皆さんは排煙窓をご存知ですか。
工場や店舗などの非住宅によく使われてる窓で、ワイヤーとそのワイヤーがつながった装置を使って、窓の開閉ができるようになっています。
こちらの記事では、排煙窓の役割や、排煙窓にありがちなトラブルやその原因、排煙窓の修理やメンテナンス方法などについてお話ししていきます。
排煙窓のトラブルでお困りの方に役立てていただければ幸いです。
排煙窓ってなに?その役割を知ろう
排煙窓とは、火災があったときに、火災により天井近くにたまった有害な煙を外に排出して、建物内の安全を確保することを目的とした窓です。
火災で生じる煙は、ときとして吸い込むことで人体に有害を及ぼすだけでなく、視界を妨げ避難方向を分からなくすることがあります。
そのため、排煙窓を始めとした煙を排除するための排煙設備は重要であるといえます。
また、排煙窓は、工場や店舗などの居住を目的としない建物でよく見かけられ、通常は人の手の届かない高い位置に設置されていることが多い窓です。
火災などの災害時以外にも、室内の換気用の窓としても利用が可能です。
また、手が届かない場所に設置されているので、排煙窓を開閉するには排煙オペレーターというものが備わっており、これを使って手の届く位置で楽に窓を開閉できるようになっています。
排煙オペレーターには、ボタンを押すだけで窓が開くものや、窓の開閉をハンドルと使ってするもの、スイッチ一つで電動により開閉するものなどの種類があります。
簡単に操作ができ、ワイヤーでつながった窓が外側に倒れて開き、閉めるときにはレバーでワイヤーを巻き取るなどで閉まる構造になっています。
排煙窓のトラブルで多いのはワイヤーなどが原因で「開閉ができない」!
排煙窓にまつわるトラブルで一番多いのは、窓の開閉に関するトラブルといわれています。
特に、非常時に開かないなどということがあると、煙が外に排出されず避難することが難しくなってしまうかもしれません。
排煙窓の開閉がしにくい、あるいはできない原因には以下のようなことが考えられます。
・ワイヤーが経年劣化により切れた
・排煙オペレーターのボックスの経年劣化や故障
・ワイヤーのささくれやほつれ
・ワイヤーがうまく巻き取れずに噛み込んでいる
・間違った方向にハンドルを回してしまいワイヤーがボックスの中で絡んだ
・さびや油、誇り、変形などにより滑車が回転しない
・サッシの腐食やさびなどによる不具合
このように、目に見えなかったり、素人ではどうすることもできないことが多かったりするため、専門業者に修理を依頼しなければならないことがほとんどでしょう。
そのため、非常時に困ることのないように、日頃からメンテナンスしておく必要があるのです。
ワイヤーが原因?排煙窓が開閉しにくくなったら
もしも、排煙窓を試しに開閉してみようとしたときに、開閉がしにくいと感じたら早急に点検してもらいましょう。
前項でも触れたように、ワイヤーの不具合が原因で排煙窓の開閉ができないことが多いとされています。
また、開閉の異常以外にも、正常に作動しなかったり、窓やワイヤーなどの異音がするときにも点検業者に連絡したりすることをおすすめします。
工場や店舗であれば、防火管理者である責任者に知らせると良いでしょう。
施設のメンテナンスに関わることは、連絡先が管理されているはずです。
または、排煙窓の排煙装置周辺に、設備の業者の連絡先が記載されているかもしれません。
専門の業者に連絡したら「不具合はどのようなことなのか」など、異常の内容をできるだけ詳しく説明するとスムーズに話が進みます。
また、もしも排煙装置に品番などが記載されているような場合には、手元に控えておくと安心です。
排煙窓は日頃からメンテナンスしておけば開閉しやすくなる
排煙窓は、基本的には火災のときに役立つ窓ですが、非常時以外でも1か月に1回程度、定期的に開閉をする習慣を付けておくと、いざというときに動かないなどということがなくなるかもしれません。
