軽量鉄骨と木造の違いをご存知ですか?
新築や中古物件など、一戸建てを購入しようと考えている時、どちらの構造を選べばよいか悩む人も多いでしょう。
近年注目されている住宅のリノベーションやリフォームのしやすさなどにも、これらの構造はどう関わるのか気になるところです。
そこでこちらでは、軽量鉄骨と木造の構造の違いの他に、それぞれがもつ特徴、リノベーションやリフォームとの関係などについてお話ししていきます。
建物の構造にはどのような種類がある?
建物の構造と聞いて、すぐに思い浮かぶのは「鉄骨造」や「木造」ではないでしょうか。
建物の構造には、その他に「鉄筋コンクリート造」や「鉄骨・鉄筋コンクリート」があり、大きく4つ分けられます。
この記事では、鉄骨造の一種である「軽量鉄骨」と「木造」を中心にご紹介していきます。
まず、軽量鉄骨とはどのような構造なのでしょうか。
軽量鉄骨は、建物の骨組みにsteel(鉄)が使われる、鉄骨造(S造)の一種です。
もう一種の鉄骨造は重量鉄骨で、それぞれに次のような違いがあります。
●軽量鉄骨
鋼材の厚さが6mm未満のもので、主に一戸建て住宅やアパート、小規模店舗などに用いられる構造
●重量鉄骨
鋼材の厚さが6mm以上のもので、3階建て以上の大型マンションやビルなどに用いられる構造
鉄骨造では、骨組みの中心となる柱や梁に「鉄骨」を使い、それ以外の部分にはほとんどの場合「木」を用います。
住宅会社が手掛ける一般住宅向けの鉄骨造といったら、軽量鉄骨です。
これに対して、木造(W造)では、骨組みの中心となる柱や梁、強度を高める筋交いなど全てに、「木(wood)」を使い、組み立てます。
次項では、さらに軽量鉄骨と木造の違いについて細かくお話ししていきます。
軽量鉄骨と木造それぞれの「工法」の違い
軽量鉄骨と木造では、骨組みの素材が「鋼材」か「木材」かでまず大きく違いますが、その他にはどのような違いがあるのでしょうか。
ここでは、それぞれの工法の特徴についてお話しします。
軽量鉄骨では、主に「プレハブ工法」と呼ばれる建築方法が用いられます。
プレハブ工法は、建物用に規格された部材をあらかじめ工場で製造しておき、現場でそれらを組み立てて完成させる建築方法です。
さらに、工場内であらかじめ箱型にまで組み立てたものを現場に備え付ける「ユニット工法」も、軽量鉄骨の住宅ではよく見かけます。
軽量鉄骨では、鉄骨素材の柱と梁の他に、筋交い(ブレース)で強度を保ちます。
筋交いとは、柱や梁の間に、X字状やV字状に取り付ける補強部材のことです。
この筋交いがあることにより、水平方向から受ける風や地震の力を建物の揺れで分散させ、住宅の倒壊を防ぎます。
軽量鉄骨では、この筋交いに使用する鉄骨の本数が多く、部材が元々規格化されて決まっているので、レイアウトの仕方に制限が発生します。
これに対して、木造では主に「軸組工法」と「2×4工法(ツーバイフォー工法)」の2種類の建築方法が用いられます。
軸組工法は、柱と梁で家を支える建築方法で、比較的自由なレイアウトが可能です。
2×4工法は、壁と床で家を支える建築方法で、2インチ×4インチに規格化された木材を使用します。
壁が軸となるため、軸組工法よりはレイアウトの自由度は低めです。
軽量鉄骨と木造では「工期や費用」にどのくらい違いが見られる?
次に、それぞれの工期や費用の違いについてお話しします。
まず「工期」に関して、どのような違いがあるのでしょうか。
軽量鉄骨は、規格化された部材を工場で大量生産できるので、工期が短いのが特徴です。
軽量鉄骨のプレハブ工法では、およそ3ヶ月前後の工期が一般的です。
対して木造では、工法の違いによって工期が若干変わってきます。
地元の工務店による木造住宅の場合は4~5ヶ月、大手メーカーの軸組工法では3~4ヶ月、木造プレハブ工法では2.5~3ヶ月といわれています。
続いて、「費用」に関してはどのような違いがあるでしょうか。
全国平均の相場を例に挙げると次のようになります。
●軽量鉄骨の坪単価:約83万円
●木造の坪単価:約59万円
これは、一戸建て住宅を建てるための予算として考えられる坪単価の相場です。
あくまでも参考価格ではありますが、軽量鉄骨と木造とでは、坪単価に24万円ほどの差がみられることが分かります。
もし35坪の家を建てる場合には、840万円ほど差が出ることになります。
建築費の比較では、軽量鉄骨より木造の方がより安く建てられるるということです。
軽量鉄骨と木造の耐用年数とは?年数の違いを比較!
