賃貸契約期間中、何が起こるのか、誰にも予想はできません。
予想しなかったことでも、あらかじめ知っておくと、いざというとき安心です。
途中の解約・違約金・契約の変更などについて、契約前に確認しておき、ぜひトラブルの予防対策を。
賃貸契約期間の途中でも解約はできる?
さまざまな事情で、賃貸契約期間の途中での転居はよくあることです。
まずは、契約書の契約期間の欄を確認しましょう。
マンションやアパート、貸家など、通常1~2年契約ではないでしょうか。
『貸主に少なくとも30日前に解約申し入れを行うことにより、契約を解除できる』
このように、契約解除の事項があれば、契約期間内でも途中で解約することができます。
この期間を解約通知期間といいます。
また、借主が1ヶ月分の賃料を支払うことにより、解約申し入れた日から30日以内であっても即時解約できる、としている契約もあるでしょう。
定期借家契約の場合、定めた期間を貸借する契約なので、原則は途中で解約できません。
ただし、例外として下記の条件にあてはまれば、解約ができるとしています。
それは、「床面積200m以下の居住用建物であり、やむをえない事情により居住を続けられないこと」です。
個々のケースによりますが、例えば、転勤・療養・親族介護などです。
やむを得ない事情とは、予想外、外因性による事情というのが主なものです。
賃貸契約期間の途中での解約、違約金の発生について
解約予告期間内に貸主へ通知しない場合、一定の違約金を貸主に払う、という特約を設けていることがあります。
また、契約期間内の解約を禁止し、期間中に解約した場合、違約金が発生する旨の特約も有効です。
この特約自体は、貸主と借主の合意によって決められたことなので有効となります。
しかし、違約金については、金額によっては当然には有効とならない、とされています。
例えば、残りの契約期間が数年残っていた場合、その残りの期間、全額は請求できない、ということになります。
マンションや貸家の居住用と、テナントなどの事業用では契約内容が違います。
途中解約できる契約が多い居住用に比べ、事業用は途中解約できない特約を付していることが多いのです。
この点をよく注意して契約しないと、違約金を支払わなければならない、ということになりかねません。
テナントの契約では、違約金が12ヶ月と、かなりの金額になることも考えられます。
賃貸する際、契約期間の途中で解約できるか、違約金の特約の内容をよく確認することが大切でしょう。
賃貸契約期間の途中で貸主の変更・死亡などした場合
アパート・マンション・貸家など、オーナーチェンジによる貸主変更もめずらしくないでしょう。
所有者変更について、貸主に通知義務はないのですが、通常借主に変更通知が届きます。
貸主変更により、賃料の振込先や管理会を変更するためです。
これを悪用した詐欺などがあるようです。
以前の貸主、管理会社へ念のため確認をとるほうが安心です。
誤って以前の口座へ振り込んだ場合、前貸主にその旨を伝え、返金してもらう。
または銀行で組戻しという手続きを踏み、口座へ戻してもらいましょう。
貸主が亡くなり、口座が凍結ということもあるようです。
貸主宅が近い場合、直接家賃を持参するケースが多いようです。
いずれにしても、家賃の滞納にはくれぐれも注意が必要かと思われます。
振込先がわからないからと、放置しておくと滞納から解約となってしまいかねません。
賃貸契約期間途中の貸主変更は、敷金は新貸主に引き継がれることとなります。
変更時に、前貸主に対して家賃滞納があれば、敷金から引かれた分が引き継がれます。
契約期間が終了し、敷金の返還を請求先は、新家主となるのです。
賃貸契約期間の途中で契約内容を変更する場合
まれに、契約期間の途中で、契約内容の変更を要求されることがあります。
貸主からの変更は、契約期間の変更、特約追加、家賃の変更などがあげられます。
借主からの変更は、氏名の変更、名義変更、保証人の変更などではないでしょうか。
