賃貸アパートは世帯主=契約者なのか?住宅手当申請のために

アパートの賃貸契約をする際、通常は年収が一番高いであろう世帯主が契約者となります。

しかし、住宅手当の都合で世帯主以外の世帯構成員、たとえば夫婦のうち妻などを契約者としたい場合、契約上は可能なのでしょうか。

また、世帯主を夫から妻に変更することはできないのでしょうか。

アパートの賃貸契約者は世帯主でなければならないの?

夫婦で不動産屋さんにアパートを探しに行って、いざ契約という場合、通常は夫が契約者として書類を記入したり、審査を受けたりしますね。

こちらから何も言わなくても、不動産屋さんも当然のように夫に契約を促してきます。

一般的には、女性より男性の方が年収が高く、妻を扶養している場合もあるため、それが普通なのでしょう。

ただ、中には夫が失業中であったり、妻がキャリアウーマンで夫より高い収入を得ている場合もあります。

そして昨今は、そのようなパターンも珍しくはないと言えます。

夫が失業中では、夫の名義で契約することはできないですし、妻の収入が高ければ、審査は夫より妻の方が通りやすいでしょう。

このような場合は、必然的に、妻を契約者としたいわけですが、いわゆる「世帯主」はいまだ夫のままであるとします。

この場合、賃貸契約者は世帯主ではなく、世帯主の配偶者になりますが、このような契約は可能なのでしょうか。

実は世帯主でなくてもアパートの契約者になれる

結論から言えば、妻が契約者となる契約は可能です。

賃貸契約では世帯主かどうかが問題ではなく、家賃の支払い能力があるかどうかが問われるからです。

つまり、妻が審査に通ればアパートの賃貸契約をすることができます。

そして契約者は妻、夫はその同居人ということになります。

では、そもそも世帯主とは、何なのでしょうか。

世帯主が関わってくるのは、住民登録の際ですね。

新しく住所を定めた際に、役所に異動届などを提出しますが、その際に、世帯主、同居する世帯構成員とその続柄などを届け出ます。

一般的には夫が世帯主となり、妻は配偶者、親族として子や親などが世帯構成員となります。

厚生労働省では、「世帯」とは住居および生計を共にする者の集まりをいう、としています。

そして「世帯主」とは、年齢や所得にかかわらず、世帯の中心となって物事をとりはかるもので、世帯側から申告された人をいう、と規定されています。

つまり、同一世帯であれば、世帯主は自由に決めてよいということになります。

社会通念上の、世帯の生計を維持する者というニュアンスとは少し違いますね。

先の例のように、夫の収入が妻より少ない場合では、妻が世帯主であってもよいですし、所得は関係なく夫が世帯主であってもよいのです。

ただ、誰が世帯主かについては、世帯側が申告することで決まるということです。

そもそも世帯主とはどのようなものか

では、この住民登録上の世帯主とはどのような役割があるのでしょうか。

まず、世帯ごとに世帯主を決めるのは、住民基本台帳が世帯ごとに編成されているため、世帯主名で検索するようになっているためです。

「この世帯の代表者はこの人」という世帯主の名前がわかって初めて、その世帯構成員がわかるということです。

また、国民健康保険などは、世帯主が社会保険加入者であっても、すべての世帯構成員の加入通知などは世帯主宛に送られます。

選挙の際に届く投票券などもそうですね。

つまり、役所などから世帯構成員への連絡が、世帯主宛にまとめて送られてくることで、連絡網の合理化ができるという利点があるからです。

もうひとつは、世帯主という基準を決めることで、世帯構成員間の続柄がわかりやすくなるということもあります。

住民登録上はこのような利便性があるため、世帯主を届け出ているというわけです。

一方、アパートの賃貸契約では、無職の世帯主の夫よりも、収入のある世帯構成員である妻のほうが、信用があると判断されます。

世帯主の夫が無職の場合は、契約者だけでなく、保証人にすらなれません。

慣習的なもので、夫が世帯主で、世帯主が契約者になると考えがちですが、契約者が世帯主でなくても、まったく問題はないのです。

世帯主やアパートの契約者が問題となるのは会社の住宅手当

では、アパートの賃貸契約の契約者と世帯主に関することで、何か問題になることはあるのでしょうか。

実は、お悩み相談サイトでみなさんがよく相談されていることがひとつあります。

