モルタルは、建物の外壁材やレンガ塀などの接着材、土間の仕上げ材など、建築によく使われる建材です。
ひび割れしやすい性質をもつため、このモルタル建材のみで大きな建造物を作ることはほとんどありません。
モルタルは、セメントを主原料にペースト状に練ったものですが、材料の配合により強度が変わります。
こちらでは、モルタルを中心に「配合」と「強度」の関係や、適した用途などについてご紹介していきます。
モルタルとはどんな建材?
モルタルは、建築物に用いられることが多いペースト状の建材です。
一般的に灰色で、原料である「セメント(粉末)」、「砂」、「水」を配合し、練ってつくります。
細骨材の「砂」などを混ぜてつくることで、適した強度となり、固まる時の収縮率も抑えられるので、建築物の一部に用いるなど、いろいろな場面で利用されています。
用途としては、レンガやブロック塀の接着材、玄関や駐車場などの土間の表面の仕上げ材、家の外壁材などで利用されることが多いです。
この他、モルタルは上記のような下地や仕上げに使われるだけでなく、デザインを施す「モルタル造形」などでも注目されています。
配合時に色粉を混ぜることで「色」をつけることができるため、カラーバリエーションも豊富で、配合時に繊維を混ぜるなど、素材に工夫をもたらすことも可能です。
このような特徴から、近年では、テーマパークで見られるようなアンティーク調の外壁や造形された木や石など、多くのモルタルアートにも利用されています。
モルタルに似た「セメント」や「コンクリート」との違いは何?
一般的な灰色のモルタルは、見た目から「セメントやコンクリートと何がちがうの?」と思われがちです。
似ているこれら3つの建材は、具体的に何が違うのでしょうか。
前に挙げたモルタル以外の2つの建材について、違いをご説明します。
●セメントとは
セメントは、水や液剤を加えることで固まる粉体を指します。
主に、石灰や石膏、粘土など配合し、粉末状に混ぜたものです。
モルタルやコンクリートの主原料として使われる素材です。
セメントと水だけで練った「ノロ」と呼ばれるセメントペーストも建材として使われることがあり、タイルなどの目地部分やモルタルのひび割れ補修などに使われます。
●コンクリートとは
コンクリートは、「セメント」を主原料に、「砂」や「砂利」そして「水」を配合したペースト状の建材です。
要するに、モルタルに砂利を加え、さらに強度が高められた建材ということです。
高い強度をもつため、基礎や土台、駐車場などの舗装に使われます。
このように、どの建材も、水と混ぜてペースト状にして使用するものですが、素材の違いや配合されている材料の違いによって分けられているのです。
モルタルのような建材の「強度」の違いはセメントの「配合」にある?
前項では、モルタル、セメント、コンクリートの違いをお話ししました。
3つの建材は、主原料や配合される材料の違いによって分類されていましたが、それぞれの建材をつくる際、材料はどのような割合で配合すればよいのでしょうか。
モルタルやコンクリートをつくる際には、適正な配合の割合があります。
配合の割合を間違えてしまうと、強度が変わったり、仕上がりが大きく変わってしまったりするので、基準となる配合割合をまずは知っておきましょう。
モルタルの基本的な配合の割合は、「セメント1:砂3」です。
コンクリートの基本的な配合の割合は、「セメント1:砂3:細骨材6」です。
これらの配合は、重さを測り、質量比で配合するのがベストですが、一般家庭で利用するような少量の場合は、「バケツ1杯のセメントに対してバケツ3杯の砂」のように、体積比で配合してもよいでしょう。
また、この配合の割合はあくまでも目安なので、用途によって配合を変える必要があります。
次からは、さらに詳しく、モルタルの配合の割合と強度の関係についてご紹介していきます。
モルタルをつくる時の注意点!配合と強度の関係を考えてつくろう
モルタルは、「セメント」と「砂」と「水」の配合からなるとご紹介しましたが、強度を上げるならば、どの材料を多く配合すればよいのでしょうか。
材料の中の「セメント」は、水と混ざることで高い圧縮強度を持ちます。
「ノロ」と呼ばれるセメントペーストは、実はモルタルやコンクリートより圧縮強度が高い素材です。
