賃貸マンションなどの家賃は、毎月決まった期日までに支払わなければなりません。
しかし、一人暮らしの人が緊急入院してしまった場合など、支払う意思があったとしても手続きができません。
退院してすぐに支払いしたものの、数日間延滞してしまったら、やはり延滞金が発生するのでしょうか。
今回は、この延滞金とその計算方法について勉強していきましょう。
家賃滞納の延滞金やその計算方法は契約書に規定されている
皆さんが賃貸マンションなどを借りる場合、不動産屋さんなどの仲介で、オーナーさんとの間に賃貸契約を結びますね。
その際に交わす契約書には、賃貸契約における色々な契約条項が記載されています。
その中に、家賃の支払い期日や支払い方法、滞納した場合の延滞金の計算方法などについての規定も記されています。
契約の際には、重要事項説明などでこれら契約書の中身の説明を受けて、承諾した上で契約しているはずです。
そのため、万が一何かの事情で家賃を支払うのが遅れてしまった場合など、契約書の規定に従って、延滞金を支払わなければなりません。
中には、個人のオーナーさんなどで、期日までに家賃が支払えない事情などを前もって連絡しておけば、延滞金を取らない場合もあるかもしれません。
ただ、これはオーナーさんの気遣いによる親切な対応というだけで、本来はそうはいきません。
一般的には、家賃の滞納は契約違反に当たるので、ペナルティとして延滞金が課せられるのが当たり前といえます。
遅れていた家賃を支払った際には、遅れた日数分の延滞金の請求をされますので、先方の指示に従い支払うようにしましょう。
家賃滞納はまず報告を、さらに延滞金も支払うこと
ところで、皆さんがもし家賃を期日までに支払えない状況になった場合、どうしたらよいでしょうか。
まずはオーナーさんや管理会社などに、連絡を入れて事情を話しておくことが先決です。
家賃の支払いが遅れる理由はもちろんですが、いつ支払うことができるのかが分かれば、それもできるだけ伝えておくべきです。
そのうえで、できるだけ早急に支払う努力をし、支払った際には再度連絡をして、入金を確認してもらうようにしましょう。
また故意でなくても、自動引き落としなどの場合は、たとえ1円でも残高が不足していた場合、家賃は引き落とされません。
このような場合も、やはり家賃滞納になってしまいますので、引き落とし期日前には、口座の残高を確認しておくことも大切です。
引き落としができなければ、おそらく電話や書面でオーナーさんや管理会社から通知が来るはずです。
期日を決めて再度引き落とされるか、こちらから振込するなどの指示があると思いますので、早急に対応しましょう。
このように、たとえ過失といえども、やはり家賃の滞納である以上、延滞金が発生します。
オーナーさんや管理会社が、入金確認後に遅れた日数分の延滞金を計算して、入居者に請求しますので、指示に従って支払いましょう。
ところでこの延滞金は、どのような計算方法で算出されているのでしょうか。
家賃滞納の延滞金の計算方法とは
家賃の延滞金は、賃貸契約の契約書に規定されている延滞利率によって変わってきます。
契約書には、一般的に年利何%という延滞利率が規定されており、家賃×延滞利率×延滞日数/365日という公式に当てはめて計算します。
たとえば、延滞利率が年利10%、家賃が月額10万円で10日延滞したとすると、10万円×0.1(10%)×10日/365日ということになります。
計算すると、273.9円になり、端数処理は規定により変わりますが、切り捨てした場合は273円になります。
実際に計算してみると、それほど大きな金額ではありませんね。
ただ、「支払いが遅れれば延滞金が発生する」と思うと、人間はなるべく遅れないようにしようと考えるものです。
なぜなら、本来払わなくてもよいお金を払わなければならないと感じるからです。
つまり延滞金は、その金額が問題ではなく、どちらかというと、家賃滞納をけん制する目的で定められているといえるでしょう。
管理会社やオーナーさんなども、微々たる金額を延滞金として徴収するよりも、毎月の家賃を遅れのないように回収できるほうがよいでしょう。
それは、延滞金の計算をする手間や人件費を考えると、たとえ延滞金を払ってもらっても、たいして得にはならないといえるからです。
延滞金を計算するための延滞利率の根拠は民法?
