アパートの契約において、契約書に印鑑を押す時には借主と貸主が対面して確認しながら進めていくイメージがありますよね。
しかし、契約を進めていたところ、自宅に契約書が郵送で送られてきて押印のうえ返送するように伝えられる場合があるようです。
これは法律上大丈夫なのでしょうか。
その疑問にお答えしていきます。
郵送されてきたアパートの契約書!そのまま押印して返送でOK?
これまで暮らしていた場所を離れて新たな地に移る時、まずは引越し先に住居を手配する必要があります。
生活の基盤となる住居が決まらなければ、引っ越しに伴う転入届などの手続きも行えませんので、重要なことですよね。
そんな新たな住まいとなるアパートを契約する手続きをしている際に、もしかしたら契約書の扱いについて疑問を感じることがあるかもしれません。
それは、アパートの契約書が郵送で送られてきた場合です。
引越し先が遠隔地であることなどを理由に、郵送されてきた契約書に押印をしたうえで返送を求められることがあるようです。
一般的に契約書に押印をする際には、貸主と借主が一同に介して、契約書の重要事項を確認しながら手続きを進める印象がありますよね。
そのような手続きを省略して、郵送で行ってもいいのでしょうか?
こういった契約方法には、はっきりと言ってしまうと問題があります。
次の項からは、どのような点で問題があるのかについて見ていきましょう。
郵送での契約書取り交わしは基本NG!重説は対面が基本!
新たに引っ越す土地が今の所在地よりも遠い場合、アパートを借りるための手続きを進めるために何度も現地に赴かなくてはいけないのは大変です。
そのため、契約書などの必要書類を郵送でやり取りして契約を進めるような事態が稀にあるそうです。
手続きが簡略化されて、現地に行かなくてもいいのは非常に助かりますよね。
しかし、これは法律違反だと言えます。
宅地建物取引業法において、賃貸物件の契約の際には、宅地建物取引士の資格を持つ者が借主と対面の上で重要事項説明を行うように義務付けられています。
重要事項説明とは、一般的に重説と呼ばれており、契約における重要事項を記した重要事項説明書を発行し、内容についての詳細な説明をしながら手続きを進めることです。
郵送での契約の場合、この重説を行う義務を果たせていないため、法律違反となるのです。
アパートなどの賃貸物件はインターネットで重説ができる?
郵送でのアパート契約書の取り交わしが法律違反となる理由は、重説が対面で行われないためでした。
しかし、所在地と契約したいアパートの距離が離れている場合、借主としては現地に行かずに契約できたほうが助かりますよね。
そういった声を反映してか、2017年からIT重説という制度が設けられました。
IT重説とは、簡単に言えばインターネットを利用して重説を行うことで、遠隔地でも負担なくアパート契約が行えるしくみです。
このしくみが取り入れられたことによって、スマートフォンやコンピューターがあれば、どこにいようと重説を行えるようになりました。
更に、IT重説のメリットは距離の問題だけではありません。
引っ越し直前にはスケジュールが埋まりがちでなかなか不動産会社まで足を運ぶ時間が取れないかもしれませんが、IT重説ならば柔軟にスケジュールを合わせて重説を行うことができます。
わざわざ会社を休まずとも、休憩時間や帰宅後の時間で手続きを進められるのは嬉しいですよね。
IT重説なら契約書を郵送でOK!
先程の項では、遠隔地でも楽に契約を進められるIT重説についてご紹介しました。
もしIT重説を行った場合、アパートの契約書の扱いはどのようになるのでしょうか。
実は、賃貸契約の契約書は電子データ化が認められており、原本を紙媒体で持っている必要はありません。
そのため、近頃はIT重説と併せて電子化した契約書で契約を締結する場合もあります。
もちろん、契約書を郵送で送って押印する、昔ながらのパターンもあります。
重要事項説明書など、一部原本を交付する義務がある書類もあるため、実際のところは後者が多いかもしれませんね。
それでも、現代では契約自体をインターネット経由で済ませることができるのです。
スマートフォンが身近な現代において、これほど便利なことはないのではないでしょうか。
IT重説でアパートを契約する方法
それでは実際に、IT重説を利用してアパートを契約する時の具体的な流れを追っていきましょう。
まず、物件を探す時には通常のように、立地や家賃などの条件をもとに不動産紹介サイトなどで目星をつけておいたり、郵送で資料請求したりしましょう。
また、条件に合う物件を見つけたら、希望の物件を取り扱っている不動産会社がIT重説に対応しているかについても調べておくと安心です。
対応していることを確認したら、不動産会社に内見の申込みをしてスケジュール調整をし、現地の店舗に訪問してから希望の物件を確認させてもらいます。
そのうえで、物件が気に入った場合には契約の申込みとIT重説を利用したい旨を伝えましょう。
アパートや不動産会社がある土地に行って行うことは、最低限ここまでです。
入居には審査が必要となるので、当日中に契約の手続きが行える場合もあれば、数日の時間を要する場合もあります。
審査を現地で待って契約書の取り交わしまで済ませることができる場合もありますが、多くの場合は日をまたぎますし、忙しい方はここで一旦帰宅することになると思います。
次の項では、入居審査が通過してからの手続きをお伝えします。
IT重説の手続きと気をつけるべきこと
引き続き、IT重説の流れをお伝えしていきます。
後日、入居審査が通過したことを確認したら、IT重説を行うスケジュールを不動産会社とすり合わせましょう。
スケジュールが決まったら、当日までに不動産会社より契約書や重要事項説明書といった書面が郵送されてきますので、軽く目を通して疑問点をピックアップしておくことをおすすめします。
また、IT重説に使う機材の用意もしておくと安心です。
IT重説には、インターネットと接続できるコンピューターやスマートフォン、タブレットに加えて、テレビ電話アプリの準備が必要です。
テレビ電話アプリの例としては、Skype(スカイプ)やFaceTime(フェイスタイム)などが挙げられます。
不動産会社によって使用するアプリは違いますので、あらかじめこの点についても確認をとっておき、IT重説の当日に手間取らないようにアカウントを作成しておくとよいでしょう。
当日は、テレビ電話アプリを介して契約に関する重要事項の確認をします。
問題なければ、契約書に押印をして不動産会社へと折り返し郵送します。
不動産会社によっては、前の項でお伝えしたように契約書もインターネット経由で取り交わすかもしれません。
こうして、入居までの手続きを終えることができます。
IT重説を利用してアパートを契約する場合に気をつけたいことがあります。
それは、物件をよく下調べしないで契約してしまうことです。
アパートは資料の写真だけではわからない、実際に見てはじめて伝わることがあります。
周囲の環境や、住民のマナーに関してがそうです。
近年は内見をせずに紹介サイトの画像や動画だけで契約してしまう人が増えてきているようですが、可能であれば実際に訪れてみることをおすすめします。
また、IT重説に併せて、オンライン内見というテレビ電話アプリで内見する制度を取り入れている不動産会社もありますので、せめてそういった制度を利用してみるのもいいでしょう。
郵送での契約締結は基本NGですがOKの場合も!IT重説を利用してみて!
この記事ではアパートの契約の際に契約書が郵送で送られてきた時、そのまま押印して契約してしまってもいいのかについてお話ししてきました。
重説は対面で行う義務があるため、郵送だけで契約を完結させるのはNGでしたね。
ただし、近年はIT重説という制度もあるので、きちんと重説が行われていれば郵送でもOKです。