土地の登記というと、とても難しくて専門家でないと手に負えないと考えている人は多いです。
しかし、申請だけであれば個人でもできることがありますし、所有する土地を把握して管理するために自分で登記を行っている人もいます。
自分で登記を行ってみると、分筆という専門用語が出てくるかもしれません。
分筆とは土地をどのようにすることなのか、また申請するときにはどのような必要書類を揃えなければならないのかを解説します。
土地を分けて登記する「分筆」
家を建てたり相続するという機会に、分筆という言葉を目にすることがあるかもしれません。
「分筆(ぶんぴつ)」とは、見慣れない言葉ですよね。
分筆は不動産の登記で使用される用語で、ひとつの土地を複数の土地に分けることを意味します。
登記上、土地は「筆」という単位で表されています。
ひとつの土地は「一筆」です。
一般住宅は一筆の上に建っていることが多いのですが、土地によっては複数の筆に分かれ、筆をまたいで住宅が建っていることもあります。
分筆は、一筆の土地を分けてそれを登記簿に記録することを意味します。
すべて自分の土地であれば分筆をすることに意味はないように感じますが、相続や売買などの際に分筆がとても重要になることもあるのです。
土地を分けて登記簿に登録するためには、必要書類を用意し手続きを行なわなければなりません。
そして分筆されて登記されると、分けられた土地にはそれぞれ違う地番が付きます。
例えば分筆前が「○○町100番地」という住所だったとすると、分筆後「100番-1」と「100番-2」になるといった感じです。
新しい地番を付けて登記簿に登録するこの手続きを分筆登記といいます。
分筆登記はどのようなケースで行われるの?
ひとりの持ち主がひとつの土地を持っているのであれば、分筆は必要ないですよね。
では、どのようなときに分筆登記が必要になるのでしょう。
よくあるケースを見てみましょう。
●売買
持っている土地の一部を売買する場合です。
筆が分かれていなければ、売買の取引ができません。
●複数から単独へ
複数の所有者がいる土地をひとりひとりの所有にできます。
●相続
複数の相続人がいる場合、分筆すればそれぞれ土地を相続できます。
●地目
一筆の土地であっても、土地の一部の地目が異なっている場合があります。
登記記録と現状を一致させるために分筆登記します。
●担保
融資の担保として土地を設定する際に、すべての土地を取られないように分筆することがあります。
主に上記のような理由で分筆することが多いようです。
分筆登記をするためには、必要書類の提出や手続きを行わなければなりません。
必要書類や手続きは難しい部分も!専門家への依頼がベター
それでは、どのような手続きが必要になるのかを簡単に見てみましょう。
まずは法務局などで必要書類を揃え、資料の調査を行います。
次に現地調査です。
現状の土地がどのような状態であるのかを確認し、境界線を推定します。
そして、どのように分筆するのか、分筆案を作成します。
このような土地の調査や測量は専門の機械や知識が必要となり、土地家屋調査士などの専門家に依頼するのが一般的です。
この分筆案をもとに役所や隣接する土地所有者と話し合います。
境界線が明確であれば話し合いはスムーズにいくかもしれませんが、土地の話ですので隣家との話し合いがこじれてしまうこともあります。
しっかりとした資料や調査結果を準備しておくことが大切です。
そして合意が得られれば、境界確定測量を行い境界標を設置します。
境界確定が終わったら、必要書類を準備して分筆登記を行います。
分筆登記の必要書類!申請だけなら個人でもできる!
境界確定が済んだら、いよいよ分筆登記の申請を行います。
●分筆登記申請書
●地積測量図
●筆界確認書(境界確認書・境界の同意書・境界の協定書)
などが必要書類になります。
筆界確認書として、裁判所の判決が使われることもあるそうです。
代理人が申請する場合は「代理権限証書」も必要書類となります。
これらの必要書類を揃えて、土地を管轄する登記所に申請すれば分筆登記は完了です。
ところで、土地の調査や測量は土地家屋調査士などの専門家でなければ難しいのですが、分筆登記の申請だけでしたら個人でもできます。
測量や立会いは専門家に行ってもらい分筆登記の申請は自分で行う、という人もいるようですよ。
土地家屋調査士による測量や調査は、やはり高額になることが多いです。
何社か見積もりを取って、信頼できる土地家屋調査士に依頼することをおすすめします。
最近ではGPSを使った測量を行う土地家屋調査士もいます。
より正確性や確実性を求めるのであれば、そのような土地家屋調査士に依頼するのもひとつの手です。
分筆できるということは合体もできる?!
一筆の土地を複数に分ける分筆についてお話ししてきました。
「土地を分ける」ことができるということは、「土地を合体させる」ということもできるのでしょうか。
答えは、できます。
隣接する複数の筆の土地をひとつに合体させて登記することを、専門用語で「合筆(ごうひつ・がっぴつ)」といいます。
合筆は、以下のようなケースで行われることが多いです。
●売却
複数の筆の土地をまとめて売却したいときに合筆します。
●相続
相続の際、相続人ごとに分割しなおすために一度、一筆の土地にする場合があります。
ただ、一度合筆登記をすると元の筆の状態に戻すことはできません。
合筆した土地を再度分けたい場合は、分筆登記をする必要があります。
しかし、先ほどお話ししたように分筆登記をするためには必要書類を準備して手続きを行わなければなりません。
専門家に依頼するのも高額になります。
元には戻せないということをよく考えたうえで、合筆登記をするようにしましょう。
合筆登記する条件と必要書類
分筆登記ではさまざまな必要書類を揃えなければなりませんし、測量は高額になってしまうこともあります。
一方、合筆登記は測量が不要なので、分筆登記より比較的容易に申請することができます。
ただ、合筆するためにはいくつか条件があります。
●字(あざ)が同じである
●所有者が同じである
●地目が同じである
●隣接している土地である
●所有権登記されている土地同士である(もしくは所有権登記されていない土地同士である)
●所有権以外の権利(抵当権など)の登記がされていないこと
(この条件については例外があり、場合によっては合筆できることもある)
土地の合筆登記をすると、合筆した土地には合筆前の首位となる地番が付きます。
それ以外の地番については消滅し、基本的には再使用されません。
例えば、「100番-1」と「100番-2」を合筆すると、「100番-1」という地番の一筆の土地になります。
基本的に以下が合筆登記申請の必要書類になります。
●合筆登記申請書
●登記識別情報(登記済証)
●印鑑証明書
●委任状(代理人が申請する場合)
必要書類は条件によって多少変わりますので、事前に確認しておくことをおすすめします。
所有している土地を把握しておく
土地の相続時に、親族間でトラブルが起こったということをよく耳にします。
ご自分の所有している土地をしっかりと把握し、必要に応じて分筆や合筆しておくことで、トラブルを防げるかもしれません。
法務局や登記所などに普段足を運ぶことはあまりありませんよね。
少しお金がかかってしまいますが、機会があれば所有している土地の登記情報を確認しておくのもおすすめです。