これから家を建てることを検討している方のなかには、「地震や火災にも強い家にしたい」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
鉄骨造であれば、頑丈で火にも耐えられるのではないかと思われがちです。
しかし、鉄骨造の場合は、耐火被覆という工事をすることが法律で定められています。
ここでは、鉄骨造の建物をつくる場合に必要となる耐火被覆についてや、それが必要な範囲、その他の防火対策についてのお話をしていきます。
鉄骨造には耐火被覆が必要?その理由とは
建物の構造には、おもに、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造などがあります。
鉄骨など鉄を使った建築物であれば、どれも耐火性があるイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。
しかし、「鉄骨造」というのは、じつは「熱に弱い」ものなのです。
鉄骨造であっても、350度~500度以上の熱を加えるとやわらかくなり、強度が弱くなってしまいます。
建物火災が起きた場合には、最高で900度近くの温度まで上がるとされ、悪条件が重なるようなケースでは1200度までにも上ると言われています。
万が一、火災が起こってしまったら、何も施されていない鉄骨造の建物は、安全を保つことが不可能になるでしょう。
そのため、鉄骨造の建物には、「耐火被覆」を行なうことが建築基準法により定められています。
ただ、鉄筋とコンクリートを組み合わせている鉄筋コンクリート造の建物は、構造部自体が耐火構造になっているため、耐火被覆を行なう必要はないとされています。
鉄骨造に必要となる耐火被覆や施される範囲については、後ほどくわしくお話ししていきます。
木造は鉄骨造よりも火に強い?!
先述したように、鉄骨造というのはイメージとは異なり「熱に弱い」と言われ、耐火被覆をすることが定められています。
その反対に、木造は意外にも「熱に強い」とされています。
木が燃えたときには表面が先に燃えて、その後に炭化します。
そして、炭化した後は、ゆっくりと燃えていくため、「急に強度が落ちるということはない」と言われています。
炭化した範囲の部分がバリアのような役目を果たすので、炎によるダメージが届きにくいということになります。
それらのことから、万が一、木造の建物が火災になった場合には避難をする時間をかせぐことができ、建物が崩れ落ちる前に消火活動を行なえるため、被害自体を抑えることも可能になるでしょう。
ただ、「木造の建物がとても頑丈なのか?」というとそういうわけではなく、火災が起きた場合に、「避難するための時間をかせぐことができるというメリットがある」ということになります。
このような特徴を持つ木造は、「耐火被覆」を行なうことにより、強度も強めることができるのです。
鉄骨造などに施される耐火被覆とは?その範囲について
それでは、鉄骨造の建物に行なうことが定められている「耐火被覆」とは、どのようなものなのでしょうか。
現代のオフィスビルや倉庫などの建物は、鉄骨造のつくりであることが多くなっています。
しかし、これまでお話ししてきたように、鉄骨は熱に弱く、火災時の火によって耐久力が半分以下まで下がってしまう恐れがあります。
そこで、万が一、火災になった場合に建物の倒壊を防ぎ、避難をする時間をかせぐことを目的として、耐火被覆が行なわれることになっています。
耐火被覆とは、どのようなものかと言うと、必要な範囲を「耐火性の高い資材で覆う」工事をすることです。
その耐火被覆が行なわれる範囲はどのあたりかというと、建物の主要な構造部となっている鉄骨になります。
具体的な工事として、その鉄骨にどのような方法がとられるのかについて、次章でお話ししていきます。
鉄骨造などの建物に耐火被覆する際の工事方法
鉄骨造の建物には、構造の主要な範囲に対して「耐火被覆」をすることが定められているというお話をしました。
では、実際に耐火被覆する場合の工事方法には、どのようなことがあるのでしょうか。
まず、耐火被覆の工事で使用される材料は、セメント系のものとなります。
耐火被覆というくらいですから、「燃えない材料」が必要です。
そして、具体的な工事の仕方には次のような方法があり、場所によって異なります。
●吹付工法
セメントとロックウールを配合したものを使用して行なう方法です。
おもに、ショッピングセンターやオフィスビルの仕上げで天井などに使われます。
耐火被覆の工事のなかでも主流となっている方法と言えます。
●ケイ酸カルシウム板貼り工法
ケイ酸・石灰・セメント・繊維を配合した板である「ケイ酸カルシウム板」を使用した方法です。
使用される場所としては、倉庫などのような天井のない建物の梁部分が多くなっています。
●耐火塗料工法
耐火性の高い塗料を必要な範囲に直接塗るという方法です。
他の方法と違い、鋼材の見た目がそのままになるので、デザイン的な面では優れたものになります。
性質としては、熱を加えると塗料が膨張し、断熱層がつくられます。
地域により防火地域に指定されている範囲もある!
これまで、鉄骨造の建物には耐火被覆を行なう決まりがあるということをメインにお話ししてきました。
耐火被覆が行なわれるのは、火災の際に被害を最小限に抑えるためですが、それと同様の趣旨で行なわれている防火対策があります。
それは、都市計画法によるもので、人通りが多かったり、住宅や建物が密集していたりする市街地などの範囲に、「防火地域や準防火地域」が定められています。
住宅などの建物が密集していることにより、火災が起きた場合には火が燃え移り、被害が拡大する恐れがあります。
それを防ぐための対策として、防火地域・準防火地域にある建物は、その階数や延床面積によっても違いはありますが、「耐火建築物としなければならない」という決まりがあります。
防火地域では、耐火建築物とはならない木造住宅を建てることは原則としてできません。
しかし、近年では、階数や床面積などの条件次第では、木造でも建てられるようになっています。
ただ、準耐火建築物としての構造でできていることが前提です。
防火地域に指定されている範囲内での建物の規定
前章でお話ししたように、防火地域とされている範囲の土地には、木造住宅を建てることは、決められた条件を満たさない限りは難しいことです。
その他にも、防火地域においての建物の規定には様々なことがあります。
おもに、先述した「耐火建築物」にしなければならないということになります。
つまり、鉄筋コンクリート造の建物にするか、鉄骨造を耐火被覆することが必要です。
ただ、それだけはなく、建物の開口部分である、玄関のドア・窓・換気扇などを「防火性のある設備」にすることも必要になります。
たとえば、窓であれば、網入りガラスのような防火窓にすることが決められています。
開口部分以外の決まりとしては、屋根をつくる際に不燃材料を使用すること、外壁も防火材料が使われているものにすることがあります。
このように、防火地域や準防火地域には、鉄骨造を耐火被覆するのと同様に、万が一の火災時に備えた防火対策が行なわれています。
火事や災害に強い建物にするための参考に!
鉄骨造の建物には耐火被覆が必要な理由や、工事の方法などがおわかりいただけたでしょうか。
木造であっても、完全に弱いわけではなく、避難するまでの時間をかせぐための優れた性質があるというお話もしました。
また、防火地域や準防火地域で決められている耐火建築物のように、しっかりと防火対策がされた建物もあります。
耐久性のある家を建てたいという方は、そのような建物のつくりを参考にしてみてはいかがでしょうか。