擁壁とは、崖などが崩れることを防ぐために作られた壁のことです。
壁の形成には、コンクリートで固められていたりブロックや石が使われています。
新築一戸建てで擁壁が必要な土地を選んだ場合、どのような擁壁を造ればいいのでしょうか。
擁壁には高さの基準があり、建築基準法で決まっています。
擁壁の高さによってどのような違いがあるのか、擁壁における建築基準法について解説します。
擁壁の高さは?建築基準法の第138条で確認
擁壁があるような家は、擁壁の高さに注意する必要があります。
もし擁壁の高さが2メートルを超える場合には工作物とみられ、建築確認申請が必要になるからです。
擁壁がちょうど2メートルだった場合はどうかというと、建築確認申請は必要ありません。
これらのことについては、建築基準法の第138条「工作物の指定」で確認することができます。
この基準によれば、2メートル以内なら建築確認申請は必要ないことになりますが、確認申請がないからといって好きな擁壁を建ててもいいのでしょうか。
建築の確認申請がなかったとしても、2メートルもの高さがある擁壁はきちんと造らなければいけません。
万が一崩れてしまった場合は、自分の住宅に被害が及ぶだけでなく、隣家にまで被害を与えてしまう可能性があるからです。
確認申請がないとしても、造り方としては確認申請がある場合の条件と同じと考えたほうがいいでしょう。
構造計算を行って、十分な強度を持たせることが大切なのです。
擁壁の高さが2メートル以下で起きやすいトラブル
確認申請が必要となる擁壁の高さは建築基準法で2メートル超えと決められていますが、2メートル以内でもきちんとした強度を持った擁壁を造る必要があります。
しかし、2メートル以内では確認申請が必要ないことから、擁壁に関するトラブルが多く発生しているようです。
具体的には、基礎部分や壁部分のコンクリートの厚みが少ないこと、鉄筋の量が少ないこと、軟らかい地盤の補強をせずに造ってしまう、材料にJIS規格品を使わないことなど、トラブルの原因となり得ることが起きているのです。
また、自分では確認したつもりでも専門的なことは分からず、不良工事が行われてしまう場合もあります。
そのようなことを防ぐためには、発注する前に、工事契約書、擁壁の構造図、構造計算書、工事図面、保証内容などを確認してください。
内容確認が自分では難しい場合は、専門家に相談するといいでしょう。
これから土地を購入して新築を建てる場合には、擁壁のことにも注意していただきたいと思います。
擁壁での不要なトラブルは、強度をしっかり持つことで防ぐことができるでしょう。
擁壁の構造について!建築基準法の第142条
建築基準法では擁壁の高さについて、2メートルを境に取り扱いが変わっていました。
こちらでは、建築基準法によって定められている擁壁の構造について確認していきます。
以下の条件を満たすことが必要になります。
【擁壁の構造】
・鉄筋コンクリート造、石造、その他これらに類する腐食しない材料を用いること
・石造の擁壁はコンクリートを裏込めし、石同士を十分に結合させること
・擁壁の裏面が排水できるよう水抜穴を設置する、かつ水抜穴の周辺に砂利などを詰めること
また、国土交通大臣が定めた基準による構造計算によって安全性を確かめられることも大切です。
他にも、建築基準法による細かな規定がありますが、それらに則った擁壁を造る必要があるでしょう。
擁壁が崩れてしまっては、自分だけではなく近隣に迷惑をかけることになってしまいます。
ですから、擁壁に厳しい規定があることは頷けることと言えます。
従うのは建築基準法だけではない!高さも関係する宅地造成等規制法
擁壁を造るなら建築基準法だけでなく、宅地造成等規制法に従う必要があります。
宅地造成等規制法とは、1961年に制定されており、宅地造成による工事で発生した崖崩れなどの宅地被害を防ぐために制定されたものです。
擁壁はまさにこの規制法に当てはまりますので、こちらの規定に従う必要があるでしょう。
ただし、この規制法が実行されるのは、都道府県知事が決めた宅地造成工事規制区域になります。
もし、購入される土地が宅地造成工事規制区域外であれば、こちらの規制に従う必要はないでしょう。
宅地造成規制区域内であれば、こちらの規制に従わなければなりませんが、その条件は以下の通りです。
【宅地造成等規制法】
・切土で、その高さが2メートルを超える崖の工事
・盛土で、その高さが1メートルを超える崖の工事
・切土・盛土が合わせて高さ2メートルを超える崖の工事
・切土・盛土でできる崖の高さに関係なく、宅地造成面積が500平方メートルを超える工事
これらの条件に当てはまるのであれば、工事前に都道府県知事の許可を得る必要があります。
なお、宅地造成工事規制区域かどうかは、ネットで簡単に調べることができます。
お住まいの都道府県を入力し、宅地造成工事規制区域で検索してみてください。
擁壁が必要かもしれない造成宅地防災区域とは?
ここまでは、擁壁を造る場合の条件についてご説明してきました。
建築基準法では、高さ2メートルが擁壁の確認申請が必要かどうかの境目でした。
また、構造による規制も受けます。
他にも、擁壁は宅地造成等規制法にも従う必要がありますので、規制内容は把握しておく必要があるでしょう。
ここでは、擁壁の設置を強制的に決められてしまうかもしれない区域について解説します。
それは、造成宅地防災区域といい、宅地造成工事規制区域外で造成する宅地についての制限になります。
造成宅地防災区域は、地震などによる地盤の損傷や崖崩れのおそれがある区域で、都道府県知事によって指定されます。
この区域は宅地造成等規制法の規制を受けるのですが、都道府県知事の指示によっては擁壁を造らなければならないことがあります。
また、この区域に住んでいる者は、宅地造成によって起きる災害を防ぐために、擁壁を造るなど何らかの対策を施すことが求められています。
造成宅地防災区域にある土地は、都道府県知事によって擁壁の設置が義務づけられることもあることを覚えておきましょう。
購入する土地に擁壁が造られていた場合の注意点
購入しようと思っている土地に既に擁壁が造られている場合は、注意が必要です。
というのも、その擁壁が安全かどうかの確認が必要になるからです。
建築基準法が施行される前に造られたような擁壁や確認申請が出されていない擁壁、確認済証がない擁壁では、その擁壁が安全かどうかの確認はできないため、擁壁を造り直す必要が出てくるかもしれません。
高さが2メートルを超える擁壁には確認申請が必要だと決められているため、購入しようと思っている土地に擁壁がある場合、擁壁の確認申請がなされていて、確認済証があることを確かめてください。
もし、高さが2メートル以下の擁壁であれば、さらに注意が必要になるでしょう。
2メートル以下の擁壁は確認申請が必要なく、どのように造られたのか確認することができないからです。
その場合は、行政や建築家などの専門家にご相談ください。
擁壁の高さは建築基準法では2mが境目
擁壁には建築基準法で高さについての取り決めがあります。
高さが2メートルを超える場合は確認申請が必要となり、2メートルまでの擁壁なら確認申請が必要ないというものです。
また、擁壁は宅地造成工事規制区域であれば、宅地造成等規制法に従う必要も出てきます。
ただし、宅地造成工事規制区域外であっても、造成宅地防災区域であれば都道府県知事によって擁壁を造るよう指示される場合もあります。
擁壁を造る場合には、これらの規制に関係しないかどうかの確認が大切になるでしょう。