コンクリート擁壁を補修!DIYでの作業手順やポイントとは?

擁壁(ようへき)は、高低差のある土地に設けられる壁状の構造物で、土留めの役割を果たしますから、非常に頑丈です。

しかし、自然とひび割れなどの症状が出てきます。

深刻な症状でなければ、DIYでの補修も可能ですから、作業手順やポイントを把握しておきましょう。

この記事では、コンクリート製の擁壁を想定してお話ししていきます。

コンクリート擁壁の種類

コンクリート擁壁とは、コンクリートを原材料として構築される擁壁を指します。

DIYでの補修方法についてお話しする前に、その種類を一部ご紹介しましょう。

●練り積み式擁壁

ブロックを積んでいくときに、モルタルやコンクリートを流し込みながら固めていく方法です。

裏込め(うらごめ)が安定しており、盛土部分の土圧が小さな場合に適用されます。

また、補足としてお伝えしますが、練り積み式擁壁と比較されることの多い「空積み式擁壁」は、モルタルなどを使わずに石を固定していきます。

その耐久性は、練り積み式擁壁のほうが高いと言えるでしょう。

●重力式擁壁

製品の重さで背後からの土圧を支えます。

安定性を確保するために、勾配(角度)がついているのが大半です。

山岳地帯の道路では、地山にもたれかかるようにフレッシュコンクリートを打設する、「もたれ式擁壁」が適用されます。

●片持梁(かたもちばり)式擁壁

断面が「L字」になっている擁壁は、「L型擁壁」と呼ばれます。

そのほかには、鉄筋コンクリート構造の「逆T型擁壁」などがあります。

斜面自体の重量によって基礎部分を支え、使用材料の少なさや安定した品質、工期短縮といったメリットが挙げられます。

コンクリート擁壁がひび割れる原因とは?

前項では、コンクリート擁壁の種類をご紹介しました。

ここからは、補修に関する内容をお伝えしていきます。

そもそも、コンクリート部分がひび割れてしまうのは何故なのでしょうか。

そこで、コンクリートの劣化原因をいくつか取り上げてみました。

●乾燥収縮

コンクリート内部の水分が蒸発し、体積が減ることで収縮していきます。

固定されたコンクリートが引っ張られてしまうと、それにともなってひび割れが生じるのです。

●中性化

二酸化炭素や排気ガスによって、コンクリート内部のカルシウム化合物が中性化する現象です。

コンクリート表面が中性化すると、苔などが発生しやすくなりますが、内部まで中性化していくと鉄筋が腐食し、ひび割れが起こります。

●気温変化(凍害)

急激に温度が下がることでコンクリートが収縮し、ひび割れにつながることがあります。

また、寒さの厳しい地域では「凍害」が起こる可能性も考えられます。

こちらは、コンクリート内部の水分が凍ったり溶けたりを繰り返すことによって生じるものです。

●地震

地震は建物だけでなく、塀や擁壁にも影響します。

大型地震があったときには、外構部分の状態もチェックしてみましょう。

次項では、DIY補修が可能かどうかの判断基準をご紹介します。

軽度のひび割れならDIYで補修しよう!判断基準を解説

もしご自宅のコンクリート擁壁にひび割れを発見したなら、その「幅」を確認してみましょう。

基本的には、三段階で対応が分かれます。

※幅を調べるときには、市販されている「クラックスケール」を使うと便利です。

【0.3ミリ以下のひび割れ:DIY補修可能!】

髪の毛のように細いひび割れは、「ヘアークラック」と呼ばれます。

コンクリート表面のひび割れなので、耐久性に支障はありませんが、見た目が気になるときには補修を考えてみましょう。

【0.3~1ミリ以下のひび割れ:DIY補修可能だが業者も視野に!】

ヘアークラックが進行した状態です。

DIYでの補修も可能ですが、心配な方は業者に診断してもらってください。

ちなみに、ひび割れ幅が0.3ミリ以上で、深さが5ミリ以上の場合は「構造クラック」と呼ばれます。

【3~4ミリ以上のひび割れ:業者に連絡を!】

コンクリート擁壁の場合は、3~4ミリ程度のひび割れになってくると要注意です。

また、横方向のひび割れは「強度不足」が疑われます。

この状態まで進行してしまったら、DIYでの補修は避けて業者へ連絡してください。

補修材は目的に合わせて選ぶ!

