家賃を延滞すると、どのようなことが起こるのでしょうか。
家賃に利息がつく?
その金額はどのくらい?
その後はどうなってしまうの?
1日くらい平気だよ、と考えている方は要注意です。
家賃の滞納を続けていると、裁判から退去ということにもなりかねません。
家賃を延滞すると利息が発生します
アパートやマンションなどの家賃を延滞した場合、利息は発生するのでしょうか。
まず、契約書に関係なく、家賃を1日でも延滞するとその分のペナルティを支払わなくてはなりません。
遅れた理由が何であれ、賃貸借契約を交わした以上、契約書にある期日までに、家賃を支払う約束をしているためです。
例えば、振り込みは期日にしたけれど、銀行の取扱時間外で翌日扱いになる、などは延滞とならないでしょう。
実際に振り込みをしたのが期日中であれば、利息は発生しないと考えられるのではないでしょうか。
これは、生活する中で、貸主と借主の関係性が深く影響することでもあります。
多少の遅れを「いいよ、いいよ」と笑ってもらえる関係性ならば問題ありませんが、そうではない場合もあるでしょう。
法律上、貸主は借主に対して遅延利息を請求できる権利があります。
もし正月やお盆、銀行の取り扱いが数日休止する場合には、前もって振り込み、もしくは入金しておく。
ちいさなことですが、こうすることでお互いに不要な心配がなくなります。
家賃を延滞した場合利息はいくらになるのでしょうか
家賃を滞納した場合、一体いくらの利息が請求されるのでしょうか。
滞納した家賃の「利息」は、いわゆるお金を借りたときの「利息」とは違うものです。
家賃を延滞したことで、貸主に損害を及ぼしたことによる賠償金で、これを遅延利息とも呼びます。
遅延利息は、どの利率を適用しているかにより異なります。
利率には、約定利率と法定利率があります。
約定利率は、契約上の特約として、お互いが「約束を守らなかった場合はこの利率で損害を賠償しましょう」と納得して決めた利率のことです。
約定利率は、消費者契約法で、最大年14.6%まで定めることができます。
これ以上高い利率は、公序良俗に反するとして無効となります。
法定利率は、この特約を定めなかった場合、民法第404条にある、年5%が適用されることとなります。
また、借主が事業者の場合、特約がなければ商事法定利率が適用となり、こちらは年6%となります。
家賃を延滞したとき、利息の計算方法
では、具体的に計算方法を見てみましょう。
家賃が80,000円のアパートで、1ヶ月延滞した場合、遅延利息はいくらになるでしょうか。
特約がなく、法定利率が適用される場合の計算式
遅延損害金=家賃×法定利率×遅延日数÷365(うるう年は366日)
この場合、80,000×5%×30日÷365となり、339円となります。
(初日算入・小数点以下第1位切り捨て※諸説あり)
特約があり、年14.6%と定めた場合、
遅延損害金=家賃×約定利率×遅延日数÷365(うるう年は366日)
こちらでは、80,000×14.6%×30日÷365となり、992円となります。
これら遅延損害金と家賃を合わせた金額を、貸主へ支払うこととなります。
あまり大きな金額に見えなくても、繰り返すと次第に大きな金額となります。
また、期日さえ守れば支払わなくてもよいお金です。
そして、請求されたときには、必ず支払わなくてはならないのです。
できるならば、家賃支払いの期日には遅れたくないものです。
家賃の延滞した利息のほかにもある。使用損害金
家賃の遅延に対して、遅延利息が発生することがわかりました。
次に、遅延利息を無視し、家賃の延滞が続き、契約の解除となったあと、速やかに退去しない場合にも別に損害金が発生します。
この場合の損害金は、契約時に合意で決められた違約金です。
「退去後、明渡から遅滞した場合、違約金として賃料の倍額を支払う」
上記のような特約が設けられている場合があります。
この場合も、支払わなくてはなりません。
使用損害金は、賃料相当損害金とも言われます。
こちらは、通常生ずべき損害、すなわち家賃相当の金額が目安となりますが、裁判の例では家賃の倍額が認められたケースがあります。
ここまで家賃の滞納が続くと、滞納家賃と遅延利息にプラスされて使用損害金を支払うことになります。
家賃を延滞。家賃や利息をほうっておくとどうなる?
家賃や遅延利息をそのままにしておくと、どのようなことになるのでしょうか。
まず、管理会社もしくは貸主から家賃の督促があります。
次に連帯保証人もしくは保証会社へ連絡が行きます。
保証会社は遅延分を建替えて支払われますが、次は保証会社からの督促を受けることとなります。
保証会社への支払いが滞ると、内容証明郵便による督促から裁判で明渡しや給与差押えの裁判、という流れになるかと思われます。
支払い督促の裁判も考えられますが、同じことを繰り返さないためにも、通常は契約解除の申し立てをされることが多いようです。
契約解除の申し立てが認められると、結果退去せざるを得ません。
裁判に負けると、訴訟の費用も加算されます。
しかし、契約解除による明渡しの裁判は、1日や数日の遅れで起こせるものではありません。
明渡しが認められるためには、条件があります。
・貸主と借主の間の信頼関係が破壊された
家賃の延滞を理由に提訴した場合、2から7ヶ月の滞納で、契約解除が認められた裁判の例があります。
ほかに考慮されることがありますが、裁判では、信頼関係が少しでも残っているのであれば、賃貸借契約を持続させる判決をする傾向にあると言えます。
契約の解除を望まないときは、早急に家賃を支払う意思を相手に伝え、実行する必要があります。
家賃を延滞しそうなときは
家賃の遅延にはさまざまな事情が考えられます。
うっかりの延滞であれば、すぐに管理会社や貸主へ連絡するなどした場合、たいていは遅延利息など求められる可能性は低いでしょう。
長期不在の場合、あらかじめ管理会社や貸主と相談し、家賃の前払いや後払い、引き落としであれば不在期間分の入金で解消すると思われます。
病気の際は、意識がない状態でない限り、連絡は可能であると思われますし、家族や連帯保証人に代わって連絡を入れてもらうこともできるでしょう。
経済的にどうしても支払うことができない場合、すぐに貸主や管理会社へ支払い方法の相談をされたほうが良いかと思われます。
現状の説明と期限を切り、いつまでに支払うか、もしくは分割で支払うなど改めて約束をすることが大切です。
それでも話を聞いてくれないこともあるかと思われます。
このときは、迷わず公的機関・民間機関や弁護士、司法書士の無料相談を利用してみるのもひとつの方法です。
法テラスや消費者センターで必要な知識を持つ専門家を紹介してもらうことができます。
弁護士や司法書士など間に入ってもらうと、相手も納得しやすいというメリットがあります。
いちばんよくないことは、遅延利息や滞納をそのままにしておくことです。
そのままにしておいて事態が好転することは、まずありません。
相談することで、必ず、何かしらの方法が見つかるはずです。
家賃を延滞したとき、しそうなとき
・1日でも遅れたら遅延利息が発生する
・遅延利息には約手利率と法定利率のどちらかが適用される→契約書で確認
・請求されたら支払わなくてはならない
・遅延を続けると裁判になる可能性がある
・契約解除を望まない場合、支払う意思と実際の支払いを実行する→遅延厳禁
・延滞しそうになったとき、どうしても支払えない場合はすぐに相談する