マイホームを建てるとき、「建蔽率」や「容積率」という言葉を目にしたことはないでしょうか。
普段の生活ではあまりなじみのない言葉ですが、マイホームに駐車場をつくるか否かを考えたときに、とても重要な言葉です。
この記事では、建蔽率や容積率の基礎知識と、駐車場をつくるときの緩和措置についてお話ししていきます。
駐車場は屋根があるかないかで建蔽率や容積率との関わりが変わってくるので、その点についても考えていきましょう。
駐車場の屋根について考える前に!建蔽率とは?
この記事では、マイホームの駐車場と屋根の関係性についてお話ししていきますが、まずはその前に建蔽率(けんぺいりつ)についての知識を深めていきましょう。
建築基準法において土地の使われ方には制限があり、建築後に災害があったときなど被害が大きくならないように、建蔽率によって一定の基準が定められています。
建蔽率の計算は、敷地面積に対する建築面積の割合によって求められます。
建築面積とは建物を真上から見たときの面積のことで、所有している土地、いわゆる敷地面積にどれくらいの割合で建物を建てられるのかを知ることができます。
この建蔽率ですが、土地の用途目的や建築制限によって割合の数値は変わってきます。
数値の幅は30~80%の開きがあり、所有している土地によってさまざまです。
ご自分が所有している土地の建蔽率が分からないときは、その土地を管轄している役場などで詳しく教えてもらいましょう。
建蔽率の数値次第では、理想とするマイホームを建てられないこともあるので、注意が必要です。
屋根付きの駐車場は建蔽率に含まれる!?
建蔽率はマイホームの大きさに直結します。
いくら大きなマイホームが建てたくても、建蔽率が低ければその希望をかなえることは難しくなります。
また、駐車場が建蔽率に含まれることになれば、マイホームの面積はさらに小さくなってしまうでしょう。
駐車場をつくるときに考えられるのは、屋根がついているかついていないかの2択になります。
車のことを考えて、安易に屋根付きの駐車場をつくることはとても危険です。
なぜなら、屋根付きの駐車場は建築物扱いとなり、建蔽率の計算で必要となる建築面積に含まれてしまうのです。
例えば、敷地面積が80坪に対して建蔽率が50%であったなら、40坪の建築面積が求められます。
しかし、屋根付きの駐車場を一台分つくってしまうと、そこから約7坪ほどが駐車場に当てられてしまうのです。
そうなってしまうと、マイホームの建築面積は33坪まで減ってしまうことになります。
もし、できるだけ建築面積を大きくしたい場合は、駐車場の仕様について考えなければならないでしょう。
建蔽率に含まれないかも?緩和される屋根付き駐車場の条件とは
駐車場が屋根のついていないタイプであれば、建蔽率に含まれることはありません。
なぜなら、建築面積に含まれるのは、壁または柱で囲まれた部分のことを指すためです。
そのため、壁や柱がいらない屋根なしの駐車場であれば、建築物とみなされないのです。
反対に、壁や柱によって駐車場に屋根がつくられている場合は、建築物とみなされるということになります。
しかし、ある一定の条件を満たしている場合、緩和される屋根付きの駐車場があります。
それは、カーポートと呼ばれる駐車場です。
駐車場の建蔽率においては、以下のような条件のもと緩和措置が受けられます。
・外壁のない部分が連続して4メートル以上であること
・柱の間隔が2メートル以上であること
・天井の高さが2.1メートル以上であること
・地階を除く階数が1であること
この条件を満たしていれば、車庫の柱から1メートルまでの部分は建築面積に参入されないと定められています(平成5年建設省告示1437号)。
一般的にガレージと呼ばれる駐車場などは、外壁があるため建築物と呼ぶことができるでしょう。
一方、柱と屋根だけでつくられたカーポートであれば、上記のような条件を満たすことで、建蔽率に含まれなくなる部分ができるのです。
駐車場と容積率に関係はあるの?容積率とは
ここまで駐車場と建蔽率についてのお話しをしてきましたが、容積率にも駐車場の屋根の有無が関係してくるのでしょうか。
その疑問にお答えする前に、まず容積率について簡単にご説明していきます。
容積率とは、土地に対する建物の延べ床面積の割合のことです。
土地は敷地面積のことで、延べ床面積は各階の床面積を合計した数値のことを指します。
延べ床面積を敷地面積で割ることで、容積率の値が求められます。
この容積率も、建蔽率と同じく土地の用途目的や建築制限によって割合の数値が変化します。
その値は50~1300%の間と定められています。
容積率については、敷地に接している道路の広さによっても変動することがあるので注意してください。
容積率もマイホームを建てるうえで重要な事柄になります。
もし、3階建ての家を建てたくても、容積率が低い場合、延べ床面積が3階分確保できずに、あきらめなければならないかもしれません。
駐車場が容積率にも含まれるのだとしたら、なおさら条件は悪くなってしまうでしょう。
それでは、容積率についても建蔽率のように駐車場に関する緩和措置があるのでしょうか。
容積率にも駐車場の緩和措置がある!
建蔽率は駐車場に屋根があったとしても、一定の条件さえクリアすれば緩和措置により建蔽率への影響を抑えられます。
それと同様に、建物の延べ床面積に影響する容積率に関しても、駐車場が関係してくるのでしょうか。
容積率による駐車場の緩和措置があるかという問いに関しては、「ある」と言えます。
これは建築基準法においても以下のように定められています。
「自動車車庫、自転車置場等は、建築物の各階の床面積の合計の5分の1までは容積率計算上の延べ面積に算
入しない」
つまり、単純計算であれば、延べ床面積が40坪に対しては8坪までの駐車場であれば容積率に含まれないということになります。
延べ床面積が減れば、それだけ駐車場として許容される範囲も減り、容積率にも影響が出かねないということです。
もちろん柱や屋根のついていない駐車場であれば、建物とみなされないので容積率に影響はありません。
しかし、カーポートやガレージなど建物とみなされる駐車場については、容積率においてこの緩和措置を受けられる可能性があることを覚えておくと良いでしょう。
建蔽率と容積率だけじゃない!駐車場をつくる時の注意点
マイホームに駐車場をつくるのであれば、建蔽率や容積率だけじゃなく、用いられる材料についても注意をしなければなりません。
屋根や柱、または壁があるカーポートやガレージは建築物として扱われます。
そのカーポートやガレージには、燃えにくい材料で内装を仕上げることが義務付けられるのです。
燃えにくい材料には、モルタルやコンクリートなどが考えられます。
駐車場の内装に木材を使用することもできますが、その場合は天井や壁の範囲10%以内に留めるようにしてください。
また、マイホームを建てる土地が防火地域や準防火地域だった場合、さらに規制が厳しくなります。
防火地域と準防火地域とは、火災が燃え広がるのを防ぐために、建築物に規制がかけられる地域のことです。
そのような土地の場合は、駐車場の屋根や外壁をより防火性能を高めた材料にしなければならないので、事前に防火地域か準防火地域に指定されていないかについても確認しておきましょう。
条件を満たして駐車場の緩和措置を受けよう!
建蔽率や容積率が少し変わるだけで、マイホームの広さや見た目が大きく変わります。
駐車場は屋根や柱の有無で扱われ方が変わり、それによって建蔽率や容積率にも影響を与えますので、仕様や構造は入念に考えましょう。
駐車場を工夫すれば、一定の条件のもと緩和措置を受けることは可能です。
満足のいくマイホームを作るためにも、計画的な駐車場づくりを目指しましょう。