マンションを借りるとき、まずは不動産屋さんに物件を紹介をしてもらって、大家さんと賃貸契約をするのが一般的ですよね。
入居後は管理会社の管理人さんなどに、マンションのルールを教えてもらったりして、新生活をスタートさせることができます。
では、入居後になにかトラブルがあった場合、誰に言えばいいのでしょう。
そこで、物件の所有者である大家さんと管理会社の立場の違いや、入居者との関係性の違いなどをご説明します。
大家さんが管理会社を通さず自分で管理している場合
小規模なマンションやアパートなどの場合、大家さんが物件に住んでいるか、すぐ近くに住んでいて、管理会社に頼まず自分で建物の管理をしている場合があります。
ごみ置き場の掃除をしているのも、廊下の電球を取り換えているのも、絶対ではありませんが、すべて大家さんです。
入居者が家賃を滞納した場合、催促するのも、もちろん大家さんです。
したがって、なにかトラブルがあったときに対応してくれるのも、大家さんということになります。
一番シンプルで、入居者にとってもわかりやすいですよね。
入居者と関わる機会も多く、どの部屋にどんな人が住んでいるかわかっていて、マンションやアパートに関する全権を持っているので、ご近所トラブルの際など心強いのではないでしょうか。
逆に、大家さんの心証を悪くするようなことがあると、住みづらくなる可能性もありますので、そこは少し注意が必要です。
しかし、今ではこのような管理形態は、全物件の1割にも満たないようです。
大部分の大家さんが、物件の管理を管理会社に任せています。
では、入居者の立場から見て、大家さんが管理する物件と管理会社の管理する物件では、どのような違いがあるのでしょう。
大家さんが管理会社に管理を委託している場合
管理会社が行う賃貸の管理形態には、2つの種類があります。
ひとつめは「管理受託契約」による管理です。
大家さんが管理会社に管理を委託して、管理会社が管理全般を行います。
この場合、入居者は大家さんと賃貸契約を交わしますが、顔を合わせることは、ほとんどありません。
契約の範囲にもよりますが、共用部分の掃除・メンテナンス、家賃管理、入居者の対応なども管理会社が行います。
トラブルが発生した場合も、管理会社に雇われた管理人さん、もしくは管理会社の社員が対応します。
ここが、大家さんが管理している場合との、大きな違いですね。
入居者も、なにかあった場合は基本的に管理会社に対応を求めますが、中には満足な対応をしてくれない管理会社もあるようです。
そんな場合は、最終手段として、大家さんに訴えるという方法もあります。
なぜなら、管理会社にとって大家さんは大切な顧客です。
そのため、大家さんから管理会社に働きかけてもらえれば、管理会社も動かざるを得ない、という事情があるからです。
大家さんが管理会社とサブリース契約をしている場合
賃貸物件のもうひとつ管理形態に「サブリース契約」による管理というものがあります。
大家さんが管理会社に物件を貸し、管理会社がすべてを管理するという方法です。
この場合、入居者は大家さんではなく、管理会社と賃貸契約を交わすことになります。
言い換えると、大家さんから管理会社が物件を借りて、管理会社が入居者に又貸しするというイメージになりますね。
サブリース契約を交わした管理会社は、入居者の募集から建物のメンテナンスや管理、家賃管理や入居者対応まで、すべてのことに責任を負います。
したがって、なにかトラブルがあった場合、入居者は契約を交わした管理会社に対応を求めることになります。
物件の所有者である大家さんが別にいるといっても、入居者にはまったく関係のないことで、契約関係すらありません。
つまり、管理会社以外に訴えるところがないのが、先ほどの管理受託契約との違いと言えます。
ただ、入居者を募集するのも管理会社ですから、あまり雑な対応をするというのは、考えにくいとも思います。
大家さんと管理会社の違いを知ったうえでの物件選び
ここまで3つのパターンをご紹介してきましたが、物件選びをするうえで、あまり大家さんや管理会社を意識して選ぶ人は、少ないのではないかと思います。
賃貸の場合は特に、ほとんどの人が、物件の立地や部屋の間取り、家賃などの条件を重視する傾向にあります。
しかし、集合住宅である以上、完全にトラブルを避けて通ることは難しいのが現状です。
上の階から水漏れがして自分の部屋が水浸しになったり、隣の部屋の子供が毎日うるさく騒いだりと、自分がなにもしなくても、トラブルは向こうからやってきます。
逆に、そのつもりがなくても、不注意で自分がトラブルの加害者になってしまうことも、ないとは言えません。
そのような場合に備えて、大家さんや管理会社、その管理形態の違いについて知ったうえで、管理の行き届いた対応の良い物件を選ぶというのも大切ではないでしょうか。
一番違いを知っているのは実は不動産屋さんである
とはいえ、一般人がこの物件はどんな管理形態で、どんな対応をする大家さんなのか、調べることはかなり困難です。
では、どうしたらよいか。
それは、物件を紹介してくれる不動産屋さんに聞く、ということです。
なぜなら、不動産屋さんは、大家さんと管理会社の両方に通じていて、中には自社管理物件を持っている不動産屋さんもあります。
毎日毎日たくさんの物件を扱っているプロであり、管理体制の良い物件、悪い物件の違いにも精通しています。
お世話をしたお客さんから、情報をもらうこともあるでしょう。
不動産屋さんと仲良くなって、対応の良い大家さんや管理人さんのいる物件を教えてもらうのが、一番確実な方法と言えます。
不動産屋さんだって人間ですから、大家さんや管理人さんのことを気にしているお客さんに対して、わざわざ問題のある物件を紹介しませんよね。
ぜひ、物件探しの条件に、管理の良さという項目を付け加えてみてください。
それにはまず、良い不動産屋さんを見つけるという、ハードルもあることはありますが。
違いを知らなかった私のトラブル体験談
かくいう私も、以前トラブルに巻き込まれたことがありました。
部屋の広さと家賃の安さで即決した、とある賃貸マンションでの出来事です。
入居当日、ゴミ置き場を掃除しているおじいさんを管理会社の人だと思い、こちらの方から「管理人さんですか?今日引っ越してきました〇〇です。よろしくお願いします」と挨拶しました。
おじいさんも機嫌よく「201号室の人やね。私は105号室にいるから、なにかあったら言ってください」と、感じの良い対応でした。
その翌日の早朝5時ごろ、男の人の怒鳴り声で目が覚めました。
どうも、マンションのすぐ前で喧嘩をしているようでした。
そのときは怖くて外を確認することもしなかったのですが、夕方、頭に包帯をぐるぐる巻きにしている管理人のおじいさんを見て、ハッと気付いたのです。
あの喧嘩の声は、この人の声でした。
しかも悪いことに、私が管理人さんと思っていたこのおじいさん、実は大家さんでした。
管理人と大家さん、見た目で違いがわかるわけではないのに、勝手な思い込みでした。
その後、同じようなことが何度かありました。
クレームをつけようにも、言いに行くところが大家さん本人しかなく、しかし怖くて言えないという、八方ふさがりの状況でした。
そして2年後、私は契約を更新をすることなく、引っ越しすることにしたのでした。
備えあれば憂いなし。失敗のない物件選びのために
この苦い経験があってから、何度か引っ越しもしたのですが、その後大家さんが管理している物件に入居することはありませんでした。
大家さんの管理物件が悪いと言っているわけではありません。
逆に、良い大家さんに当たることもあるのです。
そして、たとえ管理会社が管理する物件であっても、安心とは言えないのです。
わからないからこそ、わかる人にきちんと聞いてみるという姿勢が、安心な物件選びの一番の近道ではないでしょうか。