基本的に、貸主、借主双方が納得した上での契約内容の変更は有効となります。
ただし、借主に不利な条項追加であれば、その追加事項は無効となります。
また、貸主は契約更新の1年前から6ヶ月前までに条件を変更しなければ、更新しない旨の通知をしなければなりません。
この際、借主は条件をのめない場合は、法定更新となり、契約内容に変更はなく、契約期間は定めにないものとされます。
借主は、その新しい契約を受け入れる必要はないでしょう。
逆に、借主にとって有利な内容であった場合は、有効となります。
普通建物賃貸借契約から定期借家契約に変更する場合は、注意が必要です。
平成12年3月より前に契約した貸家の場合は、この切り替えはできません。
普通建物賃貸借契約は、貸主に正当な事由がない限り、契約終了とはなりません。
更新すれば住み続けられますし、解約には貸主に正当事由が必要です。
それに対して、定期借家契約は期間が来れば終了する契約形態です。
定期契約期間で転居することが決まっていない限り、借主は十分な検討が必要ではないでしょうか。
賃貸契約期間の途中で借主が亡くなったとき
マンションや貸家の賃貸契約期間の途中に、借主がお亡くなりになるケースがあります。
貸借の契約には使用貸借と賃貸借契約があります。
使用貸借は、無償で貸し借りを行うもので、親子間、ごく親しい間柄などでこのケースが見られます。
賃料を払うことで貸借契約を結ぶのが、賃貸借契約といいます。
契約期間の途中で借主がお亡くなりになった場合、使用貸借ではそこで契約が終了します。
賃貸借契約の場合、借主がお亡くなりになっても、契約は終了しません。
借主の相続人全員が賃貸借権を相続することになります。
借主のほかにも同居する相続人がいた場合、そのまま継続して居住することができます。
もし、借主が一人で居住していて、相続人が賃貸借契約を続ける理由がないときは、相続人が契約を終了の手続きを行います。
このとき、相続人は、誰が賃借権を相続するか決まるまで、相続分に応じて引き継ぎます。
貸主が解約をしたい場合、誰か一人に相続されるか決まるまで、相続人全員に対して意思を伝えなければなりません。
解約するとなり、明渡しまでの賃料や敷金を上回る滞納家賃などは、相続人のうち誰か一人に対して全額を請求することができます。
賃貸契約期間の途中で借主が蒸発・夜逃げなどしたとき
契約期間の途中で蒸発や夜逃げをされてしまうと、貸主に多大な迷惑がかかります。
連帯保証人から滞納家賃の回収を望むことはできますが、契約解除はできないのです。
連帯保証人から借主の所在が分かれば良いのですが、あまり期待できません。
まずは家族、親族、取引先などから所在不明の証拠などを集め、所在調査をします。
契約の解除をするため、簡易裁判所へ公示送達をします。
公示送達とは、相手の所在が分からなくても訴状を送ったとみなす制度のことです。
この場合『賃貸借契約を解除します』という意思表示を行うことを申し立てるのです。
その申し立てが認められると、その旨裁判所に掲示されます。
相手に実際届いてはいなくとも、2週間後、到達したとみなされるのです。
公示送達後、裁判所に対して建物明渡し訴訟を提起することになります。
家財道具の処分や未回収家賃があれば同時に家財道具の差押競売の申し立てをします。
これに勝訴することによって、明渡しの強制執行、家財道具の処分、という流れになります。
賃貸契約期間の途中で変更できることとできないことがある
貸契約期間の途中で変更できることとできないことがあります。
使用貸借契約:いつでも解約できる
普通賃貸借契約:貸主からは、1年前~6ヶ月前までに通知、要正当事由。
借主からは、解約期間前、特約があれば期間内も可能。
定期借家契約:床面積200m以下の居住用建物で、やむをえない事情があり、継続不可能な場合は可能。
違約金:特約により発生する。
契約内容:合意変更できる。H12.3以前の普通借家から定期借家への変更不可。
家主:振込先変更に注意。敷金は新家主へ承継される。