日本における建築物は、古来から木造で作られ続けてきました。
柱と横架材(梁・桁材)を組み合わせ作る工法で、伝統的なモジュールで柱のスパンも決められてきたのです。
現在でもその伝統は受け継がれ、木造建築物における柱のスパンも日本的な規格で設計されています。
今回は、木造建築物における柱のスパンをご案内いたします。
木造建築物の柱のスパン
遥か昔より、日本の伝統的な建築物は木造です。
基本的な木造の構造体は、縦に伝わる力を受け持つ柱材と、横に伝わる力を担当する梁・桁材で構成されています。
木造建築物の設計をする際に、間取りが決まればしなくてはいけないのが各柱の配置です。
一般的には、柱割と言われる作業となりますが、各部屋の間取りに合うように最も適した柱の位置を決めていきます。
構造上、柱の上部は梁や桁などの横架材で固定しないといけません。
大きな横架材を使えば柱のスパンも大きくできますが、柱が負担する重量も増してきます。
大きな力が加わる柱は、寸法を大きくすれば良いのです。
しかし近年、地震に対する構造や建材の画一化によって、柱のサイズやスパンもほぼ一定になってきています
昔は、大黒柱などの家のメインとなる柱も存在していました。
日本の伝統的な家屋である農家住宅や武家屋敷など、襖や障子を開けば複数の部屋が1つなるような構造となっています。
建築物の基本単位を知ろう!木造建築物の柱のスパンはどれくらい?
近年、日本で一般的に使用されている長さの表示はメートル法です。
しかし、日本にメートル表示がなかった頃、長さの単位は寸・尺・丈・間・町・里でした。
このうち、町・里は大きすぎるので建築には使用することがありません。
1寸(すん)≒30.3mm・1尺(しゃく)≒303mm(1尺=10寸)・1丈(じょう)≒3030mm(1丈=10尺)・1間(けん)≒1,818mm(1間=6尺)となります。
木造建築物において日常使用されているのが寸・尺・間の3つで、その中で基本となっているのが3尺の910mmです。
正確には909mmとなるのですが、数字が少数点以下となり細かすぎてしまうので便宜上910mmとしています。
建築の現場に行くと、「間」という単語を良く聞きますが、それは木造建築での1つの基準となっているのが1間(1,820mm)だからです。
尺を使った場合には、数値が大きくなり間違いやすくなるので、間を採用しているのでしょう。
もちろん、細かな場所では尺単位も使っています。
木造建築物の柱割りですが、木造柱のスパンとして使われているのが0.5間(910mm)となります。
しかし、様々な条件で910mmスパンで柱の配置ができない場合は、基本的(例外もありますが)に1間(1,820mm)までは、普通に飛ばすことができます。
諸事情により、1間半や2間を飛ばすこともありますが、構造上あまり好ましくはありません。
木造建築物の柱のスパンは開口部に関係
木造建築物で柱を配置していく場合、まずはコーナー部には必ず柱が必要となります。
そして、基本的に開口部(窓・ドア)の両側にも、窓などが取り付くために柱が必要です。
住宅などの用途における開口部において、採光・換気などに有効な窓幅が、0.5間・1間寸法の製品が最もメインのサイズとなっています。
ただ、最近では1間半(2,730mm)、または2間(3,640mm)といった大きな開口部を使うことも多くなっています。
その際には、開口部の取り付く柱や上階の形によって、充分な注意と検討が必要となります。
例外として、455mmとか600mmなどの幅が狭い窓もあるのですが、これらの開口部を使用する場合、柱が密に入りすぎて不要な柱が増えて非常に不経済となってしまいます。
そのような時は、柱の半分のサイズの半柱を使います。
狭小開口部の時は、片側柱・片側半柱で固定するか、両側を半柱にすることもあります。
半柱を多用して柱スパンを変更したりなどをして柱本数が不足してしまうと、構造上の不都合が生じるので注意が必要です。
木造建築物の柱配置は耐力壁も影響
近年、頻繁に発生する地震によって、木造家屋の倒壊のニュースもよく報道されています。
日本の法律の1つ、建築物・構造物に関する事項が定められた建築基準法には、当然の如く耐震基準も記載されていました。
しかし、大きな地震にも対応できる新基準が、2000年に行われた建築基準法改定の際、かなり厳しく改正されています。
建築基準法の改正以降、木造の建築物も厳しい検討をしなくてはいけなくなり、これまで行われていたような経験などからの柱スパンの割付では、必ずしも適合しなくなってしまいました。
現在の木造建築物では、柱と横架材に囲まれた区画を耐力壁として耐震設計を行っています。
これまでは斜めに入れるすじかい材を入れて耐力壁にしていたのですが、最近では構造用合板を柱と横架材に固定して耐力壁にすることも増えています。
他の建材と同じく構造用合板のサイズも幅半間(910mm)で作られている製品が多いので、柱のスパンも半間(910mm)が基準となっているのです。
しかし、ただ構造的に有効な壁を多用するだけでは充分な構造計画とは言えません。
柱スパンを画一化して、バランスよく配置するようにしましょう。
木造建築物で使われている特殊な寸法
木造の柱スパンの基準寸法が910mmになっていると説明をしましたが、特殊な寸法もあります。
昔から採用されている良く知られたスパンサイズは、京間(本間)・中京間(三六間)・江戸間(関東間、田舎間、五八間)などがあります。
京間は大間とも言われ、すでに慶長年間に使用されていましが、実際にはそれより古いと思われます。
柱スパンを6.5尺(1,969mm)としています。
中京間は、6尺3寸(約1,910mm)が1間となります。
主に江戸で使われていた柱スパンの寸法が江戸間で、1間を5尺8寸(約1,760mm)です。
京間・中京間に比べて、江戸間の1間は結構狭くなっています。
これも当時世界一の過密都市だった江戸ならではのことなのでしょう。
更に、団地サイズと称される寸法があります。
日本の高度成長期、増加した公団住宅などの狭小な室内に合わせた寸法です。
建売住宅全盛期の図面では1間1,800mm寸法が多く使われていましたが、これは建材寸法に合わせた設定なのでしょう。
木造柱も日本式スパンからメートルスパンに移行中
これまで、木造建築物においての柱スパンは、日本固有の寸・尺モジュールによって、決定されていたと説明をさせていただきました。
しかし、建設業界においても世界基準のメートル単位の採用が広がっているようです。
合板などのボード類や角材など、建材のほとんどが尺モジュールだったのが、最近ではメートル単位で製造させた製品が多く市場に出回るようになっています。
これまではメートルモジュールにすると建材とスパンの寸法が合致せず、かなりのロスが発生して建築単価が上がってしまうことになっていました。
しかし、メートル基準の製品が一般化することで、そのロスもなくなりスムーズな建築が可能となっています。
当然に、メートルの柱スパンを採用することで建物の内部も広がることになり、ゆったりとした空間を作り出すことができます。
この先、メートル単位に統一され日本の伝統寸法も消えてしまうのではと心配してしまいますが、これも時代の流れとしてしょうがないのでしょう。
伝統的なモジュールを守り続けた木造建築物の柱スパン
今回は、木造の建築における柱のスパンに関するお話をさせていただきました。
基本的な木造柱の割付は、その建物で採用されたモジュールに合わせて配置されていきます。
開口部やその他の条件で適当に外したり加えたりして、バランス良く配置していきましょう。
柱スパンの決定や配置によってその建築物の強度も変わってしまうので、慎重な計画が大切です。