賃貸物件に住んでいる以上、家賃を支払う義務があります。
しかし、何らかの事情で家賃の未払いを続けると、大家さんから裁判を起こされ、最終的には住居先から立ち退きしなければならないこともあります。
家賃の未払いは住むところがなくなるだけでなく、大きなリスクがともなうのです。
家賃の未払いを甘くみてはいけませんよ。
家賃未払いからの裁判、立ち退きまでの流れを知っておきましょう。
家賃の未払いはなぜ起こる?
賃貸物件が例え満室な状態でも、家賃未払い者がいると、大家さんの家賃収入は当然減少します。
つまり、借り主がいるはずのその部屋が、空室なのと同じことになるのです。
さらに、家賃未払い者がそのまま長く居座ると、大家さんの本来不必要なはずの労力や時間を、無駄に費やすことになるのです。
家賃未払いは、大家さんからしたら、とても迷惑な行為です。
なぜ、家賃未払いは起きてしまうのでしょうか。
家賃の未払い理由は、支払いを単純に忘れているだけ、突然の用事、払えない、払う気がないなど、色々な事が考えれられます。
大家さんが一番困るのは、お金がない場合や、払う気すらない借り主への対応と思われます。
<よくある家賃未払い理由>
・単純に忘れていた
・急病や怪我で入院していた
・旅行などで外出していた
・支払うお金がない
・支払う気がない
・音信不通や行方不明状態
借り主が家賃未払いのままでは、大家さんの生活に大きな打撃を与えます。
家賃の滞納には、裁判から立ち退きまで、様々な法律的な問題が関わってきます。
家賃の未払いが悪質な場合は裁判?
借り主の家賃未払いにより、今日明日に急に立ち退きを強いられることはありません。
立ち退きさせられる前には必ず、大家さんから電話や手紙などの催促がくるはずです。
ほとんどのケースは早急に手を打てば、それほど大きな問題にはなりません。
しかし、家賃未払い者の中には、大家さんからの催促を無視し続けて、立ち退きを余儀なくされた人もいます。
何度も督促しているにもかかわらず、居留守など使って、滞納した家賃を全く支払う気がない悪質なケースの場合には、裁判などの法的手段により「契約解除」「差し押さえ」「明け渡し請求」などの方法がとられます。
未払い家賃の支払いをしない場合には、退去・解約・契約解除などを願うという内容の「内容証明」が借り主に送付されます。
それでも何も変化がない時は、訴訟・強制執行により退去を求められるのです。
借り主が行方不明の場合には、まず連帯保証人に連絡がいきます。
そして、家賃未払い分についてと、部屋をこれからどうするかなどを話し合います。
さらに、借り主にも連帯保証人にも連絡がつかない場合では、「公示送達」を含めた法的手段に訴えることができます。
大家さんが裁判所へ申し立てを行う流れ①
大家さんが、裁判所へ申し立てを行う流れについてご説明します。
①内容証明による請求
前項でも少し触れましたが、家賃未払いから2ヶ月以上が経過すると、家賃の支払いの請求がきます。
それは「借り主に対して、家賃の支払い請求をした」という証拠を残すための郵便です。
つまり、大家さんが「裁判所への申し立ても考えている」という意味があるのです。
②契約解除通知
3~6ヶ月以上の未払いが続くと、今度は「賃貸契約の解除通知」が送られてきます。
ここで大家さんと話し合いをして解決できなかった場合は、大家さんが裁判所へ申し立てを行う確率が高いでしょう。
③不動産の明け渡し請求
裁判所へ申し立てる場合、たいていの大家さんは部屋の明け渡しのみでなく、未払い分の家賃、遅延損害金の請求も一緒にするでしょう。
④明け渡し請求の訴訟
裁判所を介して、借り主には「立ち退きに関する訴状」が送られます。
裁判においては、当事者間の意見と、その意見を裏付けるための証拠を提出する必要があります。
その為、賃貸契約の裁判では、大家さんと借り主の信頼関係の破綻が問われます。
どちらに落ち度があったのかによって、判決は左右されます。
この訴訟への出席は任意です。
