区分所有者と占有者の違いって何でしょう?
「建物の区分所有等に関する法律」にある区分所有者と占有者。
調べてみても、いまいちピンとこない人も多いのではないでしょうか。
区分所有者と占有者は、同じ意味を表すこともあり、それぞれできること・できないことが、はっきりと分かれています。
区分所有者と占有者との違いについて、マンションを例にすると、分かりやすいかもしれません。
区分所有者と占有者の違いを知る前に
区分所有者と占有者の違い。
それぞれの言葉が、何を意味しているのでしょうか。
それにはまず、区分建物とは、一体なにかを知りましょう。
区分建物とは、1棟の建物が数個に区分けされ、それぞれが独立しているものを指します。
思い描きやすいものとしては、マンションではないでしょうか。
ある建物の内部が数個に区分けされ、住居・店舗・事務所・倉庫などの利用を目的として、使用できる建物のことを示します。
また、「建物の区分所有等に関する法律」(以下:区分所有法)では、マンションのことを区分建物と呼びます。
区分建物には、自分だけが使うスペース、他人と共有するスペースに分かれています。
自分だけが使用するスペースを「専有部分」、他人と共有するスペースを「共有部分」と言います。
また、「専有」「占有」は同じ音「センユウ」ですが、意味が違います。
専有は、一人だけで所有することを意味します。
占有は、自分のものとして所有することを意味します。
区分所有者と占有者の違い
区分建物について、お分かりになったでしょうか。
それでは、区分所有者と占有者の違いをみていきましょう。
このたび、中古マンションの角部屋を購入したAさん。
決済も無事済ませ、司法書士から受け取った、登記事項証明書を開けてみました。
「所有権に関する事項」という欄の権利者として、きちんと「A」と、自分の名前が入っていました。
早速Aさんは、お隣に挨拶へ向かうと、若い男性が顔を出しました。
この若い男性Bさんは、転勤で長期不在の叔父から、部屋を借りて住んでいるとのことです。
同じマンションの住人ではありますが、この二人には違いがあります。
Aさんが確認したのは、所有権保存登記です。
この権利者欄に氏名が記載されていると、所有者として、誰に対しても主張することができます。
Aさんのように、マンションの所有権を持っている人のことを、区分所有者と呼びます。
Aさんは、他人に家賃をもらって、貸すこともできる立場(オーナー)ということです。
一方、Bさんは、叔父さんから部屋を借りているだけの、占有者という立場になります。
例えば、BさんがレンタルショップでDVDを借りたとします。
この場合、DVDの所有者はレンタルショップですが、占有者はBさんです。
占有者では組合に入れない
5階に住むAさんは、帰宅時間が毎日20時を過ぎます。
Aさんは、マンションのエントランスからエレベーターまでの長い廊下が暗い、と感じていました。
帰宅時、隣に住むBさんとエントランスで、バッタリ会いました。
A「ここのエントランス、エレベーターまでずいぶんと暗いですね」
B「僕も思っていたんですよ、防犯上もよくありませんね」
区分所有者のAさんは翌日、管理組合長に事情を話したところ、同じ要望があるということで次回の集会で、議題に挙げられることになりました。
集会当日、議決権過半数により可決され安心しましたが、Aさんは最後までBさんの姿をみかけませんでした。
区分所有法には、区分所有者全員で構成される管理組合を置くことが定められています。
区分所有者であるAさんは、当然ながら組合員となります。
しかし、占有者のBさんは、組合に入ることができないという違いがあります。
組合員でない者は議決権がないため、集会に参加し、議決権を行使することができません。
区分所有者と占有者の違いはたくさんある
ある日、AさんはBさんから相談を受けました。
Aさんとは、反対側の隣人宅についてでした。
毎晩遅くまで騒いでいる、どうも無許可のバーを始めたらしいとのことです。
あきらかに住人ではない人の出入りや異変に、Aさんも気付いていました。