しかし、「ノロ」には、凝固時の収縮率が大きい(建造物が縮みやすい)というデメリットがあるため、建築での使用には向いていません。
セメントは、モルタルやコンクリートのように、細骨材が混ざることによって、適度な強度と収縮の抑制が保たれ、建築物に利用できる建材となるのです。
このことから、モルタルの強度を上げるには、セメントの圧縮強度を十分引き出す、「セメント」と「細骨材(砂など)」の適正な配合が重要であることが分かります。
セメントを多く配合すれば強度が上がるというわけではないのです。
実際、モルタルの強度は、混ぜる「砂の量」で調整します。
配合する砂は、「セメント1」に対して「砂2~4」で調整します。
砂の量が少なすぎたり多すぎたりすると、使えない状態になってしまうので注意しましょう。
また「水」は、セメントの60%の分量を基準に加えていきましょう。
天候などによって加える量も変わってくるので、水は、少しずつ練りながら混ぜていくことが大切です。
また、用途によってやわらかさを調整する必要があるので、モルタルの状態を見ながら加えていきましょう。
配合による強度の違いによって使い分け!モルタルの用途と配合
モルタルは、「セメント」と「砂」の配合の割合によって強度が変わってきます。
配合と強度の関係は以下の通りです。
【モルタルづくり/強度が高い順の配合】
●セメント1:砂2(強度が高め)
●セメント1:砂3(基準の強度)
●セメント1:砂4(強度が低め)
上記のような配合で、モルタルは具体的にどのような施工に使われているのでしょうか。
配合の割合と施工例をご紹介します。
「セメント1:砂2」の配合は、強度とある程度の質感が必要な「建物の外壁」の仕上げなどに利用します。
レンガ積みなどの接着用でも用いられる配合です。
「セメント1:砂3」の配合は、車の出入りがある「駐車場」や玄関などの「土間」に利用されます。
「セメント1:砂4」の配合は、建物を建てる時の基礎部分に施す「捨てコン」や「敷石」などに利用されます。
また、「セメント1:砂3~4」の配合は、造形用でも利用される割合です。
ただ、これらの割合は、施工時のコンディションによって変わってくることもあるので、その時々で微調整が必要です。
表現力の高いモルタル!いろいろな塗り方をご紹介
モルタルは、目立たない接着材や、平面をツルツルに塗る「金鏝仕上げ」のような仕上げ材としてだけでなく、使い方を工夫することによって大きく印象が変わる、表現力の高い素材です。
最後に、モルタルの特徴といえる、さまざまなテイストの仕上げ方法をご紹介していきます。
●洗い出し仕上げ
和風の玄関土間から洋風のおしゃれなアプローチまで、幅広く使われるおしゃれな手法です。
モルタル塗装後、硬化する前にブラシや噴霧器で水洗いし、表面にザラつきを持たせて仕上げます。
混ぜる細骨材によっていろいろな表情が出せるので、幅広く利用されています。
この作業には技術が必要なため、専門業者による施工が一般的です。
●刷毛(ハケ)引き仕上げ
滑り止めの役割を果たす構造で、坂など勾配がある場所に使われることが多い手法です。
その他、和風な仕上げとしてや、駐車場の色むらを押さえる方法として使われることがあります。
コテできれいにならした後、刷毛で表面を撫でるようにして模様をつけ、ザラザラした質感を出します。
こちらも、スロープなどをおしゃれに演出する仕上げ方法です。
●手を使った仕上げ
コテなどの用具を使わず、手袋をした手で模様に動きをつけて表情を出す方法もあります。
●モルタル造形
レンガや岩肌、木材などに似せて造形する方法です。
モルタルが乾ききる前に、模様や傷、目地など入れて造形します。
このように、セメントに砂を配合してつくられるモルタルは、強度の調整も可能なため、様々な手法で幅広い場面で利用できる素材なのです。
モルタルの特徴を知って家や外構の建材に活用してみよう!
モルタルは、コンクリートほどの強度はないため、建築物の基礎など大きな部分には使えません。
しかし、配合によって強度を微調整でき、繊細な表情がつくり出せる素材なので、いろいろな場面で利用されています。
レンガの接着や狭い範囲での土間仕上げなどであれば、DIYでも十分活用できるので、モルタルを使った施工に挑戦してみるのもよいでしょう。
モルタルの特徴を知って、家や外構に是非活用してみてくださいね。