増築を考えている場合、知っておきたい手続きに「確認申請」があります。
増築は、好きなだけ増やせるものではなく、建築基準法などの基準を満たす条件下で建てなければなりません。
この確認申請とは、具体的にどういった事項について行われるのでしょうか。
また、申請には費用がかかりますが、どの程度かかるものなのでしょうか。
こちらでは、増築時に必要な「確認申請」の概要や費用についてご説明していきます。
知っておこう!増築時に必要な「確認申請」とその費用
増築は、部屋数を増したりリビングを大きくしたりと、住まいの環境を大きく変え、望みどおりの居住空間をつくることができます。
ただ、建築基準法などの法律の制限を受けるため、建物の面積を増やせるといっても、制限なく思い通りに増やせるというものではありません。
家を増築する際には、多くの場合「確認申請」という手続きが必要となります。
これは行政に届け出る、増築の許可申請です。
防災に関わる「建ぺい率」や「工法」など、主に安全面に対する確認申請をして、審査を受ける必要があるのです。
確認申請は、役所や民間の審査機関でも行っています。
増築時の確認申請は、一般的に、リフォーム会社などの業者に依頼し、建築士が書類を作成して提出する方法を取ります。
確認申請の審査をどこで行うか、また、申請を他者に依頼するか自分で行うかなどによって、かかる費用も異なってきます。
増築時にはなぜ確認申請が必要?
増築時はほとんどの場合、費用を伴う確認申請を行い、いろいろな項目について審査を受ける必要があります。
ではなぜ、審査が必要なのでしょうか。
増築は新築と異なり、既存の建物との兼ね合いを考えながら建築しなければならないため、慎重なプランニングが必要です。
また増築は、リフォームの中でも少々特殊です。
リフォームには改築や改装といった方法もありますが、増築は「床面積を増やす」という点で、他の2つと大きく異なります。
増築は、既存の建物に手を加えて居住空間を「増やす」大きな改修工事となるため、建築基準法などの条件下で、安全性を考慮して建築する必要があるのです。
ただし、増築時の確認申請は、必ず必要となるケースと不要なケースがあります。
必ず申請が必要なケースは、以下の場合です。
●増築を考えている建物が「防火・準防火地域」にある場合
「防火地域」「準防火地域」とは、各地方自治体が都市計画法に基づいて、火災に強い街づくりを目的に独自に定めている地域です。
主に、都心部のような密集地や繁華街などは防火地域となっています。
●10㎡を超える増築の場合
10㎡(6.46畳、3.03坪)を超える増築では、確認申請が必要です。
間取りの目安としては、ワンルーム以上の増築の場合となります。
上記のどちらかに当てはまる場合は、必ず確認申請が必要となります。
費用がかからない!確認申請の必要がない増築のケースもある
前項では、増築時の確認申請の必要性や、申請しなければならないケースについてお話ししました。
この増築時の確認申請は、必ず行わなければならないケースがあると同時に、例外的に不要となるケースもあります。
それは、前項で挙げた2つの条件に「共に当てはまらない」場合です。
建物の所在地が、防火地域や準防火地域でない「無指定地域」にあり、さらに「10㎡以下の増築」である場合は、確認申請が不要となります。
増築したい建物の所在地が、防火地域や準防火地域に指定されているかどうかは、自分でも簡単に調べることができます。
自治体ごとにネット上で都市計画図を公開していることが多いので、「自治体名」と「都市計画図」をキーワードに入れて検索してみましょう。
また、インターネットの環境がない場合は、役所に問い合わせて教えてもらいましょう。
確認申請には費用がかかります。
費用がかからない、確認申請が不要な条件が揃っているかどうかを前もって調べておけば、増築のプランの進め方にも役立つことでしょう。
増築ができないケースもあるって本当?
