知人や身内の賃貸契約の連帯保証人になっている人は、たくさんいると思います。
万が一、契約者が家賃滞納をし続けた場合、連帯保証人であるあなたに請求がくることになります。
信頼を裏切られただけでなく、借金までかかえなければならない事態は、非常に残念なことです。
そうした、連帯保証人の保証債務には時効はないのでしょうか。
家賃滞納、そのとき連帯保証人はどうなるか
連帯保証人というと、あまりよい響きではありませんね。
一般的には、進んでなりたいものではありません。
しかし、たとえば身内や友人に頼まれた場合、引き受けざるを得ない場合もあります。
よくあるのが、身内がらみの賃貸契約や奨学金の借入などの際の連帯保証人です。
そして、よく問題になるのも、このようなケースでもあるのです。
もし、のっぴきならない事情で、身内や友人が家賃を滞納した場合、本人に支払いができなければ、連帯保証人であるあなたに請求が来ます。
そして、連帯保証人は、債務者の債務を保証する立場ですから、この請求を無視することはできません。
最悪の場合、代わりに債務を返済する羽目になってしまうのです。
たとえ身内といえども、気軽に連帯保証人になることは考えなければなりませんね。
ところで、家賃滞納や連帯保証人の保証債務には時効があるのでしょうか。
家賃滞納に時効はあるのか
実は家賃滞納などがあった場合、その時効は5年と定められています。
一般的な債務の時効は10年ですが、家賃など月額が決まっている定期的な債務については、5年とされています。
もう少し詳細に説明すると、月ごとに債務が発生するため、その時効も各月について遅延発生から5年となります。
たとえば家賃滞納が2年間に及ぶと、滞納の最初の月の分の時効は発生から5年後に、最後の月の時効は最初の滞納月からすると7年後に時効になるのです。
一方、大家さんの立場からすると、家賃は収入源であり、もしかしたらそれが生活の糧かもしれません。
いずれにしろ、このまま放置はできませんね。
そこで、家賃滞納があった場合、まず契約者本人に督促します。
それでも回収ができない場合、連帯保証人に督促するか、強制退去を含めた滞納分の家賃の請求を裁判所に持ち込みます。
そして最近は、家賃の滞納から裁判になるまでの期間が短くなっています。
それは大家さんの方も、滞納に対する責任が問われることがあるからです。
実際に、家賃滞納を長期間放置した場合、家賃回収に関する職務怠慢と判断され、連帯保証人などに請求できなくなる判例が過去にありました。
また、訴訟を起こすことで、家賃の時効が中断できるということ理由のひとつかもしれません。
家賃滞納の時効は中断することもある
そう、実は家賃滞納の時効は中断できます。
先に家賃の時効は月ごとで、滞納の発生から5年とのべました。
しかし、それでは債務者が5年逃げれば逃げ得ということになりかねません。
そこで、大家さんの方は、訴訟を起こすことで、時効を中断することができるのです。
また、債務者が一部弁済するなどして、債務の承認をすることでも時効は中断します。
そして、時効の中断とは、途中で止まるわけではなく、最初からやり直しになることをいいます。
さらに、訴訟で支払い命令が下ると、その時効は10年に延長になるのです。
しかも、判決である支払い命令の金額は、単に滞納分の家賃だけにとどまりません。
裁判にかかる費用、強制退去にかかる費用なども上乗せされ、そのうえで時効が10年になるのです。
このような理由から、大家さんとしては、手間がかかろうとも訴訟にした方が、家賃の回収には都合がよいといえます。
そもそも、大家さんは被害者ですから、当たり前の措置といえますね。
債務者は、債務から逃れることを考えるよりも、債務を支払う方法を考えなければなりません。
では、連帯保証人はどうしたらよいのでしょう。
家賃滞納した場合、連帯保証人の保証債務の時効はあるのか
家賃滞納は刑法に触れる犯罪ではありませんが、賃貸契約にのっとって家賃を支払うべきは債務者本人です。
連帯保証人でも、もちろん大家さんでもありません。
