旗竿地とは読んで字の如く旗の形をした土地のことを言います。
つまり、通路部分が狭く、奥が広くなっている形状の土地ですね。
そして、旗竿地に家を建てる場合、旗の竿の部分は駐車スペースやカーポートなどに利用されることが多いのですが、それがご近所トラブルになることがあります。
ご近所さんからの苦情の内容は、いったいどのようなものなのでしょうか。
旗竿地の成り立ちとよくある苦情の原因とは
戸建など家を建てる場合、土地探しから始められる方も多いと思います。
そして、安いなと思って見ると、その土地が旗竿地であることがあります。
そもそも、なぜこのような旗竿地ができるのでしょうか。
それは、一般的な戸建の価格帯というものがネックになっているからだと思われます。
例えば、街中にいくら広い土地があっても、広すぎると価格が高くなり、なかなか買い手がつきません。
そこで、土地をいくつかに分割して、売れ筋の価格帯で切り売りするわけです。
その際に、道路から少し奥まったところの土地は、通路を作らなければ入ることができない旗竿地になってしまうのです。
このような旗竿地は、注意して見ると至る場所に見受けられます。
また、その特異な形状から、四角い成形地に比べると安い価格で販売されています。
そして、旗竿地の細長い竿の部分はその発生の事情から多くの場合隣家などにも接しており、それゆえに苦情の元になることがあります。
一番多いのは、竿の部分を駐車場として利用するため、カーポートなどを建てる場合でしょう。
旗竿地にカーポートを建てると隣家の採光が遮られる?
では、実際どのようなトラブルが起きているのか、悩み相談サイトなどからピックアップしてみましょう。
相談者は旗竿地の隣りに戸建を建てた方で、旗竿地の居住者が後から入居し、竿の部分にカーポートを建てる予定であることがわかりました。
カーポートができると敷地ぎりぎりのところに支柱が建てられ、竿の部分からの採光も気に入って戸建を購入したのに、かなり悪影響が出ます。
そこで、せめて竿の部分の反対側に支柱を設置する建て方にできないものかというのが、相談者のお悩みでした。
そして、隣人に直接苦情を言うのもどうかということで、たまたま隣家と戸建を購入した不動産屋が同じだったため、そこに聞いてみたそうです。
すると不動産屋が言うには、隣人の返答は、竿の部分の反対側に支柱を建てると車の出し入れに影響するため無理だとのことだったそうです。
確かに、旗竿地の竿の部分は、どこもそれほど広くはありません。
そこに車が複数台あったとしたら普通はバックで車庫入れし、しかも、縦列駐車をしなくてはなりません。
それが、反対側の端にカーポートを作ったとしたら、右ハンドルの車で左寄せの縦列駐車をしなくてはならなくなります。
そして、もし奥さんなどがたまにしか車に乗らない人だった場合、運転技術が伴わない可能性もありますね。
このようにどちらの言い分も相いれられない場合、皆さんならどうしますか?
採光かカーポートか?いずれを取ってもお隣りとの遺恨は避けられない
前項でご紹介した相談を受けて、回答者の意見もかなり分かれていました。
一方は自分の家の採光のために、苦情を言って人の敷地のカーポートを諦めさせるのは自分勝手だという意見でした。
しかし、他方では一生のことなのでわだかまりのないように、直接話し合ってみる方がよいという意見もありました。
また、隣人とはうまく付き合うべきだが、カーポートの件ですでに相談者の中にわだかまりができており、徹底的に戦うべきだとの意見もありました。
その際、建築物は境界線から50㎝は離して建てなければならず、カーポートも境界線の塀から50㎝離すように言うべきだなどアドバイスもありました。
確かに民法では、建物は敷地の境界線から50㎝の距離を保つこととされています。
また、建築基準法54条では、都市計画にもよりますが、外壁などは境界線から1m~1.5m後退させるなどの規定もあります。
実は法律の規制は他にもいろいろとあって、本来はすべての規制をクリアしていなければなりません。
しかし、そうなるとほとんどの旗竿地ではカーポートを建てられなくなってしまうため、実際は敷地ぎりぎりでカーポートを建てるお宅が多いようです。
法律と実情の乖離が起こっているという訳ですね。
例えばそこを突いてカーポート建設を阻止したとしたら、採光はある程度守れるかもしれません。
しかし、今後のお隣りとの良好なお付き合いは、望むべくもありませんね。