住宅の耐用年数は、国税局が基準を定めています。
軽量鉄骨では、鋼材の「厚み」により耐用年数に違いがあり、厚み3mmを境にそれぞれ次のように耐用年数が定められています。
●軽量鉄骨の厚み3mm以下:19年
●軽量鉄骨の厚み3以上4mm以下:27年
鋼材の厚みの違いは、住宅の見た目からは分からないので、気になる場合はメーカーに問い合わせて調べましょう。
そして、軽量鉄骨に対して、木造の耐用年数は「22年」と定められています。
このことから、軽量鉄骨は木造よりも耐用年数が最大15年長く定められていることが分かります。
ただ、この耐用年数とは減価償却費の算定基準として決められた年数であって、この年数が建物の寿命というわけではありません。
耐久性は、リフォームやリノベーションで十分伸ばすことができます。
住宅の寿命は30年程度といわれていますが、メンテナンスや設備の入れ替えなどでその年数を越えても住み続けることは可能なのです。
リフォームやリノベーションしやすいのは軽量鉄骨?木造?
前項でお話ししたように、家に長く住み続けるためにはリフォームやリノベーションなどの、修繕や改修が必要不可欠です。
それでは、軽量鉄骨や木造の住宅は、簡単にリフォームやリノベーションを行うことができるのでしょうか。
それぞれの構造の違いがどう関係するか見てみましょう。
まず軽量鉄骨は、構造的に壁の中に「筋交い」を施して強度を保っているため、壁にむやみに手を加えることができません。
そのため、リフォームやリノベーションの自由度は低いといえます。
ただ近年では、筋交いの形を工夫することで、ある程度は対応が可能のようです。
この他、軽量鉄骨のプレハブ工法で建てられた住宅は、メーカーが独自の部材を使用し組み立てていることが多いため、メーカー以外の業者によるリフォームは困難とされています。
耐震・耐久性を損ねないためにも、プレハブ工法の建物をリフォームする場合は、建築を手がけたメーカーに相談しましょう。
対して、木造住宅は、基本的に「柱」と「梁」を軸に骨組みをして強度を保っているため、レイアウトの仕方が比較的自由であるのと同じように、リフォームやリノベーションもしやすい性質を持っています。
リフォームやリノベーションのしやすさでは、軽量鉄骨よりも木造の方に軍配が上がることが分かります。
「軽量鉄骨」と「木造」それぞれの安全性や住み心地について
これまで、軽量鉄骨と木造の違いについて様々な面を比較してきましたが、最後に、それぞれの住宅が持つ良さである「安全性」や「住み心地」についてお話ししていきます。
まずは「安全性」について見ていきましょう。
安全性として押さえておきたい項目は、地震に対する「耐震性」と火災に対する「耐火性・耐熱性」です。
軽量鉄骨と木造では、鉄骨の方が木材よりも折れにくいことから、軽量鉄骨の方が耐震性は優れていますが、近年では木造にも高い耐震性が備わっており大差はありません。
また軽量鉄骨でも、部材の接合部の強度が弱いと倒壊の危険性が高まるので、どちらの構造も「接合部の強化」が耐震性には重要です。
耐火性では、軽量鉄骨は木造より劣ります。
「鉄骨」は、熱により曲がってしまう性質や、また540度以上の高温下では急激に強度を無くす性質をもっているため、火災には弱いとされてきました。
また、「木」は、燃え尽きた後も炭の状態である程度強度が保たれ倒壊しにくいため、木造の方が優れているといわれてきました。
しかし近年では、耐火被覆剤を用いた軽量鉄骨が開発され、木材より耐火性の高くなってきているため、大差はありません。
安全性では両者に大差がない事が分かりましたが、「住み心地」ではどのような違いが見られるのでしょうか。
住み心地の良さで押さえておきたい項目は、「通気性」や「断熱性」「防音性」です。
優れた通気性や断熱性を持つのは、木を使う「木造」です。
鉄は熱伝導率しやすいため、冬寒く夏暑い環境になりやすく、また通気性ももちません。
このようなことから、住み心地の面では木造に軍配が上がります。
ちなみに、防音性には大差ないといわれています。
安全性や住み心地でもそれぞれ違いがありますので、住宅の構造を検討する場合はこれらを踏まえて考えてみてくださいね。
軽量鉄骨と木造のどちらの良さを選ぶかは好み次第
軽量鉄骨と木造の違いについてさまざまな面を比較しましたが、近年どちらにも優れた技術によって構造に対策が施されているため、安全性や住み心地には大差がないことが分かります。
ただ、建築費となる価格や、リフォームやリノベーションを行う場合にはそれぞれに違いが見られるため、よく検討する必要があるでしょう。
どちらの構造の住宅を選ぶか、自分の希望に合うのはどちらか、この記事を参考に熟考してくださいね。