日本での賃貸契約には、連帯保証人がつきものです。
連帯保証人は、重い責任を負うことになるので、親族がなるのが一般的です。
連帯保証人とは、どのような責任を負うのでしょう。
また、解除したくなったら、すぐに出来るものなのでしょうか。
賃貸契約での上限が設けられた連帯保証人
賃貸物件を借りる際に必要となるのが、連帯保証人です。
実は、この連帯保証人という制度、日本特有の制度なのです。
連帯保証人とは、借主が家賃を滞納した場合や、設備を壊してしまい弁償できないときなど、借主に代わって支払いをする人のことです。
借主と同じ責任を負うので、とても重い責任を背負うことになります。
連帯保証人制度は、ただの日本の慣習というわけではなく、民法で定められているため、法的な効力を持ちます。
賃貸契約書において、「連帯保証人は、借主が貸主に対して負う債務について連帯で保証する」とされています。
今までは、連帯保証人が保証する金額には上限が定められていませんでした。
そのため、滞納が起きると負債は増え続け、裁判まで発展してしまうと強制執行費用や原状回復費用など大きな負債になってしまうこともありました。
しかし、民法の改正によって、連帯保証人が負うことになる限度額を明記することが必要になりました。
契約時に、連帯保証人が保証する金額の上限が設けられるのと同時に、そのことを契約書に記載していないければ、連帯保証人を解除できるということになるのです。
改正しても連帯保証人の解除は難しい
この改正は、借主側からすると、有利な決定事項といえます。
しかし、賃貸物件の大家側からしても悪いことではありません。
これまでのように、負債に上限がないと、トラブルの際に負債額が大きくなりすぎてしまい、連帯保証人も債務履行が難しくなってしまうこともありました。
上限が決まり、それを必ず契約書に記載しなければならないということになると、大家としても責務を意識せざるを得ません。
そのことが、トラブルの際の対処を早め、最小限で食い止めようとする意識が強くなるといえます。
改正について、おさらいしてみましょう。
この民法の改正は、平成29年6月に公布されました。
ポイントは、
・個人の連帯保証人に向けたものであること
・連帯保証人が責任を負うものは「債務の元本」「利息」「違約金」「損害賠償金」「その他に発生する債務」
・債務の額や違約金、損害賠償の上限額は、契約で定めておく。
となります。
しっかりと把握しておきましょう。
しかし、債務の上限が定められているとしても、連帯保証人が債務を負わなければならないことは変わりません。
連帯保証人になると、それを解除するのは難しいことです。
連帯保証人は誰でもなれるもの?
ところで、賃貸契約において保証人と連帯保証人の違いとは何でしょうか。
連帯保証人は、借主とまったく同じ義務を負わなければなりません。
また、借主に請求するように求めることも出来ず、支払いの義務だけはあります。
しかし、借主がどうしても支払いが出来ない場合、保証人が代わりに支払うことになります。
借主本人に請求を行うように求めることも出来るのです。
このように、保証人と連帯保証人は、責任の重さが大きく違います。
そのため、連帯保証人にも審査が必要になります。
借主に代わって支払いをすることを要求されるので、支払い能力の有無が重要なのです。
例えば、親がまだ現役であれば、連帯保証人として認めてもらいやすいのですが、高齢となると認めてもらえないこともあります。
反対に、子どもを連帯保証人にする場合は、すでに独立して就職しているのであれば、認められる可能性は高いです。
血縁でなくても、友人などでも連帯保証人をお願いすることは出来ます。
安定した収入があるのであれば、認められます。
しかし、大きな負債が発生する可能性があり、途中の解除も難しいとなると、やはり親族がなるのが一般的です。
まず親、子ども、兄弟といった近い血縁に頼むのが一般的です。
連帯保証人になってくれる賃貸保証会社
さまざまな事情によって、賃貸契約の際に連帯保証人を立てられないという人もいます。
