ビルやマンションなどに窓に赤い三角マークがついているのを、大半の方は見かけたことがあるのではないでしょうか。
しかし、見かけたことはあっても、この赤い三角マークにどのような意味があるのか、深く考えてみたことはないかもしれませんね。
こちらでは、意外な三角マークの意味や、三角マークをつけるルールなどについてお伝えしていきます。
知って損はありませんので今後にお役立てください。
窓の赤い三角マークには実は重要な意味がある!
日常生活の何気ない風景に溶け込んでいる、窓についた赤い三角マークですが、これは火災などの緊急時に役立つ重要な目印となります。
この三角マークは正式には、「消防隊進入口」あるいは「非常用進入口」と呼ばれます。
火災などがあったときに、消火や人命救助のために消防隊が外から入るための入り口となる場所なのです。
そのため、「この三角マークがある窓を蹴破って入ってください」という意味が込められたマークです。
この三角マークのついた窓は、他の窓よりも壊しやすかったり、外側に取っ手がついていたりする場合があるのも特徴です。
一定の条件を満たす建物には、建築基準法によってこの三角マークを貼ることが義務付けられています。
かといって、どこにでも貼れるわけではなく明確な設置条件があるのです。
次項で詳しく見ていきましょう。
赤い三角マークがついている窓には設置条件がある!
赤い三角マークのついた窓である消防隊進入口の設置は、建築基準法で決められています。
〈建築基準法施行令 第126条の6〉
「建築物の高さ31メートル以下の部分にある3階以上の階には、非常用の進入口を設けなければならない。」
つまり、その高さの設置条件の意味は以下のようになります。
・3階以上
・31メートル以下(8階建てくらいの高さ)
なぜ31mといった中途半端な高さなのかというと、消防のはしご車が届く高さの限界がそのくらいの高さまでであるから、とされています。
そのため、3階以上の階層や地上から31mまでの階層には、この三角マークが貼られた窓の設置が必須ということになります。
なお、高さが31mを超えたそれ以上の階層はどうなるかというと、非常用エレベーターの設置が義務づけられています。
そのため、必然的に消防隊進入口は不要となります。
窓の大きさや窓に面した道にも設置条件がある!その意味とは
三角マークをつける窓には、前項で触れた建築基準法によれば、大きさにも設置条件があります。
窓の大きさの条件は以下の通りです。
・高さ120cm以上
・幅75cm以上
・床面から80cm以下
また、窓ガラス自体も壊しやすく、外部から解放できる構造でないとなりません。
つまり、防犯ガラスなどの割りにくい構造のものは採用できず、外から開けられないような窓ではいけないことになります。
他にも、消防隊進入口の間隔は40m以下であることや、幅4m以上の道に面していること、もしくは空き地に面していることなどの条件に当てはまらないと進入口の意味がありません。
また、消防隊進入口には、奥行き1m以上、長さ4m以上のバルコニーを設ける必要があります。
さらに、赤色灯及び赤色反射塗料の三角マークを見えやすい位置に設置しなければなりません。
このように、三角マークのついた消防侵入口を設置するには細かい規定があることが分かります。
緊急の意味が込められた三角マーク自体にも規定がある
赤い三角マークは緊急時に使用する、消防隊進入口であることが分かりましたね。
この赤い三角マーク自体にも、実は規定があります。
その三角マークの規定は、「赤色反射塗料を使用した、一辺が20cmの正三角形でなければならない」とされています。
このようにきっちりとした大きさまで決まっているのは驚きですね。
赤色の反射塗料を使用する意味には、夜間でも外からわかりやすいようにする必要があるためで、大きさが決まっている意味は、統一性を持たせないと混乱を招く恐れがあるからでしょう。
また、この三角マークは外からの見た目と中からの見た目が違うことはご存知でしょうか。
外側からは知っての通り赤色ですが、内側から見ると色は白で、消防隊進入口という記載と、窓の近くに侵入の妨げとなるものを置かないようになどの注意書きがされています。
進入の際に、消防隊の行く手を阻むようでは、消防隊進入口の意味がなくなってしまいます。
緊急時に避難経路となるベランダや進入口付近に物を置いておかないことは、法律で決まっているわけではありませんが、一般常識と言えます。
ビルやマンションで三角マークがついていない例外とは
ここまで赤い三角マークのついた消防隊進入口についてお話ししてきましたが、ご紹介してきた条件に当てはまるのにもかかわらず、赤い三角マークがない建物があるかもしれませんね。
実は、中には赤い三角マークを貼らなくても良い、緩和基準があるためです。
まず考えられるのが、非常用エレベーターが設置してある場合です。
通常地上から31mを超す部分には、非常用エレベーターを設置することになっています。
しかし、何らかの理由によって31m以下でも非常用エレベーターが設置されていれば、消防隊進入口を設けなくても良いとされます。
とはいえ、31m以下の建物で非常用エレベーターを設置することは、コストがかかるためあまり例のないことかもしれません。
次に、進入を防止する必要がある階というものが建物内に存在する場合です。
その意味を分かりやすく言い換えると以下のようになります。
・窓をつけることで周囲に危険を及ぼす可能性がある
放射性物質、有毒ガスなどの有害物質、細菌、病原菌、爆発物を取り扱う建物、変電所など
・窓をつけることでその使用目的を実現できない
冷蔵倉庫、留置所や拘置所その他人を拘禁する目的がある所、美術品収蔵庫、金庫室、無響室、電磁遮蔽室、無菌室など
このように、場合によって消防隊進入口は設置しなくても良い例があることが分かります。
三角マークのついた消防隊進入口を設置しなくて良い例外はまだある!
もう1つ、消防隊進入口を設置する代わりに、「代替え進入口」というものを設置すれば、前項の例と同様に窓に三角マークをつけなくても良い緩和基準の対象となります。
では、代替え進入口とはどういうものなのか詳しく見ていきましょう。
先述の「建築基準法施行令第126条の6」には続きがあり、そこで代替え進入口について記載されています。
この記載の意味を分かりやすく言い換えると、
・代替え進入口を該当の壁面の長さ10m以内ごとに設置している
・ガラスの構造や大きさなどは消防隊進入口の窓と同じ規定
・代替え進入口を設置する道の条件も消防隊進入口と同じ規定
・バルコニー、赤色灯、赤色反射塗料を使った三角マークの表示は不要
となります。
例えば、建築物によってバルコニーの設置が難しい場合には、この代替え進入口を設置することが有効な方法と言えます。
そのため、緩和条件のなかでは、設置間隔は狭くなるものの、この代替え進入口を設ける方法が一番現実的でよく使われている緩和条件なのかもしれませんね。
窓についた赤い三角マークには大切な意味があった!
窓についた三角マークの意味は「消防隊進入口」ということが分かりましたね。
この三角マークのついた消防隊進入口の設置には、想像以上に細かい決まりがあります。
緊急時には非常に重要な窓となるので、その周辺は常に進入しやすい環境でなければなりません。
もしも身近に三角マークのついた窓があったら、そこには進入の邪魔になる物を置かないようにしましょう。