不動産を扱うときによく見かける言葉に「床面積」というものがあります。
この床面積は、「不動産登記法」と「建築基準法」で捉え方に違いがあるということをご存知でしょうか。
この記事では、床面積の測り方から、小数点以下の計算方法、床面積に含まれない部分など、床面積について2つの法律を比較しながらご紹介していきます。
床面積の計算にかかわる2つの法律~不動産登記法~
床面積の計算方法についてお話しするためには、床面積に密接にかかわる2つの法律についてお話ししなければなりません。
その法律は「不動産登記法」と「建築基準法」と言われるものです。
この2つの法律によって床面積の計算は変わり、ひいては小数点以下の扱い方も違うものとなります。
まず、不動産登記法についてお話ししましょう。
不動産登記とは、不動産に関する詳しい情報を登記簿に記すことです。
登記簿でだれもが不動産の情報を確認できる状態にすることで、不動産取引でのトラブルを少なくすることができます。
不動産登記では、さまざまな情報を提出し登録することになりますが、その中に床面積の情報も含まれます。
床面積しだいでは、支払う税金の額にも影響が出てくるので、細かい部分まで計算することが大切です。
床面積の計算にかかわる2つの法律~建築基準法~
次に、建築基準法について詳しくお話ししていきます。
建築基準法とは、人が安心・安全に暮らせるように、その土地や建物に制限を加える法律のことです。
どのような土地にどのような建物を建てるのか、その建物は安全性において不安点はないかなど、細かな部分まで精査されます。
建築基準法における制限は、床面積にも影響を与えます。
日本の土地には、それぞれ容積率が割り振られています。
容積率とは、一つの敷地に対する建物の延べ床面積の割合のことを指します。
もし、2階建ての家であれば、1階と2階の床面積を足したものが延べ床面積となります。
敷地に対して床面積を割り振ることで、その場所に適さない建物を建てられないようにしているのです。
とはいえ、できれば床面積を広くとり、十分な居住スペースを確保したいところです。
そのため、小数点以下という小さな値でも、しっかりと計算する必要があるでしょう。
小数点以下もしっかりと計測!床面積の2つの測り方とは?
不動産登記法と建築基準法という、2つの法律についてお話ししました。
どちらの法律でも床面積の正式な値が必要です。
しかし、2つの法律によって床面積の測り方も変わるので注意しなければなりません。
不動産登記法では、内法(うちのり)面積で床面積を測ります。
内法面積とは、内壁より内側の部分の面積のことです。
建物の建築が完成したのちに、実数を計測されることになります。
一方、建築基準法では、壁芯(へきしん)面積で床面積を測ります。
壁芯面積とは、壁の中心線から内側の部分の面積のことです。
実際に壁の中心線を測ることはできないので、図面から詳しい数字を計算します。
この2つの測り方の違いによって、床面積の値も変わってきます。
また、それだけではなく、小数点以下の値の扱い方も変わってくるので、注意が必要です。
不動産登記法と建築基準法では小数点の計算も違う!?
2つの法律において、床面積の値がとても重要だということは、ここまでのお話で少しはお分かりいただけたと思います。
不動産登記法では、住宅ローンや贈与税、固定資産税などの減税措置を利用するときに、床面積の値が必要になります。
これらは、私たちの資産に直接大きな影響を与えることになるので、正しい値をしっかりと算出しておかなければなりません。
建築基準法においては、建てられる家の広さや大きさにかかわってきます。
もしマイホームを建てる方であれば、理想となる家の間取りや過ごし方を思い描いていることもあるでしょう。
しかし、あと少し床面積が足りないばかりに、その理想をあきらめなければならない事態も起きるかもしれません。
不動産では少しの値の違いが、私たちに大きな影響を与えます。
そのため、小数点以下の数値だとしても、きちんとした決まりの中で計算する必要があるのです。
それぞれの法律による小数点以下の計算方法は以下の通りです。
〇不動産登記法:小数点第3位を切り捨て
〇建築基準法:小数点第3位を切り上げ
これらの決まりのもと、小数点第2位までの数値をしっかりと求めておきましょう。
小数点の違いだけじゃない!不動産登記法での床面積に含まれない部分とは?
床面積は、小数点以下の値までしっかりと計算することが大切です。
しかし、その値を計算するにあたり、建物内には床面積に含まれない部分があることも知っておかなければなりません。
これについても、2つの法律によって少し考え方が違います。
不動産登記法では、外気分断性の考え方が取り入れられます。
壁などにより外気が遮られていない部分は、床面積に含まれないという意味合いです。
たとえば、ベランダです。
ベランダは3方が開けた空間になっており、外気分断性がないと判断されます。
そのため、不動産登記上ではベランダが床面積に含まれることはありません。
他にも、バルコニーや屋根と柱だけでつくられたカーポートなど、外気が分断されない部分は床面積には含まれません。
ここまでが、不動産登記法で考える床面積に含まれない部分です。
それでは、建築基準法との違いはどのようなものがあるのでしょうか。
次項でお話しします。
建築基準法における床面積に含まれない部分
建築基準法でも、床面積として計算されない部分があり、前項の不動産登記法の考え方とは少し違いがあります。
建築基準法ではそれぞれの部分に細かな決まりごとがあるので、代表的なものをいくつかご紹介していきます。
〇ベランダ・バルコニー
外壁から2メートル以内の幅で収まっている場合は、床面積に含まれません。
もし、ベランダやバルコニーがそれ以上の幅であれば、2メートルを超えた部分だけ床面積に含まれることになります。
〇ロフト
ロフトを収納として利用している場合も、床面積から除外されることがあります。
ただし、ロフトがその階全体の半分以下の面積で、天井までの高さが1.5メートル未満、それに加えてはしごを固定していないときに限ります。
基本的には、長時間にわたって人が生活を送るような場所でなければ、床面積に含まれないことが多いようです。
補足ですが、不動産登記法でも天井までの高さが1.5メートルに満たないロフトであれば、床面積から除外されます。
〇車庫
建物内につくられるビルトインガレージの場合は、延べ床面積の5分の1以内であれば、床面積に含まれません。
もし、延べ床面積の5分の1を超える場合は、その分だけ床面積に含まれることになります。
壁などに囲まれていないカーポートであれば、一定の条件のもと緩和措置を受けられることがあります。
その条件は、1階建てで天井の高さが2.1メートルを超え、外壁がない部分が4メートル以上続き、柱が2メートルの間隔を空けて設置されている場合です。
この条件に当てはまっているのであれば、カーポートの端から1メートルの範囲が床面積の緩和を受けられます。
このように、細かな決まりがたくさんありますが、小数点までしっかりと計算して、できるだけ十分な床面積を確保しましょう。
2つの法律の違いによる床面積を理解しよう!
法律の違いによって、床面積についても違いがあることが分かりましたね。
床面積は建物の内装や外観だけでなく、税制上にもかかわる事柄ですので、小数点以下までしっかりと計算を行いましょう。
また、場所によっては、床面積の緩和措置を受けられるケースもありますので、事前に入念な調査を行っておくことをおすすめします。