もしも、排煙窓が長い間閉鎖状態となっている場合、サッシが窓枠にくっ付いていまい、窓が開かなくなってしまうことも考えられます。
また、経年劣化によって、窓の開閉に使われるワイヤーが目に見えないところで変形したり食い込んだりしているケースもあります。
排煙窓は自然排煙設備とも呼ばれ、その自然排煙設備には特定行政庁に定期的な点検調査を行っていることを報告する義務があります。
そのため、非常時に排煙窓が正常に作動しなかったことが発覚した場合には、建物の所有者や防火管理者に責任が問われ、罰則が科せられることになります。
そのような事態を避けるためにも、排煙窓の定期的な清掃や注油、点検などが必要となるのです。
排煙装置を長く安全に使うためにも、年に1~2回程度の定期点検を行っておけば安心といえるでしょう。
排煙窓が閉まらなくなった!そんなときの応急措置は
排煙窓の非常時以外の開閉で、開かない場合と閉まらない場合とでは、閉まらない場合の方がより困るのではないでしょうか。
雨が降ってきたら室内が濡れてしまうことも考えられますし、鳥などの動物が入ってこないとも限りません。
閉まらない排煙窓を放置してしまうと、雨などの水分によってワイヤーや金具などの部品が劣化してしまう可能性もあります。
自力で閉めることが可能であれば、何らかの方法を使って早急に排煙窓を閉めておくようにした方が良いでしょう。
場合によっては、ワイヤーを強引に引っ張って何とか閉めるなどの方法が考えられますが、かなりの力がいるためあまりおすすめできません。
もしも高い位置にあって、自力で閉めることが困難であれば迅速な対処が肝心です。
メンテナンスの業者が明確であれば、排煙窓を閉めるための応急処置を教えてくれるかもしれませんので、電話などで連絡して指示を仰ぎましょう。
もしもメンテナンス業者が不明確な場合は、最寄りの排煙装置の専門業者を探して早急に連絡することをおすすめします。
修理には取り付け場所や位置によっては時間がかかることが考えられますので、先延ばしにしないようにしましょう。
ワイヤー入りの窓ガラスは防火性が高い!
火災時における排煙窓の重要性はお分かりいただけたと思いますが、こちらでは排煙窓にも使われている防火ガラスについて触れていきます。
ガラスの中に、細いワイヤーを使って編み目を作った網入りガラスをご覧になったことがある方は多いのではないでしょうか。
この細いワイヤーが入った網入りガラスは、最も多く使われている防火ガラスです。
網入りガラスのワイヤーの形状には、菱形ワイヤーと碁盤状になったクロスワイヤーの2種類あります。
普通のガラスは火や熱に弱く、火災時に熱によって割れやすく、割れると破片が飛び散ってしまいます。
そのため、特に防火地域や準防火地域に指定されているところでは、延焼の恐れがある部分や、窓などの開閉可能な開口部に防火ガラスを使用しなければなりません。
その点網入りガラスは、中にワイヤーが仕込まれているため、熱で割れてもガラスが飛び散る心配がないという特徴があります。
ただし、ワイヤーが入っているからといって、強度が強いわけではありませんので、防犯性能はないと認識しておきましょう。
また、網入りガラスは、ワイヤーによってガラスよりも温度が上がりやすく、局部的に加熱されるとガラスの熱割れが起きやすいガラスといえます。
そのため、網入りの防火ガラスの近くでは、ストーブなどの使用を控えるようにすることをおすすめします。
排煙窓は定期的にメンテナンスをすることが肝心!
排煙窓は、火災があったときに煙を外に排出するだけでなく、中にいる方たちを非難しやすくするためになくてはならない窓であることが分かりました。
排煙窓の定期的なメンテナンスは必要不可欠です。
年に1~2回点検を行うと、より長く安心して使用できるでしょう。
定期点検時以外の使用で不具合を認めたときには、早急に修理をして、その建物を使う方たちの安全を守りましょう。