ところで先ほど、延滞金は契約書に規定されている延滞利率によって変わってくると述べました。
家賃に延滞利率や延滞日数をかけて延滞金を計算するためです。
この延滞金の利率に関しては、色々な法律から根拠を得て、オーナーさんや管理会社が独自に定めているのが現状です。
そのひとつが、民法による利率です。
民法では、「家賃の支払いは金銭債務である」としています。
従って、債務不履行の場合には損害賠償として、借主は貸主に対して、不払い額に年5%の法定利率による利息を付して支払わなければならないと定めています。
しかし実際には、年利5%を延滞利率としている業者は多くありません。
法律に定められているのに、これはどういうことなのでしょう。
実は民法は、任意法規とされており、強制力のある強行法規ではありません。
もし当事者が、民事の規定と異なる権利や義務・使用方法を定めた場合には、当事者間の合意が民法に優先するとされているのです。
そのため、多くの管理会社やオーナーさんは、賃貸契約書に別の利率を採用していることが多いようです。
ただ、そもそも延滞金が請求できるのは、民法第419条の金銭債務の特則が根拠となっているようです。
それなのに金利だけは民法に沿わないというのも、少しおかしな気がしますね。
実際の延滞金の利率は民法ではなく消費者契約法から
ところで、延滞金の計算に民法の法定利率である5%を採用していないのならば、管理会社やオーナーさんは、何を基準に利率を決定しているのでしょう。
それは、消費者契約法です。
消費者契約法は、悪質な商法から消費者を守るために作られた法律ですが、第9条に消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等が定められています。
そこに、「遅延損害金につき年利14.6%を超える部分についての条項は無効」と書かれています。
一般的にはこれを根拠として、家賃滞納の延滞金を、その最大の14.6%と定めている場合が多いようです。
つまり、貸主である管理会社やオーナーさんは「事業者」、借主は「消費者」、延滞金は「遅延損害金」と位置付けて、法を解釈しているわけです。
他にも、貸主が賃貸借を「商行為」として行う場合の法定利率については、商法第3条に定められています。
その商事法定利率は年6%で、民法も同様ですが、消費者契約法と比較するとかなり低く設定されています。
そして、多くの業者は、この中の消費者契約法を根拠として、契約書で延滞利率14.6%を謳っています。
そう考えると、消費者を守るために作られた消費者契約法が、結果的には延滞利率を高く設定することに利用されている気がするのは私だけでしょうか。
家賃は延滞金が発生しないように支払うのが基本
さて、家賃滞納に対する延滞利率に関する考察を、法的根拠をもとに述べてきました。
法律はその解釈によってさまざまに捉えることができ、言い換えると利用することができるわけです。
ただ、皆さんの立場では、法律うんぬんではなく、賃貸契約書がすべてです。
万が一家賃を延滞してしまったら、賃貸契約書を見て、延滞利率にのっとって計算された請求金額が適正かを判断していただきたいと思います。
しかし実際問題、たとえ利率が14.6%としても、家賃10万円、延滞10日とした場合、延滞金は400円です。
管理会社やオーナーさんからすると、手間のかかる延滞金より確実な家賃収入を求めるのは当然といえるでしょう。
そのため、家賃滞納をけん制する目的で、賃貸契約書に延滞金を1日500円や1,000円などと規定している業者もいます。
これは、利率から見ると実際には法律に違反していると見なされますが、それが違法などとして覆されるのは裁判の場のみです。
ややこしいことにならないように、賃貸契約書を交わす際には、延滞金の利率を確認しておきましょう。
そして何よりも、まず延滞金を発生させないことが大切です。
引き落としの場合は期日前に口座残高を確認し、振込などの場合は期日に余裕をもって家賃を支払うことを、心がけていただきたいと思います。
家賃の支払いは入居者の義務と心得る
賃貸契約は基本的に成人にしかできません。
つまり家賃の支払いは、賃貸契約をした以上大人としての義務ですので、滞納しないようにするのが当然といえます。
また、滞納が続くようだと、延滞金だけにとどまらず退去を求められることもあります。
そうならないためにも、家賃は何よりも先んじて支払うものと心得ておきましょう。