コンクリート擁壁をDIYで補修していくなら、「補修材」を用意する必要があります。

補修材は、インターネット通販やホームセンター等で購入できますので、用途によって選んでいきましょう。

ひび割れや穴埋めでは、主にセメント系の補修用モルタルを使います。

さまざまなタイプが販売されていますが、広範囲のひび割れ補修なら「スプレータイプ」が便利です。

ただ吹きかけるだけなので、DIY初心者の方でも簡単に扱うことができます。

そのほか、「パウチ容器タイプ」もおすすめです。

こちらは、ひび割れ部分に直接注入していくのですが、スプレータイプ同様、手が汚れないので気軽に使用できるでしょう。

また、穴埋めをするときには、「ペーストタイプ」を選んでみてください。

擁壁は平らな床とは違いますから、素早く固まるもののほうが適しています。

コンクリート擁壁をDIYで補修!作業手順を確認

ここでは、コンクリート擁壁の表面にひび割れが発生したときの補修方法をご紹介します。

浅めの場合と深めの場合、2パターンをそれぞれお伝えします。

ただし、【ひび割れが深い場合】には電動カッターなどを利用しますから、DIYの参考には【ひび割れが浅い場合】をおすすめします。

【ひび割れが浅い場合】

●用意するもの:ワイヤーブラシ、補修材、塗料(お好みで)

①割れ目を掃除する

ワイヤーブラシなどで、ゴミをかき出しましょう。

②補修材を流し込む

補修材を用意し、ひび割れ内部に注入します。

③上から塗装する

完全に乾かしてから、お好みで塗装してください。

【ひび割れが深い場合】

●用意するもの:マスキングテープ、電動カッター、プライマー、補修材、ヘラ、塗料(お好みで)

①マスキングテープで周囲を養生する

汚したくない部分は、事前に養生しておきましょう。

②電動カッターで、割れ目をV字やU字にカットして溝をつくる

これは、補修材を注入しやすくするためです。

③溝にプライマーを塗る

プライマーとは、塗料の下地材のことです。

④補修材を入れて、ヘラでならす

平らになるよう、徐々にならしていきましょう。

⑤マスキングテープを剥がす

補修材が乾く前に剥がすのがポイントです。

⑥上から塗装する

完全に乾いたことを確認したら、お好みで塗装していきます。

DIY補修の注意点をチェック!

最後になりますが、コンクリート擁壁のDIY補修で、注意すべき点について押さえておきましょう。

●補修作業は晴天時に行なう

補修材や塗料を扱うときは、気候状況に注意しましょう。

晴れていて、なおかつ湿度が低いと好条件です。

もし雨が降りそうなときは、予定を変更してください。

●施工前に汚れを落とす

汚れたままの状態で補修しても、きれいに仕上がりません。

補修範囲が広く、汚れがひどいときには「高圧洗浄機」を使ってみてください。

油分が付着している箇所なら、「中性洗剤」を使用してみましょう。

●施工後は「触らないでください」という張り紙をしておく

コンクリート擁壁は、道路や隣地に接していることが多いはずです。

作業後すぐは、まだ完全に乾いていないので、必ず近くに張り紙をしておきましょう。

コンクリートにひび割れはつきもの!軽度ならDIYで補修

コンクリート擁壁にひび割れが生じていても、ヘアークラック程度なら緊急性はありません。

しかし、見た目が気になるようでしたら、自らの手で補修してみましょう。

近年は、扱いやすい補修材が増えてきましたが、施工時の注意点を押さえ、失敗のないように作業してください。

「do-it-yourself」精神で、楽しみながらご自宅をメンテナンスしていけるといいですね。