賃貸物件にお住まいの方は、毎月の固定費として考えている家賃の値上げを、不動産会社や大家から伝えられた際、家計の負担になるなどの理由により、困惑する場合もあるかと思います。
今回は何故更新時などに家賃が値上がりするのか、値上がりの理由や時期、値上げを通告された際の借主による交渉や拒否する事ができるのか、などの疑問についてご説明します。
現在お困りの方も、家賃の値上げについて知識を得ておきたい方も、是非参考にしてみてください。
賃貸物件の家賃が更新時などに値上げする理由は?
更新時などに家賃が値上がりする理由は、大きくわけて
・地価が上がったため
・経済事情の変動
・周辺の類似物件の家賃と比べて、お住まいの物件が大幅に安い
などがあげられます。
それぞれについてご説明します。
【地価が上がった為、家賃が値上がりする場合】
賃貸物件が建てられている土地には「地価」という、その土地の価格があります。
地価は、その時々で大きく変動することもあり、地価が上がることで貸主が支払っている固定資産税も値上がりします。
この、貸主の固定資産税の値上げを補うために、家賃の値上げを通告される場合があります。
【経済事情の変動】
例えば、インフレなどにより物価が上昇した時など、経済の事情により家賃の値上げを通告される場合があります。
【周辺の類似物件の家賃と比べて、お住まいの物件が大幅に安い】
お住まいの賃貸物件と同じような間取りや築年数、立地条件のお部屋ですと、大抵は似たような家賃になります。
しかし、年月が経過しますと、お住まいの物件だけ家賃が大幅に安く設定されてしまっているケースもでてくる場合があります。
こういった他の類似物件と比べて、家賃に大きな差があるようですと、貸主は家賃の値上げをすることができます。
家賃が値上がりする時期は更新時のタイミングが多い
家賃が値上がりするタイミングとして、最も多いのはお部屋の更新時です。
お部屋の更新とは何か、疑問に思う方もいらっしゃると思いますので、まず更新についてご説明します。
賃貸契約は、一般的に2年で契約の満了日を迎えることが多く、同物件の賃貸契約を続け、暮らし続けるためには、更新手続きといった契約を再度締結する必要があります。
更新時の書類は、更新される1ヶ月程前には貸主より郵便で送付されます。
また、更新手続きを締結する際には、更新料などが発生し、決められた日付までに支払うことになります。
では何故、家賃の値上がりがこの更新時に多いのかといいますと、ある日突然家賃の値上がりをした場合、家賃を毎月の固定費として考えている借主の中には、大変困惑する方もいます。
貸主は、そういった方への配慮などもあり、契約の更新時といった区切りの良いタイミングで家賃の値上げを行うことがあります。
また貸主からしましても、更新時の方が値上げを通告しやすいといった理由もあります。
家賃が値上がりする時期は更新時とは限らない?
家賃の値上がりが必ず更新時におこなわれるとは限りません。
値上がりを通達された借主の中には、まだ賃貸されているお部屋の更新時期ではないのに、突然家賃の値上げを通告された方も、稀にいらっしゃるのではないでしょうか。
家賃は毎月の固定されている出費の中でも金額が大きい為、借主は突然値上げ通告をされると大変困惑するでしょう。
しかし法的なお話しをすると、貸主は、賃貸借契約書に賃料の値上げについての取り決めが記載されていない場合は、借主の承諾がなくても家賃の値上げを通告することができます。
また、借地借家法では、家賃の値上げに関する伝達期間は定められていません。
つまり、お住まいになられている物件の管理者である貸主の意向により、家賃の値上げを1ヶ月前や1週間前に通告された場合でも、法的には何も問題がありません。
賃貸物件の家賃の値上げに交渉などの対応方法はある?
それでは、借主は家賃の値上げに対して、絶対に承諾しなければならないのでしょうか?