カーポートの建設は旗竿地ならではの苦情につながりやすい
前述したように、旗竿地では居住者本人も隣接する方の近所の方も、悩みを抱えていることが多いと言えます。
ただ、成形地であればなんの問題もないのかと言えば、そうでもありません。
成形地であっても、ご近所トラブルや苦情の実例はいくらでもあります。
しかし、旗竿地ならではの駐車場やカーポートの建設に対する悩みや苦情があることは否めません。
旗竿地の竿の部分は、一般的に狭くても2.5mから3mの幅を取ることが必要です。
なぜなら、軽自動車でも駐車には最低2mの幅が必要で、車の乗り降りや横を自転車や人が通行することを考えると、2.5mは必要となるからです。
これが大型車になると、3mは必要になります。
そんな厳しい条件の中でカーポートを建てるとなると、境界線ギリギリに建てなければ仕方がありません。
それがもし、民法を盾に境界線から50㎝空けてカーポートを建てるよう迫られたとしたら、停められる車も停められなくなってしまいますね。
旗竿地の居住者も、わざわざお隣りの採光を遮ろうとしてカーポートを建てるわけではありません。
しかし、これがトラブルに発展することも多々あるということは、覚えておかねばばりませんね。
旗竿地のカーポート建設への苦情を回避するために
では、旗竿地を購入すべきではないのかというと、そうではありません。
一般的に旗竿地は成形地の2~3割安く出回っているため、予算が少ない人でも買いやすい土地です。
ただ、苦情などを回避するため、現地の状況を購入前にしっかりと把握しておく必要があるということです。
境界線のお隣りさんの間取りに注意を払うだとか、迷惑にならない位置にカーポートを造れそうかなど、事前にチェックできることはしておきましょう。
実際、苦情の中身は採光だけではありません。
雨や雪の多い土地では、隣家の敷地への雨の流れ込みやカーポートの屋根の雪の落下などもトラブルの原因になっています。
このような地域特有のトラブルも考えておかねばなりません。
また、旗竿地の隣を購入する人にも同じことが言えます。
境界を接しているといっても、旗竿地はお隣りの敷地です。
基本的には法律の範囲内で、お隣りにはその敷地を活用する権利があるのです。
そこに建物が建つこともあり得ると覚悟して、間取りを考えておくべきと言えるでしょう。
お互いに、事前にトラブルを回避する努力が必要であることを心得ておいていただきたいと思います。
カーポートだけではない旗竿地購入の際の注意点
最後に、カーポートだけでなく、旗竿地を購入する際の注意点をまとめておきたいと思います。
竿の部分に十分な幅があるかどうかの確認が必要なのは言うまでもありません。
しかし、それだけではなく、旗竿地が安く売り出されるのは他にも注意すべきいくつかのデメリットがあるためです。
1つは、四方を建物に囲まれていて、基本的には日当たりが悪いという点です。
また、水道や電気などを引き込むのに、道路から離れているため工事費用がかかることもあり得ます。
そして、工事の際に重機が入れないような場合、手作業で人件費がかさむ恐れがあります。
このような条件も考慮し、適切なアドバイスができるプロに設計施工を依頼することが必要でしょう。
例えば、旗竿地の施工実績が豊富で、よその敷地を経由せずうまく電線を引き込む技術を持ち、コンパクトな重機を扱える施行業者なら理想的ですね。
また、設計に関しても旗竿地の問題を熟知し、2階リビングや天窓や吹き抜けを多用した明るい間取り設計を提案してくれる建築士さんなら安心です。
きっと、ご近所の採光や生活を阻害せず、苦情の出ない外構設計を一緒に考えてくれるはずです。
そもそも旗竿地のメリットは、本来なら手の出ない街中の土地が格安で手に入るという点です。
そのメリットを享受し、なおかつデメリットを解消した理想の我が家を実現するために、まずは信頼できる業者さん選びが大切ではないでしょうか。
事前チェックと業者選びで旗竿地のメリットを上手に享受しよう
今回は、旗竿地という特異な形状の土地に家を建てた場合に、よくあるカーポートに関するご近所トラブルについて見てきました。
誰しも一生付き合うご近所さんとトラブルになりたくはないですよね。
そのためには、事前チェックとプロの設計施工業者の手助けが必要です。
皆さんが旗竿地を検討される際は、是非これらに留意し、すてきなマイホームを実現していただきたいものです。