そのことを、さっそく管理組合長に相談しました。
組合長はまず、近隣住民に話を聞き、自身で実情を目の当たりにしました。
その結果、かなりの住民が迷惑していることが分かりました。
組合長は騒がしい家を訪問し、迷惑行為をやめるように申し入れました。
しかし、その後も、全くやむ気配がありません。
事態を悪質とみた組合長。
集会で議案にあげ、正式にやめてもらうよう、申し入れようということにしました。
そのとき、Bさんは集会に参加し、隣室の騒音の状況や証拠を提出し、実情を話しました。
集会決議過半数で可決し、組合の見解として、正式に迷惑行為の停止を申し入れました。
翌日から、人の出入りや騒音は、すっかりなくなりました。
区分所有者や占有者が共同の利益に反する行為をした場合、ほかの区分所有者は、行為の停止・使用禁止・競売請求ができます。
このケースでは、停止請求です。
行為の停止請求は、各区分所有者が、単独でも数人でも直接行うことができます。
しかし、訴訟を提起する場合、集会の議決数が過半数必要となります。
また、占有者は議決権を持たないという違いはありますが、今回のように利害関係ある場合、Bさんのように集会で意見を述べることができるのです。
区分所有者と占有者でも使用方法を守ることに違いはない
Bさんは上司が入院することになり、しばらくペットのチワワを預かってほしいと、お願いされました。
マンションの規約でペット飼育禁止の事項について、Bさんもよく知っていました。
Bさんは断りたかったのですが、ついに押し切られてしまいました。
Aさんは、すぐにBさんが犬を飼い始めたことに気付きました。
事情を聞いて、少し気の毒に思いましたが、ルールなのでやめたほうがいい、と注意をうながしました。
どこから話が伝わったのでしょうか、組合長の耳にも入っていました。
組合長は、改めなかった場合、叔父さんに皆が迷惑した損害を請求すると言ってきました。
Bさんは、青くなりました。
長期で預かってもらえる市民愛護団体を見つけ出し、上司に了承をもらって、チワワを預けることにしました。
建物・敷地・附属施設の使用方法について、規約・集会決議の遵守義務は区分所有者、占有者に違いはありません。
また、区分所有者が占有者の違反行為を放置している場合、占有者に貸している区分所有者に対して、損害賠償を請求することもできます。
管理費を負担する義務の違い。区分所有者と占有者
かねてから、計画を進めてきたマンション敷地内の農園がついに完成しました。
収穫した野菜の収益分を、管理費に還元するということです。
Aさんは、野菜作りに挑戦しようと思いました。
そして、AさんはBさんも誘いましたが、Bさんはこう言います。
B「やってみたいのですが、僕は管理費を払っていないから参加できませんよ」
A「じゃあ、管理費を払えばいいじゃない」
後ろからきた組合長が、二人に声をかけました。
「Bさんから管理費を徴収することはできないんですよ。
レンタルスペースがありますから、Bさんは使用契約を結んでもらうと利用することができますよ」
このような農園を、規約共用部分と言います。
本来なら、専用部分として独占できる部分を、規約によって共用部分とすることができます。
区分所有者は、所有者として共有部分に関する費用を負担し、共用部分から生まれる利益を受けることができます。
区分所有者とは違い、占有者は管理費を支払う義務がありません。
上記のような場合、管理組合とBさんが農園の賃貸借契約を結ぶことにより、使用可能というわけです。
区分所有者と占有者の違い・まとめ
<区分所有法上の違い>
・区分所有者は、所有者として登記している人または法人
・占有者は、区分所有者から借りている人または法人
(区分所有者の了承ない場合や不法に占拠している場合も含まれます)
<組合の構成員としての違い>
・区分所有者は、管理組合の構成員となり、管理費の負担義務がある
・総会・集会の議決権がある
・占有者は、管理組合の構成員とはならないため、管理費の負担義務はない
・総会・集会の議決権はないが、利害関係がある場合、意見陳述が認められる