建築基準法による採光に有効な開口部とは?店舗には必要?

建築基準法では、明るくて生活しやすい環境になるように、居室には採光(さいこう)のための窓などを設けるよう定めていて、住宅の場合は居室の床面積の1/7以上と決まっています。

この採光に使うことができる開口部とは、どのようなものなのでしょうか。

また、店舗の場合はこうした規定はあるのでしょうか。

採光以外の建築基準法に定められた条件についてもお話しします。

これから店舗を構えようと計画している方は必見です。

採光に有効な開口部の設置が建築基準法で定められている

概要でもお話をしたように、住宅の居室には採光に有効な開口部の設置が建築基準法で定められています。

そもそも、採光が必要となる住宅の居室とは、どんなところなのでしょうか。

居室とは、リビングやダイニング、寝室といった、家の中で常時生活をするところを指します。

常時生活をしない玄関や階段、トイレや浴室などは居室とはみなしません。

続いて、居室に必要と定められている採光に有効な開口部とはどのようなものを指すのでしょうか。

たとえば北側に位置する居室の場合、どのように窓を作っても日当たりが悪くなってしまいますから不安ですよね。

建築基準法でいう採光とは、日当たりの良さを示すものではなく、あくまで採光に有効な開口部であるとしています。

当然ながら日当たりが抜群な住居や部屋だけではないため、日当たりがそれほど良くない窓であっても採光に有効とみなされるわけですね。

実際に、北側の窓でも多かれ少なかれ窓から光が差し込んで室内が明るくなるので、全く窓がないことを想像して比べてみると生活がグンとしやすくなることがわかりますね。

有効採光面積を居室の床面積の1/7以上と定める条件も、いきいきと暮らせるためのものであるということが頷けます。

このように住宅において欠かせない採光ですが、住宅以外の建造物でも建築基準法によって採光に有効な開口部の面積が定められているケースがあります。

その中に店舗は含まれるのか、気になる方もいらっしゃることでしょう。

早速見ていきましょう。

採光が必要な居室

住宅以外にも、建築基準法で採光が必要とされる建造物がありますのでご紹介していきます。

▼寄宿舎・下宿

寝室、宿室に1/7以上の採光に有効な開口部が必要になります。

人が集まる食道や娯楽室には、1/10以上の開口部の設置を行います。

▼児童福祉施設・保護施設・老人福祉施設・有料老人ホームなど

常時生活をする場所は1/7以上の採光に有効な開口部が必要になり、職員室や管理事務所等は1/10以上必要になります。

▼病院・診療所

病室に1/7以上の採光に有効な開口部が必要です。

そのほかの部分については、1/10以上の設置が定められています。

▼幼稚園・小、中学校・高等学校・中等教育学校

教室に必要な開口部は1/5、1/7、1/10以上と分けられます。

床面に対しての水平面明るさやの窓の大きさ、音楽教室や視聴覚教室で換気設備がある場合で条件が変わるようです。

▼保育所

保育室に必要な開口部は1/5、1/7以上に分けられます。

床面に対しての水平面明るさやの窓の大きさによって条件が変わります。

保育室以外は、1/10以上です。

ここまで、居室とみなされる場所には採光のための有効開口部が必要だとお伝えしてきましたが、一部設けなくてもよい居室があるようです。

そこに、店舗が該当します。

店舗や事務所は採光が必要な居室ではない?!

住宅や宿泊施設、病院や学校は採光が必要とされている一方で、店舗や事務所は採光面積を算出する必要はないとしています。

というのも、単純に採光が必要な居室として選定されていない背景があるからです。

居室には採光に有効な開口部の設置が義務づけられていますが、そもそも店舗や事務所は居室として該当していないのです。

店舗や事務所のほかにも、病院の手術室、実験室や作業室なども採光面積の算出が不要となります。

いわれてみると、大きな窓が取り付けられていないような場所ばかりですね。

このような背景から、店舗に採光有効開口部を設置する規定は、建築基準法や消防法にも制限がないといえます。

ただし、快適な環境を得たい場合は、採光を意識した開口部の設置は有効なものとなるのではないでしょうか。

店舗内が明るくなることで、得られるメリットも多々ありますよね。

では、これまで1/7以上の開口部が必要だとお伝えしてきましたが、どのくらいの大きさの窓が必要になるのか次項で詳しくみていきましょう。

店舗でも検討したい!建築基準法を満たす採光に有効な窓の大きさは?

