今回は、空間の快適さを左右する「天井造作」を取り上げます。
普段生活していて、天井について考える機会は少ないかもしれませんが、使用されている素材や下地の組み方、仕上げ方に着目してみましょう。
そのほか、天井部分のリフォームに関してもお伝えしますので、気になる方はぜひご一読ください。
天井の歴史・役割をご紹介!
下地の組み方などを知る前に、まずは、天井の歴史を紐といてみましょう。
そもそも古い日本住宅には、天井板がついていないことも多いですよね。
屋根部分には梁があり、そのすぐ下に住居空間が広がっています。
歴史ある「古民家」を思い浮かべると、イメージしやすくなるはずです。
では何故、近年は天井の設けられた一般住宅が増えたのでしょうか。
これにはさまざまな理由がありますが、一説には「不安感をなくすため」とも言われています。
現代人の我々には、少し想像しにくいかもしれませんが、真夜中の屋根裏は「暗闇の中に誰か隠れているかも…」と思わせるような不安感を煽る原因になっていたようです。
そのほか、時代の流れによる住宅仕様の変化なども、もちろん影響しているでしょう。
天井の主な役割としては、
・室内の温度調整
・室内の明るさ調整
・ホコリなどの落下防止
・防音
・防臭
・収納
・インテリア要素
これらが挙げられます。
適切な高さの天井、機能つきの天井は、住まい環境を豊かにしてくれます。
天井を設けてからは、屋根裏の目隠し効果だけでなく、いろいろなメリットが得られるようになったのです。
木造住宅の天井下地!組み方の一例
ここでは、天井下地の素材と組み方についてお話しします。
基本的に、木造住宅であれば下地にも木材が使用されることが多いでしょう。
組み方には種類がありますが、野縁(のぶち)という細長い材木を使うのが通常です。
今回は、施工現場でもよく採用されている組み方をご紹介します。
【野縁受けを設ける組み方】
野縁受けになる材木を910ミリピッチ未満で設置したあと、455ミリピッチ未満で野縁を取りつけます。
木造住宅において、オーソドックスな組み方だと言われています。
【梯子状になる組み方】
野縁を梯子状に組んでから設置する方法もあります。
こちらは、「梁あらわし」のケースで用いられます。
※梁あらわし…梁を見せた仕上げにすること
木造住宅の天井下地には、このような組み方がありました。
では、RC造住宅の場合だと、どうなっているのでしょうか。
RC造住宅の天井下地はどんな組み方?
前項では、木造住宅の天井についてお話ししました。
ここでは、RC造(鉄筋コンクリート)住宅のケースを取り上げます。
RC造の場合、天井部分の構造は「直に仕上げる方法」と「下地つきで仕上げる方法」に分類することができます。
【直に仕上げる方法】
天井裏には、配管や配線を通すこともありますが、それが必要ないときにはコンクリート部分に直接壁紙を貼って仕上げます。
下地を組まないので、天井が高くなるというメリットがありますが、上階からの音は響きやすくなってしまうでしょう。
【下地つきで仕上げる方法】
①木製下地を利用した組み方
木製下地を設置する場合は、コンクリート部分に「インサート」という金具を取りつけます。
そこへ、「吊金物」を取りつけてから「吊木」を設置します。
その吊木に、前項でも登場した「野縁受け(木製)」と「野縁(木製)」を取りつけていくのです。
②軽量鉄骨下地を利用した組み方
コンクリート打設前に「インサート」と「吊ボルト」を配置します。
そこへ「ハンガー」を取りつけて、「野縁受け(金属製)」と「野縁(金属製)」を支えます。
下地つきで仕上げる方法は、下地素材の違いによって組み方も異なることが分かりました。
また、使用素材の選び方としては、基本的に、壁内部の下地と素材を統一することが多いです。
天井材の種類!木材から高機能ボードまで
天井下地の組み方には、いくつかの種類がありました。
こうした下地作業を行なったのちに、「天井材」を貼りつけていきます。
そこで、天井材の代表的な種類も見ておきましょう。
●単板
木材の薄板で、「化粧竿縁」で支えるように設置します。
板材の間は、「イナゴ」という木片で連結することから「イナゴ天井」と呼ばれました。
●合板(ベニヤ)
薄い木板を数枚貼り合わせたもので、単板の代用品として用いられるようになりました。
●敷目板
横幅の細い板です。
天井との間に隙間をあけながら敷いていきます。
敷目板を敷いた天井のことは「敷目板天井」と言い、別名は「目透かし天井」です。
●石膏ボード
石膏を主原料とし、それを紙で巻いたものです。
断熱性や耐火性、遮音性に優れています。
石膏ボードを設置したあとに、その上から壁紙を貼ります。
●吸音ボード
石膏ボードに孔加工(穴あけ加工)したものです。
共鳴吸収原理によって、音のエネルギーを減らすことができます。
●石膏ボード+吸音ボード
オフィスの軽鉄天井に採用されることが多く、二重構造なのでより高い性能が期待できます。
下地の組み方だけじゃない!天井の仕上げ方にも違いがあった
前項では、天井材をいくつかご紹介しましたが、天井の仕上げ方は大きく分けて二種類です。
木材やボードを使用する方法は「乾式工法(かんしきこうほう)」で、もう一つに「湿式工法(しっしきこうほう)」があります。
こちらは、モルタルや漆喰、珪藻土などの左官仕上げを用います。
湿式工法の魅力は、その「質感」「素材感」です。
さらに、つなぎ目のないシームレスな見た目は、とてもスタイリッシュな雰囲気でしょう。
ただし、作業は天候に左右されることもあり、乾燥を要する分、工期は長くなる傾向なのがネックです。
そのため、品質確保や工期短縮などの理由から、一般的な住居では乾式工法が採用されます。
さて、下地素材や組み方だけでなく、天井の仕上げ方についての違いはお分かりいただけたでしょうか。
こういった知識が深まると、住まいへの見方も変わってくるものです。
もしこれからマイホームの建設を考えている方は、天井の素材や仕上げ方にもこだわってみましょう。
壁やインテリアとの兼ね合いも考えながら、じっくり検討してみてください。
天井リフォームは状態を見極めて!
ここまで、天井の使用素材や組み方、仕上げ方についてお話ししてきました。
最後に、持ち家のリフォームに関する情報をお伝えします。
天井部分のシミや汚れ、変色が気になってきたら、壁紙の貼り替えや塗装をおすすめします。
そのほか、乾式工法の場合で、キズや反り、たわみが気になるようになれば、天井材の交換をしたほうがいいでしょう。
もし天井に木材が使用されており、腐食が進んでしまっているようなら、屋根自体のリフォームが必要になることもあります。
その際は、専門の補修業者に依頼してください。
下地材を含めたリフォームは、規模の大きな施工になることも想定しておきましょう。
天井壁紙の貼り替え程度であれば、1日~2日で完了することがほとんどです。
ただし、塗装となると、場合によっては4日間程度かかることもあります。
天井にはさまざまな種類があった!
天井造作についての知識は深まったでしょうか。
RC造住宅だとしても、天井下地には木材が使用されているケースもあります。
使用素材や下地の組み方、仕上げ方には豊富なバリエーションがあるのです。
天井のつくりによって、室内の快適さや印象は変わります。
家づくりの機会があれば、この記事を参考にしていただけると幸いです。