では、よかれと思って連帯保証人になってくれた人の立場はどうなるのでしょう。
連帯保証人には、滞納された家賃が債務保証というかたちで、のしかかってきます。
支払えなければ、もっと大ごとです。
もし、大家さんが訴訟を起こし、裁判費用や強制退去費用を含めた支払い命令が下った場合、債務者が逃げてしまったらどうなるのでしょう。
債務も裁判費用や退去費用も、そして10年の時効もすべて連帯保証人の肩にのしかかってくるのです。
では、連帯保証人には保証債務の時効はないのでしょうか。
実はあります。
保証債務の時効は、主債務の時効に付随するものなので、主債務の時効に準じます。
つまりは、当初は主債務の時効の5年が保証債務の時効となります。
ただ債務者が訴えられ、支払い命令を受けた場合、その債務者の家賃滞納の時効はのびていきます。
連帯保証人の保証債務の時効は、債務者が訴えられて時効が中断すると、一緒に中断してしまうのです。
逆に、保証人が保証債務の承諾をした場合など、保証債務の時効だけがいったん中断し、主債務の時効は中断しません。
これは、主債務は保証債務に従属していないからです。
これでは、連帯保証人に逃げ道がありませんね。
家賃滞納、連帯保証人の時効に関する救済措置
実は、ひとつだけ保証人の救済措置があります。
家賃滞納からすでに5年を経過している場合にのみ、その後主債務の承認があったときは、保証債務の時効は中断しないのです。
たとえば、家賃滞納の半年後に、大家さんが訴訟を起こし、支払い命令が下ったとします。
判決がでてから10年が、この債務と連帯保証人の保証債務の時効になりますね。
ところが、家賃滞納をした本人が支払えない状態で逃げてしまったため、連帯保証人が話し合いの末、少額ながら返済をし続けていました。
5年が過ぎたころ、突然現れた債務者が判決の債務の承認をしたとします。
すると、時効の10年を目指して、連帯保証人のつとめを5年間も果たしてきたものが、また時効の中断で10年に戻ってしまうのです。
これでいったん現れた債務者が、再度逃げてしまったとしたら…、もうなす術がありません。
そこで、救済措置として、このような場合のみ、連帯保証人の時効の中断はなしという制度になっています。
救済措置といっても、ないよりはましという程度の措置でしかありませんね。
結局、連帯保証人は、債務が終了するまではなんらかの責務を負わなければならないと覚悟する方がよいのかもしれません。
残念ながら連帯保証人になるメリットはなにひとつない
人間がひとり生きていくのにも、そこそこお金がかかります。
一生懸命働いて、なんとか家族を養い生活している人間に、突然降りかかってくる家賃滞納の保証債務は、怖いとしかいいようがありません。
悪くすると判決の時効である10年以上もの長い間、その保証債務に苦しめられる人生になるかもしれないのです。
もともと、身内や友人など、近しい人だからこそ助けたいとの善意で連帯保証人になるわけですから、そのショックの大きさも想像に難くありません。
それなのに、連帯保証人には、基本的に債務者と同等の義務が課せられるわけで、考えてみるとよいことなど一つもありません。
それでも、世の中には連帯保証人を必要とする契約にあふれています。
賃貸契約などは、ひと月分ならそれほどでもありませんが、1年2年と家賃滞納した場合、思いのほか大きな金額になるものです。
連帯保証人になる際には、家族とも十分相談して考える必要がありますし、万が一の場合を考えておく必要があります。
その危険性を冒してでも、支えてあげようと思える人のためにしか、連帯保証人の契約を結ぶべきではありませんね。
ときにはNOといえる強さを持つことも必要である
家賃滞納の場合の連帯保証人の債務とその時効についてのべてきました。
ある意味、債務者本人より責任がのしかかる厳しい立場といえます。
その怖さと理不尽さを味わってからでは遅いのです。
みなさんも、安易に連帯保証人になることのないように、NOといえる強さを持ちたいものですね。