確認申請の対象となる審査項目は他にもいろいろあり、以下のようなケースでは許可を得られず増築できないことがあります。
●建ぺい率の問題
新築時に、建ぺい率のギリギリまで建築した物件では、新たに建築面積を増やすことは難しいです。
建ぺい率は、地域によって異なり、条件によっては緩和されることもありますが、風通しや防災に関わる規制基準で定められているため、その地域の定めに従う必要があります。
●工法の問題
既存の建物の工法と違う工法での増築は、認められない場合が多いです。
工法が異なると、地震時の揺れに違いが現れます。
既存の建物と増築部とで揺れに差が出た場合、接合部に大きな負担がかかることが考えられます。
工法の違う増設は、このような危険を伴うため難しいとされています。
●階数を増やす問題
2階建ての物件から3階建てにするなどの増築は、基本的に難しいとされています。
階数の高い建築では、それ相応の基礎作りが必要です。
階数を増やすことを想定していない基礎のままでは、増築することはできません。
●既存不適合建築物の問題
昭和56年6月以前に建築された物件は、現在の建築基準方に適合していないため、増築できないことがあります。
このように増築の際は、建築基準法など法律上いろいろな項目で制限が設けられているので、費用はかかりますが専門家に相談しながらプランを立てていく方が無難でしょう。
増築の確認申請は自分で行う?専門家に依頼する?どちらが良い?
増築時の確認申請は、自分でも行えるものなのでしょうか。
前にも触れましたが、確認申請には費用がかかります。
自分で確認申請の手続きを行えれば、手数料等の費用がかからないため安く済むでしょう。
法律上では、100㎡未満の木造建築物に関しては特に規定がなく、建築士の資格がなくても設計や監理を行えるため、専門家でなくても確認申請を行えます。
しかし、確認申請の項目は多岐に渡り、専門的な知識が必要です。
最近では、耐震規制などでより審査が厳しくなっているため内容も複雑です。
また、専門の計算ソフトを利用するような建物の構造計算なども出来なければなりません。
確認申請では、
・建築申請書
・建築計画概要書
・工事届
・委任状
・図面
なども作成する必要があります。
これらを考えると、建築士などの専門家に依頼する方法が最も良いのではないでしょうか。
また、増築プランから業者や建築士に任せていれば、確認申請を忘れて建築してしまうようなこともありません。
まれに、確認申請をせずに建ててしまったというケースがありますが、そのような場合には、建てた建物の現況調査報告書を作成し、適合しているかどうか審査してもらわなければなりません。
故意に確認申請を怠った場合には、取り壊しになることもあります。
増築を考えている場合には、信用できる業者や建築士を見つけて確認申請も依頼することをおすすめします。
増築の確認申請にかかる費用!その相場は?
増築時に必要な確認申請には費用がかかることをお伝えしてきましたが、実際どの程度かかるものなのでしょうか。
確認申請は、業者や建築士などの専門家に依頼することが一般的とお話してきましたが、その場合、かかる費用の相場は、「15万~30万円」といわれています。
この金額には、申請書類作成費用や手数料などの申請代行費が含まれていています。
また確認申請では、施工中や工事完了後に実際の状況確認として検査が行われることが多く(中間検査や完了検査)、それぞれに費用がかかります。
上記のような、検査費等含んだ金額が15万~30万円という金額になります。
確認申請でかかる費用については、依頼する建築士に内訳や詳細を確認しましょう。
それでは、基本的な確認申請の費用とは、どのくらいなのでしょうか。
自治体によって金額は異なりますが、目安となる一般的な相場を以下に記します。
●建築物30㎡以内
確認申請費用:5,000~10,000円
中間検査費用:9,000~15,000円
完了審査費用(中間審査あり):9,000~15,000円
完了審査費用(中間審査なし):10,000~16,000円
●建築物30㎡以上100㎡以内
確認申請費用:9,000~32,000円
中間検査費用:11,000~40,000円
完了審査費用(中間審査あり):11,000~48,000円
完了審査費用(中間審査なし):12,000~48,000円
増築をお考えの場合は、このような手続きにかかる費用も踏まえて、プランを考えていきましょう。
増築時に必要な「確認申請」について知識を得ておこう!
増築を考えてリフォーム業者などに相談に行くと、「確認申請」の話を聞くことでしょう。
確認申請とは何か、費用はどの程度かかるものなのかなど、あらかじめ知っておけば業者との話し合いやプランニングもスムーズに進みます。
確認申請は、建築基準法などの定められた規制内で適正な増築プランがつくられているか、安全面で問題のない増築ができるかどうかなど確認する、大切な手続きです。
知識として踏まえておきましょう。