家賃は前払い?後払い?自分で決めることはできるのか

現在借りているお部屋の家賃、前払いか後払い、迷ったことはありませんか?

『契約期間の家賃を支払うんだから、別に得も損もないんじゃない?』

実は、注意しておかないとトラブルや損をしてしまう可能性があるのです。

家賃は前払いか?後払いか?それは契約次第

家賃の振り込みをしながら、ふと疑問に思うことはないでしょうか。

『これって、今月分の家賃だったかな、それとも来月分かな…』

家賃の支払いについて、民法では条文で規定があります。

第614条(賃料の支払い時期)

『賃料は、動産、建物および宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。

ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。』

これだけを見ると、家賃は後払いだと思いますね。

国土交通省の標準賃貸借契約書ひな形では、当月分、翌月分と選択できるようになっています。

民法の規定は、任意規定といい契約当事者同士で自由に変えることができます。

現在、賃貸借契約の多くは家賃は前払いで規定されています。

理由としては、確実な収入の見込み、損害の担保、借主への利用権を確保する、などが挙げられるでしょう。

家賃前払いを自分で後払いにする

現在では、大手の賃貸住宅建設会社が口火を切り、初期費用や家賃をクレジットカード払い可能としたことで、まとまった金額が手元になくても契約できる物件も出てきました。

その後、カード払い可能な物件は増加の傾向があります。

貸主としても、カード払いにすることで、手数料は支払わなければならないが、契約者数を増やすメリットがあるようです。

カード払いは、貸主への支払いは前払いなのですが、実際の引き落としは翌月か、その翌月になるので、実質後払い、ということになります。

利用できるメリットとして、初期費用が今すぐ用意できなくても契約できること、まとまった金額なのでポイントやマイルなどをためることができることでしょうか。

支払い方法も、分割やリボ払いにすることで、家計をやりくりすることも可能です。

有名な賃貸物件検索サイトでは「カード払い」で検索することもでき、多くではありませんがある程度の物件数がヒットします。

口座への残高や引き落とし日など、管理を怠らなければ、便利だともいえるのではないでしょうか。

家賃の前払いを後払いだという勘違いに注意

家賃の振り込みや引き落としに関して、意外にありがちな勘違いがあります。

また、振り込みときに銀行などの取扱時間を過ぎてしまった、祝日を挟んでしまうことで期日を過ぎてしまう、と大慌てで管理会社へ連絡される方もいらっしゃいます。

振り込んだ日が期日であれば、滞納にも遅延にもならず、何も問題はありません。

しかし、少し注意しておきたいのが次のパターンです。

たとえば、家賃の前払いを後払いと勘違いしてしまうことです。

通常契約時に、入居日から締め日までの日割り家賃と、翌月分を振込みまたは払込みをします。

翌月末にはその次の月の家賃を支払わなければなりませんが、忘れる方がいらっしゃいます。

いきなり家賃滞納として、管理会社もしくは貸主から連絡が来る、なんてことになりかねません。

管理会社や不動産会社の説明不足、という点もあるかもしれませんが、契約時点でよく確認しておく必要があるかと思われます。

ちなみに、家賃の遅延損害賠償金は、支払日の翌日から発生されます。

遅延損害賠償金は、個人の賃貸借では、消費者契約法により、年14.6%まで、法定利率が適用の場合は、年5%の割合で家賃に加算されます。

貸主が法人(会社)の場合は、商事法定利率が適用され、年6%が家賃に加算されます。

すべての貸主がこのような請求をするのではありませんが、支払いは借主の義務ですので、十分遅滞のないよう、注意をしておく必要があります。

家賃の前払いと後払い!契約上日割り計算はできる?

家賃の前払いの支払いでトラブルが起こる可能があるのが、退去時です。

後払いであれば発生しない問題が生じる可能性があります。

「1ヶ月に満たない期間の賃料は、1ヶ月を30日として日割り計算した額とする」

これは標準賃貸借契約書のひな型から抜粋したものですが、契約の中には、「日割り計算をしない」とした特約も見受けられます。

この場合、前述したように、契約書どおりが原則なので、退居日にかかわらず、1ヶ月分の家賃が発生します。

都合上、月初に退去、となった場合でもその月分の家賃が発生します。

契約時にわかっていれば、交渉も可能かもしれませんが、なかなか気が付きにくい項目でもあります。

もしこの規定が契約書にない場合、標準賃貸借契約書を根拠にして、日割りで計算してもらうことを申し出てよいと思われます。

退去の際に余計な出費をしないためにも、まずは、契約書を確認しましょう。

退去時の家賃は後払いでいいのか?

契約によっては、2ヶ月、3ヶ月前まで、というものもありますが、通常、退去日の30日前までに、管理会社もしくは貸主へ解約申し入れをします。

契約書にある期間前までに行わないと、翌月分の家賃も支払わなくてはなりません。

たとえば、契約で決まっている解約申し入れ期間を守らずに解約を申し入れ、退居日以降の家賃を返却、というわけにはいかないでしょう。

また、管理会社や貸主によっては、翌月途中の退去の際、締め日や週に分けて家賃の発生を決めているところもあります。

これには、空室期間(家賃が発生しない期間)を極力短くしたい貸主の意図があるのですが、契約書に退去に関して特に記載されていた場合、契約書が優先します。

契約書に書かれていない場合、入居時に日割りで計算されていれば、退去時も同様で良いと思われます。

この際、翌月途中で退去の場合、家賃は退去時に支払う、いわゆる後払いが一般的です。

退去の際は、必ず契約書の解約通知期間を守ること、特約事項がない限り、退去の際は後払いでよいということを確認しておきましょう。

家賃をどうしても後払いにしたい方へ

家賃の前払いはなんだか納得できない、初期費用を極力おさえたい、という方もいらっしゃるでしょう。

現在では、保証金なしや更新料なしの物件を見かけることがあります。

TVCMでも宣伝されている、UR賃貸が代表的な例ではないでしょうか。

UR賃貸とは、都市基盤整備公団と地域振興整備公団の地方都市開発整備部門がひとつになった独立行政法人です。

都市再生を目的とした賃貸供給支援事業を行っています。

元公団ということで、団地のイメージがありますが、現在ではさまざまなタイプの賃貸物件が全国に約74万個あります。

UR賃貸は礼金、保証金、更新料、仲介手数料がなく、家賃は後払い。

2世帯、単身や子育て世帯の割引、フリーレント(初月~翌月家賃無料)、定期借家タイプなどがあり、通常の賃貸借と比較しても安くなる場合があります。

入居資格があり、必ずしも希望する土地に賃貸できるとはかぎりませんが、初期費用をおさえたい方は、このような形態の物件を検討してみるのもよいかもしれません。

家賃の前払いと後払いについて注意点と変更手段

・法律上は後払いだが、契約書が優先する
・一般的には先払い
・入居日は日割り計算前払い、退去時は日割り計算後払い(特約ない場合に限る)

・クレジットカード払いができる物件を選択する
・UR賃貸など後払い物件を選択する