擁壁と塀の違いはあるの?それぞれの役割について学ぼう!

擁壁(ようへき)と塀という二つの言葉を聞いたことはあっても、それぞれについて詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。

とくに、擁壁は普段からなじみのない言葉だと思います。

擁壁と塀は、敷地の境界線上に設置されることがほとんどで、土地を所有している、あるいはこれから土地の購入予定がある方には重要となるはずです。

この記事で、それぞれの役割などについてご紹介していきますので、擁壁と塀の違いについて学んでいきましょう。

二つの違いを知ろう!まずは擁壁について

擁壁と塀の違いとは何なのでしょうか。

そんな疑問にお答えるするために、まずは擁壁について詳しく知っていきましょう。

擁壁とは、建物を土砂などから守るために設置される壁のことです。

いわゆる土留めのようなもので、素材にはコンクリート・ブロック・石などが多く使われます。

高低差のある土地に建物を建てると、斜面になっている土壌が横からの圧力によって崩壊してしまう恐れがあります。

その危険を未然に防ぐために、擁壁が必要になるのです。

斜面の土は、緩やかな傾斜であれば、よほど大きな力が加わらない限り崩れ落ちることはありません。

その安定した傾斜の角度のことを「安息角」と呼び、一般的には35度前後と言われています。

安息角を超える傾斜を持つ土地では、擁壁が必要となります。

また、隣接している土地との高低差が、宅地造成工事規制区域内では1m以上、その他の区域では2m以上ある場合は、擁壁の設置が義務付けられます。

擁壁とどんな違いがある?塀の役割とは

擁壁について前述してきましたが、一方塀とはどのようなものを指すのでしょうか。

塀とは、建物や敷地の境界に設置されるかこいのことです。

その素材には、木・土・コンクリート・金属などざまざまな種類があります。

塀の持つ役割には、次のようなものがあります。

●プライバシーの保護

敷地の境界に塀があることで、外からの視線を遮ることができます。

プライバシーを守るために、塀が役に立ってくれるでしょう。

●防犯対策

高い塀が空き巣などの侵入を実質的、心理的にブロックしてくれます。

●境界を定かにする

塀は敷地の境界に設置されることが多いので、道路や隣家との境界を視覚的に明確にすることができます。

ここまで擁壁と塀についてお話ししてきましたが、二つの違いが少しでもお分かりいただけたでしょうか。

さらに二つの違いを知るために、建築基準法における擁壁と塀の定義についてお話ししていきましょう。

建築基準法における擁壁と塀の違いとは?

建築基準法において、擁壁と塀の違いはどのように記されているのでしょうか。

建築基準法で大切になるのが、建築物とみなされるかどうかということです。

もし、建築物とみなされることになれば、建築基準法の規制を受けることになります。

最初に、塀についてお話しします。

塀は、建物が隣接しているかどうかで扱いが変わってきます。

建物に付属する塀の場合は建築物とみなされ、周りに建物が無い塀の場合は建築物ではないということになります。

そのため、建築物ではないとみなされた塀は、建築確認を受ける必要がありません。

もし、塀が建築物とみなされる場合は、塀の高さは2.2m以下という規制が適応されます。

また、塀の高さによって厚みも決められ、2m以上の高さを有する塀は厚みが15cm以上、2m以下の場合は厚みが12cm以上となっています。

次に、擁壁についてです。

擁壁は、塀と違い建築物であっても無くても、2mを超えるものは建築確認を受けなければいけません。

擁壁については次章でさらに詳しくお話ししていきましょう。

擁壁についてさらに詳しく学ぼう!

擁壁と塀の違いを知るために、擁壁についてさらに深掘りしていきましょう。

擁壁は、建物や私たちの生活を守るために大切な役割を果たしています。

そのために安全性の高さが重要になり、擁壁を設置するためには多くのチェックが必要です。

擁壁のチェックポイントは次のようなものがあります。

①損壊しない

②倒れない

③基礎が横滑りしない

④沈下を起こさない

擁壁が崩れてしまうと、自分の敷地だけではなく、第三者の敷地にまで被害が及ぶことがありますので、建築基準法に準じた擁壁づくりが大切です。

また、擁壁の種類も重要なことの一つです。

土の重さや圧力、地震の揺れなどによる地盤の強さ、擁壁自体の重さなどによって、さまざまな種類の擁壁を使い分けることができるので、いくつかご紹介していきましょう。

擁壁には様々な種類がある!

それでは、擁壁の種類についてご紹介していきます。

●現場打ちコンクリート擁壁

施工現場で、直接コンクリートを流し込んで形成していく擁壁の種類です。

擁壁を設置する場所が複雑な形をしていても、施工が可能です。

現場打ちコンクリート擁壁は、無筋コンクリートの重力式・鉄筋コンクリートの反重力式・山側に勾配をつけたもたれ式などに分けることができます。

●コンクリートブロック式擁壁

ブロック状のコンクリートを現場で施工していく形の擁壁の種類です。

施工期間が短く済むのがメリットです。

●石積み式擁壁

昔ながらの擁壁として知られているのが、石積み式擁壁です。

積み上げる石の種類を選べば、風景との調和により、風情を感じることができます。

石積みで施工した擁壁の上に、板塀やブロック塀・フェンスなどものせることができ、汎用性の高さがうかがえます。

擁壁の種類により、仕上がりに違いが出てきますので、擁壁を施工するときの参考にしていただければ幸いです。

違いはあるが擁壁も塀も維持管理は所有者の責任!

擁壁や塀に違いはありますが、その後の維持管理は所有者の責任になります。

今後、擁壁や塀を修理したり、施工しなおしたりする場合は、所有者が費用を出さなければならないのです。

そのため、まずはその擁壁と塀の所有者が誰になるのかをはっきりとさせておかなければなりません。

自分の敷地内に擁壁と塀がおさまっているのならば、その所有者は紛れもなくその方ということになります。

しかし、擁壁と塀が境界線にまたがっている場合はどうなるでしょう。

境界線上に塀があるのならば、所有者は共有ということになります。

しかし、塀を建てるときにどちらか一方が費用を負担したのであれば、負担した方に所有権があるということになります。

擁壁の場合は、少し複雑です。

擁壁は斜面に設置されることがほとんどなので、境界線があいまいになってしまい所有者がどちらか分からなくなってしまうことがあるのです。

擁壁がどちらか一方にすべておさまっているのなら分かりやすいですね。

擁壁がある場所、あるいは擁壁をこれから作ろうとしている場所の中央に境界線がある場合は、所有者を決めるのが難しくなってきます。

いずれにしても、境界線がまたがっている敷地の所有者同士で、話し合いによる解決をはかる必要が出てきます。

土地の境界線にトラブルはつきものですが、これからもお隣同士で上手くやっていくために、お互い納得できる答えを出せるようにしましょう。

目的によって擁壁と塀は使い分ける!

塀は敷地の境界線を明確にし、居住者のプライバシーを守ってくれます。

一方、擁壁は斜面からの土砂崩れを防止し、建物や居住者の安全を確保してくれます。

どちらも、目的によって使い分けることで、大切な役割を果たしてくれるでしょう。

擁壁も塀も経年により劣化は進みます。

その後の維持管理は所有者の責任になりますので、その点は頭に入れておきましょう。