連帯保証人は、誰でも良いというわけではありません。
審査もあり、重い責任を負わなければなりません。
引き受けてくれる人がいない場合もあるのです。
そのような際に使うのが、「賃貸保証会社」です。
賃貸保証会社は、保証料を支払うことで、連帯保証人の役割を担ってくれる会社です。
本人が審査に通れば、誰でも使うことができます。
重い責任の連帯保証人を担ってくれるのですから、審査が厳しいと思われるかもしれませんが、そこまでの厳しい審査ではありません。
クレジットカードなどの滞納がなければ、即日で審査が完了することもあります。
保証会社に支払う保証料の目安は、初回に1~3万円ほどと考えておきましょう。
2年契約で結ばれることが多く、更新時には更新料が必要になります。
賃貸保証会社を利用することによって、大家にとっては家賃が保証されるため安心です。
そのため、「賃貸保証会社必須」という物件も増えてきています。
賃貸保証会社は、連帯保証人がいない人にとってはありがたい存在ですが、連帯保証人が立てられる人にとっては、保証料は余計な出費です。
もし、賃貸保証会社の解除がしたいのであれば、大家と交渉になります。
連帯保証人がいて、家賃を毎月きちんと支払っていて信用性があれば、もしかしたら解除が認められるかもしれません。
交渉してみる余地はありそうです。
賃貸契約で連帯保証人の解除はできるのか?
連帯保証人の負う役割は重いものだと、何度もお伝えしてきましたね。
途中で、連帯保証人を解除したい、と希望すれば解除することは出来るのでしょうか。
これは、出来ません。
連帯保証は契約です。
借主の支払い能力に不安があるが、連帯保証人がいるから賃貸契約した、という大家もいるはずです。
連帯保証人が簡単に解除できてしまうと、借主が支払えない場合に、大家が大きな損害を負うことになってしまいます。
ですから大家は、簡単に連帯保証人の解除を認めないでしょう。
いったん結んだ連帯保証人の契約は、そう簡単に解除することは出来ないのです。
それでは、連帯保証人になってしまったら、どうやってもそれを解除することは不可能なのでしょうか。
実は、難しいことにかわりはないのですが、解除できることもあります。
次項でご説明します。
連帯保証人を解除できるケースがある
賃貸契約における連帯保証人の解除は、大家が受け入れれば可能かもしれませんが、それは保証を失い、大家がリスクを負うことを意味します。
大家がそのようなリスクを自ら負うことはほぼありません。
別の連帯保証人を用意して交代するというのも、認めてもらえれば出来るかもしれませんが、連帯保証人を代わってくれるという人を見つけることは困難です。
このように、連帯保証人の解除は大変難しいのです。
しかし、以下のような場合、解除できる可能性もあります。
・騙されて契約をした場合
・勘違いして契約をした場合
・脅迫されて契約した場合
・代筆されて契約した場合
・詐欺の場合
・未成年者の場合
上記の場合、絶対に契約を解除できるというわけではありませんが、解除できる可能性はあります。
連帯保証人を解除したいと考えている場合、「追認」に気を付けましょう。
追認とは、事後承諾のことです。
具体的には、
・弁済
・支払う意思を示す
・新たな書類に記名押印する
などです。
たとえ、騙されて連帯保証契約をされたとしても、お金を支払った時点で連帯保証人であることを認めたことになってしまいます。
支払うような意思を示すだけでも、連帯保証を認めたとされてしまうこともあります。
追認してしまうと、連帯保証人の解除はほぼ不可能といってもいいでしょう。
このようなケースもある、ということを覚えておきましょう。
民法改正によって安心感は増すけれど
気軽な気持ちで連帯保証人になることは危険です。
賃貸物件の連帯保証にまつわるトラブルが多いために、民法の改正が行われたともいえます。
この改正は、連帯保証人になる側からすると、安心感が増すことに繋がります。
しかしそれでも、自分が支払ってもよいという状況でない限り、連帯保証人になることはおすすめしません。