しかし、借り主が出席しなかった場合は、さらに立場を悪化させかねないことを想像するのは容易ですね。
大家さんが裁判所へ申し立てを行う流れ②
大家さんの主張が認められた場合に作られる文書では、大家さん側に、強制執行を行う権利を認めています。
⑤強制執行の申し立て
大家さんから、部屋の明け渡しの交渉をされます。
その時は、退去する日の調整をすることができます。
ですから、次に住む場所を探すためにも、退去日を調整してもらえるように交渉するべきです。
交渉がまとまらない場合には、強制執行の申し立てを行います。
そうなると当然、家賃未払い者に、強制執行の日程を選択する権利はありません。
⑥裁判所から立ち退きの催促
裁判所から立ち退きの催告状が届きます。
この催告状の内容は、1ヶ月以内の退去を命じたものです。
⑦強制執行
催告状に指定された時までに立ち退きをしなかった場合は、執行官によって強制執行されます。
部屋の家具や持ち物も撤収されます。
大家さんによっても違いますが、立ち退きのみではなく、未払いした家賃の返還請求の訴訟もしていた場合、給料やお金に換えられる価値のある資産も、全て差し押さえされます。
家賃未払い者は肝に銘じて!立ち退きによるリスク
裁判後に、強制的に立ち退きをさせられた場合、実家などに帰れる人ならまだしも、帰る場所も住む場所もない人は、ホームレス化してしまうことさえあります。
そうなってしまうと、就職や転職活動、次に住む家の賃貸契約にも大きく影響します。
立ち退きしてから背負う負債やデメリットを、侮ってはいけません。
●未払いした家賃の延滞金
部屋を明け渡しても、未払いの家賃の支払い義務は、残念ながら消えません。
しかも、未納分の家賃にともない、未払い期間に応じた延滞金が課されます。
遅延損害金は、「延滞金=未払い分の家賃×遅延損害金利率×0.01×未払い日数÷365日」で計算されます。
言うまでもありませんが、支払いが遅くなるほどに、大家さんに支払わなければいけない金額は多くなりますよ。
●不動産会社や保証会社の信頼を失う
不動産会社や保証会社は、ブラックリストを作っています。
一度強制退去になった人は、社会的信頼を失います。
ブラックリストに名前が掲載されてしまうことにより、これからの賃貸契約に大きく響いてしまうのです。
家賃未払い者が大家さんから立ち退き要求されたらどうしたらいい?
裁判の判決によっては、強制執行が行われる場合もあります。
残念ながら日本全国には、実際に強制執行が行われ、住む場所を追われた人もいるのです。
強制執行なんてことになっては、前項でお伝えしたような、大きなリスクを背負うことになりますね。
このような事態に陥らないためにも、大家さんから立ち退きを要求された場合はどうしたらいいのでしょうか。
家賃の支払いに困ってきたら、やはり大家さんへ早めに相談しましょう。
裁判には大金がかかります。
そのため多くの大家さんは、なるべく訴訟まで話を持っていきたくないと考えています。
ですから、なるべく早い段階で、未払いした家賃に関する取り決めを行ってもらいましょう。
その時に、今の収入、家賃以外の生活費を元に、経済的に余裕がないことを訴えて、理解してもらうのです。
そのうえで、支払い日を決定したり、支払い可能な金額を元に、未払い分の家賃の分割支払いについても話し合いましょう。
大家さんと交渉する際に、気をつける大事なことがあります。
それは、未払いに対する心からの謝罪の気持ちと、これからは滞納しないという、強い支払いの意思を伝えることです。
もちろん、お世話になっている大家さんへの感謝の気持ちも忘れてはいけませんよ。
人生を棒にふらないためにも払うべきものは払う
どんな事情があれ、家賃の未払いなどの契約違反は、賃貸経営者に大きな支障をもたらします。
立ち退き後に抱えなければいけない負債やデメリットは、想像以上に大きいのです。
もしも現在、家賃の未払いが続いている方は、早めの段階で大家さんへ相談しましょう。