地震が起きると、さまざまな被害が発生します。
アパートにも大きな力がかかり、外壁や基礎にヒビが入ることも出てくるでしょう。
自然の力である以上、地震が起きたことはだれの責任でもないのは確かです。
しかし、そのままにしておくこともできませんし、補修にも費用がかかることから、どんな対処をしていくべきか考えてみましょう。
アパートで地震が起きてヒビが入ったら責任はどこに
アパートに住んでいるときに、多くの被害が発生するような大きな地震に遭う可能性があります。
日本は地震国と呼ばれますが、どこに住んでいても地震に遭う可能性がゼロであることはありません。
それほど地震が起きるのですが、将来的に見ても巨大地震に遭遇しないとは、観測している人を含めてだれも断言できないでしょう。
日本に住んでいる限り、規模はいろいろあるとしても地震が起きると考えるのが自然です。
アパートも地震が起きれば、外壁などにヒビが入ることもあります。
地震による被害は、アパートを借りる側は容易に想定できないでしょう。
貸主としてもいつどの規模の地震が起きるかは予測できないため、被害が出ても責任はどちらにもありません。
それでも地震が起きれば、多かれ少なかれ被害が発生する可能性があり、アパートも補修しなければいけない可能性が出てくるでしょう。
こうした地震によって起きた被害は、修繕費用は貸主の負担になると民法606条の修繕義務に定められています。
通常使用できるように修復する義務も民法601条に定められていることから、どちらも地震で被害者になるかもしれませんが、貸主に修繕義務が発生するといえます。
住み続けるためには、問題になるようなヒビが発生してしまったときには、あとでもめないように借主は速やかに貸主に被害を報告しなければいけません。
地震が原因であったことも立証する必要があるからです。
アパートに入ったヒビは拡大する可能性がある
地震でアパートの外壁にヒビが入った場合、そのまま放置しておくことは危険な行為です。
アパートの外壁は構造的に丈夫に作られていますが、健全な状態でも時間とともに劣化するのは避けられません。
地震で入ったヒビを放置しておくと、その時のダメージだけではなく、時間とともに間隔が広がり拡大していく可能性が出てきます。
ヒビが広がるのは、地震の後に振動に耐えられないことが原因としてあげられます。
周辺の道路や鉄道から受ける振動に対して地震が起きる前には問題がなくても、力がかかってヒビが入り強度が落ちてくれば、外的な力に耐えられなくなります。
そして、入ったヒビが大きく広がる可能性が高まるのです。
外装塗装もダメージを受け、紫外線などから躯体を守る力も弱まるため、早めに補修して全体の劣化を食い止めることが必要です。
補修しないで放置しておくと、やがて修復ができなくなるような事態になるかもしれません。
地震で入る可能性があるヒビの種類と補修
アパートにヒビが見られるときには、どんな状況なのかをはっきりとさせなければいけません。
ヒビの程度により、補修方法も変わるからです。
髪の毛のように細いヘアクラックで深さの浅いものなら、問題として大きくはありません。
問題は、深く入ってしまう構造クラックの場合です。
地震によってアパートの構造にねじれやゆがみを生じさせ、耐久度を超えた力がかかった可能性が出てくるので、安全性にもかかわる問題になります。
構造クラックのように、ヒビを通り越し大きく割れてしまうようなことがあるのも、地震の力の大きさゆえです。
構造クラックにまでになると、できるだけ早い段階での補修が必要です。
ひび割れた状態によっては、これから先は住むことが難しい場合も出てきます。
しかし、耐震スリットに入ったヒビなら、問題は大きくありません。
アパートの構造に大きな力がかかったとき、力を逃がすのが耐震スリットの役割だからです。
ヒビの程度でも今後も済み続けられるかどうかに差が出るのですから、地震のあとにはアパート全体を確認するべきです。
ヒビが入ったときに放置してはいけない理由
アパートにヒビが入ったことを放置できないのには理由があります。
小さく短いヒビで、壁や基礎の表面に入ったのなら、大きな問題にはなりません。
しかし、構造クラックのように、奥深く入ったヒビとなれば、躯体の内部へ水気が侵入することが予想できます。
雨や湿気が侵入すると、鉄筋を使う外壁材は水気で錆びて、体積膨張を起こします。
体積膨張の力は強く、外壁材を内部から押し出していくため、さらなるヒビの誘発につながるのです。
最悪のケースとして、錆びた部分が耐えられなくなり、外壁材にコンクリートが使われていても、内部から爆裂するケースもあります。
構造的に強度を保てない状況となるため、簡単に補修できないことも出てくるのです。
また、強度を失うことにもつながり、地震のダメージとともに思わぬ事故になる可能性も出てきます。
素人では判断できない状況のため、専門の業者に依頼してダメージを検査することが必要です。
検査結果を見てから、補修を考えてみると適切な方法が見えてきます。
複数の業者に検査依頼して、結果を比較すると必要な内容も見えてくるでしょう。
地震保険はアパートに入ったヒビに使えるのか
地震でアパートが構造的な問題を抱えたとき、保険が使える可能性も出てきます。
一般的に自然災害には火災保険を使いますが、地震保険を特約でかけていれば利用可能です。
地震保険がおりる基準も大切です。
損害区分の認定は「地震保険損害認定基準」に基づいて認定されます。
主要構造部分の損害額が、建物の時価の50%以上になれば、全損扱いです。
40%以上50%未満であれば大半損、20%以上40%未満であれば小半損、3%以上20%未満は一部損となります。
全損と認められれば、保険金額の100%が補償となりますが、大半損であれば60%、小半損であれば30%、一部損であれば5%が支払われます。
地震保険の対象になるのは、地震が起きたときから10日以内なので、早めに申請しましょう。
地震でアパートの壁や基礎に入ったヒビの補修方法は
アパートの壁や基礎に地震でヒビが入ったときには、早い段階で補修する必要があります。
補修方法はいろいろとありますが、ヒビの程度で変わります。
一般的には、幅が0.3mm以上、深さ4mm以上になれば、構造的にも影響を与える構造クラックとして扱われるサイズです。
アパートの基礎でも使われるのが、UカットやVカットシール工法でかなり一般的な補修方法です。
違いは使われるグラインダーの刃だけで、目的としては変わりません。
UカットもVカットもヒビが入った部分をディスクグラインダーでカットし、エポキシ樹脂を充てんすることが補修のポイントです。
ヒビが鉄筋まで届いているような状況では、専用の注射器を使いゆっくりとエポキシ樹脂を充填していくシリンダー工法がいいでしょう。
粘度の低いエポキシ樹脂を使うことで、ヘアクラックのように細いヒビにも対応できます。
鉄筋がさびてしまい、内部から押し出している場合、こうした工法では対処できません。
対象部分は強度を失うことから、まずは鉄筋まで斫りだして錆を取り除き、対象部分に防錆処理をおこないます。
いずれにしてもヒビ早めには補修しておく方が良いでしょう。
地震で発生したアパートのヒビは早めの対応が重要
地震が原因でアパートの構造部分などにヒビがはいれば、耐震性の低下だけではなく、将来的にも大きな問題を生じます。
保険が使える場合もありますが、素人では判断が難しいことから、早めに診断を受けることも考えなければいけません。
補修も時間とともに大掛かりなものになるため、早めに行動を起こすことが必要になるでしょう。