家賃の値上げ通告が、更新時などに送付されてきた際に「家賃の値上げに対する対応方法がわからないから」と家賃の値上げを承諾してしまうケースは主かと思われます。
中には家賃の値上げに関する通告がきた際に、退去や更新の拒否、契約解除などを考える方もいらっしゃるのではないでしょうか?
家賃の値上げを通告する伝達期間は定められていませんが、家賃の値上げ自体は貸主と借主の両者による合意がなければおこなうことが出来ません。
つまり、「借主は必ず承諾しなくてはならない」といったことはなく、借主にも家賃の交渉をするなどの様々な対応をすることが出来ます。
更新時に家賃の値上げの通知が届いた際の対応方法
前述のとおり、借主が行うべき家賃の交渉とは、家賃の値下げを交渉するものではなく、「本来のあるべき適正な家賃の価格に戻す」交渉になりますので注意が必要です。
更新時に借主ができる家賃値上げに対する対応方法としては「承諾する」「話し合い、交渉をする」「家賃を供託する」の3点になります。
「話し合い、交渉をする」といった対応をおこなう前には、必ず物件に関する具体的な根拠のあるデータが必要になります。
例にあげますと、経済状況、近隣物件との家賃の比較や地価の確認、物件の詳細状況や情報の把握といった客観的な資料を用意する必要があります。
最も良い資料としましては、不動産鑑定士などに依頼した評価書や土地家屋調査士による土地建物の調査や測量の観点から見た物件の状況報告書などです。
しかし、これらは個人で調査するのは大変難しい為、各種専門家に依頼する必要があり、それなりの費用がかかります。
そのため、交渉が進まない場合や交渉までの時間を作る場合は「家賃を供託する」ことが望ましいです。
家賃の供託とは、家賃の交渉や更新時の交渉中に貸主が家賃などを受け取ってくれない事態に陥った場合、貸主の代わりに法務局が家賃を預かってくれるシステムです。
家賃供託につきましては、借主が直接法務局に行く必要がありますので、詳しくはお近くの法務局へお問い合わせ下さい。
法務局から供託の通知を受けた貸主は供託所に出向きお金を受け取るか、訴訟をするか選択することができます。
しかし、貸主が供託所より供託金を受け取った場合は、貸主が家賃の値上げを断念したことになり、契約の更新時ですと更新を認めたことにもなります。
急な家賃の値上げにより生じる問題は専門家などに相談しよう
家賃の値上げの交渉をおこなう場合は、多くの知識や情報が必要になります。
また、多くの専門業者への依頼が必要になりお金もかかります。
近年では賃貸トラブル、不動産トラブルに強く、専門におこなっている弁護士なども増えてきました。
初回相談が無料の弁護士事務所もありますし、お住まいの地域にあります市役所などでも弁護士による無料相談所が設置されている場合もあります。
ご自身のみで対応されるのが難しい場合は、こうした公共の相談所などを是非ご活用下さい。
また、住んでいる賃貸物件が大家から不動産会社へ委託されている場合は、不動産会社に相談することもできます。
力になって頂ける場合もありますので、気軽にご相談してみて下さい。
しかし、家賃の値上げ交渉後、やはり住み続ける事が負担に感じる、家賃の値上げ交渉はうまくいったが、その後の貸主との関係がギクシャクするといった問題がでる場合もあります。
そういった後々の事を考えていらっしゃる方は、家賃の値上げを契約の更新時に通告された場合は、思い切ってお引越しをするのも一つの手段かと思われます。
更新時に限らず家賃の値上げについての知識を知っておく
家賃の値上げは更新時とは限りません。
また、突然貸主から通告された場合でも、法的には全く問題がないのです。
家賃の値上げについての交渉や対応には、専門的な業者や専門の書類が必要になってくる場合がありますので、時間とお金がかかります。
もし、交渉などの解決までに、時間を要するようでしたら、家賃の供託を検討しましょう。
また、不動産専門の無料弁護士相談や不動産会社にも相談してみて下さい。