経つことにより劣化していくものが多くあります。
それらのような構築物も定期的なメンテナンスなどを行なうことがおすすめです。
たとえば、コンクリートの駐車場は、車の荷重による負荷や気温の変化、雨水などによりひびが割れたり、タイヤのあとが残ったりしやすくなってしまいます。
コンクリートを補修するのにも費用などがかかりますので、劣化を防ぐ方法をとることも一つの手段でしょう。
劣化を防ぐためには、次のような方法があります。
●枕木を使用する
タイヤが通る部分に、線路などに使われているような枕木を入れることにより、タイヤのあとがつくのを防ぐことが可能になります。
●雨水をためないようにする
駐車場にカーポートがあっても、コンクリートに雨水があたるようなつくりになっていると劣化が起こりやすくなる原因となるでしょう。
雨水がたまらずに流れていく仕組みにすることが必要です。
擁壁などの構築物にも耐用年数があり、劣化していくものですので、メンテナンスを行ない、できるだけ劣化を防ぐ方法のあるものは取り入れていくとよいでしょう。
安全のためにメンテナンスや補修を忘れずに!
建物だけではなく、擁壁などの構築物にも耐用年数というものがあることはおわかりいただけたでしょうか。
たとえ、最初に頑丈につくられた擁壁などの構築物であっても、年数が経つにつれて劣化していくものです。
それらがいつの間にか劣化して崩壊してしまう前に、様々な構築物のメンテナンスや補修を行なうことも視野に入れながら生活をしていきましょう。