それは、勤め先の会社の住宅手当のことです。

たとえば、夫の会社では住宅手当が出ないけれど、妻の会社では住宅手当が出るという場合がありますね。

そして、その支給条件が「世帯主に対して支給する」「賃貸居住の場合、賃貸契約の名義者本人に支給する」などという場合です。

この場合、住宅手当を受けたい場合は、妻を世帯主としなければなりません。

賃貸の契約時には、妻の名義で契約しなければなりませんし、もし現状の名義が夫なら、夫の名義から妻の名義に変更しなければなりません。

世帯主の変更は、いたって簡単です。

役所に行って、書類を書いて提出するだけで済みます。

変更した後で住民票などを取得すれば、会社に提出する証明書類に使用できますね。

では、賃貸の契約者を夫から妻に名義変更する際はどうしたらよいのでしょう。

世帯主やアパートの契約者の名義変更は可能だが…

賃貸の契約者を夫から妻に名義変更したい場合には、まず、管理会社や大家さんに問い合わせてみましょう。

大家さんと直接契約をしているこじんまりしたアパートなどでは、訳を話せば書類の書き換えなどだけで済む場合もあります。

しかし、管理会社を挟んでいる場合や管理会社の自社物件の場合などは、契約書を作り直したりするため、事務手数料などが発生する場合もあります。

また、新名義人の保証能力の再審査などをする場合、家賃の1ヶ月分などの手数料を取る業者もあります。

安くても事務手数料で1万円程度、高い場合は家賃1ヶ月程度の費用がかかると思っておいてください。

アパートの契約者の変更には、このような手続きが必要となりますが、高い費用もかかるし面倒ですね。

そのため、これをしたら必ずそれ以上のメリットがある、つまり会社からそれなりの金額の住宅手当が出ることを確認しておかなければなりません。

実は会社によっては、住宅手当の支給について、単に名義の上だけでなく、細かな条件を規定している場合があるからです。

たとえば「生計を主に維持している世帯主に限る」、「生計を一にする夫の収入が妻の2/3以下である場合のみ、妻である社員に支給する」などです。

中には、女性というだけで「前例がない」などと言われる可能性もありますので、見切り発車は危険です。

まずは、会社の給与規定などをしっかり確認し、担当者にも確認するなどしてから、手続きするべきでしょう。

本来は妻でも世帯主なら住宅手当はもらえるはず

これまで述べたように、アパートの賃貸契約では、世帯主でない妻などでもまったく問題なく契約者になれます。

それは、世帯主というのが収入や年齢に関係ない、ただの世帯の代表者であるからです。

収入さえあって、審査に通れば、賃貸契約では世帯主かどうかは関係がないわけですね。

ところが会社などでは、いまだ夫が世帯主であることが当たり前で、住宅手当は男性の世帯主に支給するという風潮があります。

世帯主という規定の縛りは、一応一家に一人という意味で、住宅手当の二重取りを避けるためかもしれません。

しかし、昨今は妻より夫の方が収入が多く、妻は夫の補助的に家計を助けているのが普通であるという時代でもありません。

女性の社会進出も進み、夫の失業や転職などで家計の逆転が起きている家庭も少なくありません。

また、共働きの場合は、いつどのようなタイミングで収入が逆転するかもわかりませんね。

そうであるならば、男性、女性を問わず、収入の多い少ないも問わず、世帯主には住宅手当を支給するのが妥当でしょう。

もし夫の会社で住宅手当が出ておらず、二重取りでないのならば、妻が世帯主になって手当をもらってもよいはずです。

その根拠は、住宅手当の出る会社では、夫には妻の収入を問わず、何の問題もなく住宅手当が支給されるからです。

やはり、そのあたりの男女差は解消されるべきでしょう。

たとえダメもとでも、世帯主である妻が住宅手当を申請するのはあり!

アパートの賃貸契約と世帯主の関係について見ていくことで、それに付随する問題が浮かび上がってきました。

実際、たくさんの働く女性が住宅手当の申請と世帯主、賃貸契約者の関係で相談を寄せています。

ただ、住宅手当は会社独自の福利厚生の規定であるため、賃貸契約のようにすんなりといかないことも多いようです。

しかし、世帯主として手当を申請することは間違いではないので、臆せず是非チャレンジしてみてください。