こちらでは、住居における居室を例にお話を進めていきます。

店舗でも採光に有効な窓を取り付けたいと思ったら、検討してみてください。

おさらいになりますが、居室とみなされる場合は、建築基準法を満たす床面積の1/7以上の採光有効開口部が必要でしたね。

ここで例として、6帖の居室だと仮定します。

6帖はおよそ9.72平方メートルですから、窓として必要になる面積は、9.72÷7より1.38平方メートルです。

この部屋に、幅1.6メートルx高さ2メートルの掃き出し窓を設置する場合、開口面積は3.2平方メートルになりますね。

ここで必要面積と実際の開口面積を比較すると、1.38平方メートル<3.2平方メートルとなり、建築基準法に沿った開口面積の確保ができたように思えます。

しかし、実は『窓の開口面積』と『採光有効開口部面積』は異なります。

採光有効開口部面積は、窓の開口面積に対して採光補正係数をかけ合わせて求めるのです。

この時にポイントとなるのは、隣地境界までの距離になります。

隣地までの距離をA、窓の中心から直上の建築物までの垂直距離Bとして、物件の条件ごとに採光補正係数を求めましょう。

その計算式は用途地域により決まり、住宅系はA/B×6.0-1.4、工場系A/B×8.0-1.0、商業系A/B×10-1.0です。

採光の必要がない店舗だが建築基準法に対応した換気設備が必要

建築基準法や消防法にも制限がない店舗や事務所であれば、採光に有効な窓を取り付けなくてもいいと考える方もいらっしゃることでしょう。

採光に有効となる開口部の取り付けをするかしないかは自由ですが、一方で換気経路については話が変わってきます。

そこでここでは、採光有効開口部とともに語られることが多い換気経路についてお話をします。

全ての居室、居室以外の居室、居室に隣接している天井裏等に規制が適用され、店舗も事務所も換気できる環境を整えなければなりません。

ここでいう換気とは、室内に溜まった汚れた空気を、外気にある新鮮な空気を入れ替えることです。

換気ができない環境であると、人々の健康に関わってきますので、とても重要なことになります。

1時間に何回空気を入れ替えるか、どのくらいの空気を入れ替えているかの換気量に注目され、住宅の居室でいえば、換気回数0.5回/h以上の換気量を持つ換気設備の設置が建築基準法で義務づけられました。

では、居室以外の部分の対策はどうしていくのでしょうか。

居室以外の換気回路について

建築基準法では、居室以外の換気経路について次のように義務づけられています。

●居室以外の室

トイレや廊下など、換気経路となる部分は居室の一体としてみなされ、居室と同じ対策を求められます。

なお、換気経路ではない部分に関しては、いずれの対策も必要としていません。

●天井裏・屋根裏・床下など

天井裏は、居室に存在する押し入れやウォークインクロゼットなどの収納スペースと同じ扱いをされ、居室の一体として居室と同じ対策を求められます。

ただし、単体の居室として扱われるわけではなく、隣接した居室と一体として扱われるようです。

こうした天井裏の対策は、居室に対して悪影響を与えないためにあります。

居室との間に気密層又や通気止めがないものは、建材、または換気設備による対策が必要になるのです。

採光に有効な窓等を設ける義務はない店舗や事務所でも、換気経路の対策が必要になることを忘れないでくださいね。

快適に過ごしていくための基準

居室に必要になる採光のための開口部。

過ごしやすい環境にするためにも、人々の健康のためにも欠かせないものです。

また、居室以外に該当する場所でも、換気を行うための経路を確保しなければならないとしています。

こういったことからも、住宅にしても店舗にしても、人が快適に過ごせるための基準であるといえますね。