アパート賃貸契約書の書き方、作り方で防げるトラブル

アパートの貸し借りで多くのトラブルが発生します。

契約書を交わし、お互い納得したはずなのに…。

長年これでやってきたから何も問題はない?

不動産業者のプロが用意した契約書だから大丈夫?

契約書の書き方やガイドラインなどを見直すことによって防げるトラブルがないかもう一度確認してみてはいかがでしょうか。

アパート賃貸契約書はなぜ必要なの?書き方があるの?

契約は口約束で成立することをご存知の方もいらっしゃるでしょう。

お互いの意思が合致すれば、口頭でも契約は成立するということです。

アパートの賃貸借契約は、貸主さんは家賃収入、借主さんは住居の確保とお互いの利益は一致しているので問題はないはずです。

しかし、貸借という関係はどうしても自由が制限されるため、トラブルは起こりがちです。
契約書ではっきりさせておくことで、お互いに納得し、約束しておけば未然に防げるトラブルがあります。

また、約束を守っていなければ、相手に正してもらうことができるという効果があります。

もし、約束を守らないことで損害が発生した場合には、相手からその契約を解除され、賠償を請求されてしまうのです。

それでは、どのような契約書を作れば、どのような書き方をすればトラブルを防ぐためによいのでしょうか。

契約書の書き方に決まりはないが基本形式がある

アパートを経営されている多くの貸主さんが、不動産業者を介してお部屋を貸し出されているのではないでしょうか。

その契約書は、不動産業者が書式を用意したものをそのまま使用する。

または、家主さんが必要な特約事項を追加・削除する、という形をとられていることが多いかと思われます。

一般の賃貸借契約書は、法律で決められている場合を除いて、自由な形で作成することができ、書き方に決まりはありません。

これまでの賃貸借契約の中で問題がなければ、従来の契約書で大丈夫だと思われます。

よく見ると追加・削除事項と条項や特約とが合っていないなど、今まで気付かなかったことがあるかもしれません。

例えば、原状回復についての特約で、「自然損耗および通常の使用による損耗についての原状回復を賃借人の負担とする」などとなっていると、無効となるケースがあります。

契約書の特約が抽象的な表現の場合や、消費者契約法施行前のままにしている場合、その特約は無効とされることがあるので注意が必要です。

不動産業者が用意する賃貸借契約書は、個別の貸主さん用に特別作成したものでない限り、それぞれの貸主さんに、すべて当てはまるものではありません。

そのまま流用すればOK、とはいかないものです。

貸主さんそれぞれの経営方針にあったものを作成することが、安定した経営につながることでもあるのです。

契約書の基本ができたら特約と内容を盛り込もう

アパートの賃貸借契約書として通常、書かなければならないこと、貸主としてこれだけは押さえておかなければならない事柄やポイントがあります。

書き方は自由ですが、契約書として作成する場合、下記の条項が必要です。

1.前文
2.タイトル
3.貸主と借主の表示
4.賃貸する物件と目的
5.契約の内容
6.作成年月日
7.署名押印
8.物件の目録/見積(5に含めることも可能)
9.後文

記載内容の詳細は、賃貸借契約書のひな型、テンプレートなどで検索しても、簡単にダウンロードすることができます。

また、国土交通省のホームページから「賃貸住宅標準契約書」(改訂版)をダウンロードすることもできます。

特約を作成する場合は、法律やガイドラインを参考にして、なるべくその趣旨に近いものにする必要があります。

契約書は2通作成し、貸主さんと借主さんが1通ずつ保管します。

賃貸借契約書は非課税のため、印紙を貼る必要はありません。

トラブル回避のアパート賃貸借契約書を作る

アパート賃貸借契約書では、トラブルになりやすい事項を明確にしておくことで、未然に防ぐことが大切です。

・契約内容に使用目的をはっきりと指定しておく
・保証人を連帯保証人にしておく

などの取り決めておきましょう。

例えば、借主さんが部屋で何か商売をはじめ、不特定多数の人が出入りし、他の住人の迷惑になる。

不確かな保証人で不払いの賃料を請求できないなどの、被害をあらかじめ防ぐことができます。

修繕費や通常の消耗や自然消耗の費用は、基本的に貸主さんの負担となります。
ですが、特約を設けることで借主さんの負担とすることができます。

更新料や税金、水道料、ガス料金の取り決めも必要です。

転貸借や賃借権を人に譲り渡すときなどは、家主の承諾が必要であることを設けておくと、より安心です。

また、法律の範囲内で貸主さんの方針を反映する禁止事項を設けることで、貸し出す相手を選んだり、間口を広げることも可能なのです。

これらに書き方はありませんが、トラブルを回避するためには、より具体的に項目を設けるとよいでしょう。

別紙に箇条書きや一覧項目を作成、該当箇所にチェックし、別紙参照する形をとるのが一般的です。

民法改正で契約書の保証人や敷金についての書き方が変わる?

2020年ごろに施行が見込まれる民法改正。

アパートの賃貸借契約にも影響があります。

「賃貸住宅標準契約書(再改訂版)(案)」によると、書き方について大きく変わるのが原状回復・敷金・保証人の3点です。

借主さんの責任で生じた汚損などは、借主さんの負担となります。

ただし、原状回復について通常の消耗や自然消耗の費用は、家主さん負担ということが義務化されます。

敷金については、借主さんへ返還しなければなりません。

返還するのは、今までと同じ賃貸借契約が終了し、お部屋を明け渡してもらった後になります。

そのとき、滞納家賃や借主さんの責任で、汚損・破損で損害が発生していたようなことがあれば、敷金から差し引いて返還することができます。

この2点については、特約で借主さんの負担とすること、敷金を原状回復に充てることができます。

ただし、貸主さんが事業者(法人)の場合、借主さんの利益を一方的に害するときは、特約を設けることはできません。

連帯保証人の項目では、保証する極度額の記入が必ず必要となり、保証される額が明確になります。

これらの変更点をふまえて、現在のアパート賃貸借契約書の書き方と何か違いがあるか、確認しましょう。

わからないことがあれば、不動産業者に聞いてみるのもいいかもしれませんね。

アパート賃貸借契約書は万全ではない

アパートの賃貸借は、お互いに利害関係があるとしても、貸主さんと借主さんの信頼関係で成り立っています。

アパートという生活に直結した、人と人の関係だけに、トラブルが生じることは仕方がないことかもしれません。

また、予想をはるかに超えるトラブルが発生する可能性もあります。

実際に、独立法人国民センターに寄せられた賃貸住宅の敷金、ならびに原状回復トラブルの件数は過去5年、平均14,000件を超えています。
(「借家」「賃貸アパート」「賃貸マンション」「間借り」含む)

毎日40件近くの相談が寄せられているということです。

書き方が難しく感じるため、こんなの形だけだからと、敬遠されてしまう方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、契約書を交わすということ、お互いに取り決めを確かめ合うことで、防げるトラブルもあるのです。

万全な契約書はない、とよく言われます。

「これはこういう意味なんだ」「そういう趣旨ではないんだ」と争いにならないために。

取り決めは、できるだけ具体的に明確にしておきましょう。

そして、貸主さんも借主さんも、お互いが同じ理解をしておくことが必要です。

アパートの賃貸借契約書の書き方を見直すこと

・表現があいまい、抽象的、不確かな点がないか

どのようにでも受け取れる表現は、内容によって無効になる可能性があります。

・契約書の内容が自分の方針と合っているか

特約の中に、必要な箇所とそうでない箇所が、現在の状況と合っているか、見直しましょう。

・特約が法律やガイドラインに違反、趣旨に反していないか

特約が無効になるおそれがあります。