集合住宅でご近所トラブルの一番の原因となるのは、やはり騒音問題でしょう。
特に木造アパートでは、マンションなどよりも防音性能が低いため、騒音問題は必至といえます。
そこで今回は、木造アパートの上下階の騒音問題に絞って、その原因と対策を勉強していきましょう。
木造アパートで騒音問題が起こりやすいのはなぜ?
まずは、木造アパートで騒音問題が起こりやすい原因をみていきます。
なぜ木造アパートでは、マンションなどと比べて騒音問題が起こりやすいのでしょう。
それは、両者の構造の違いに起因します。
マンションなどでは、一般的に鉄骨鉄筋などで躯体を作り、壁や床はコンクリートを使って各戸を仕切っています。
そして、そのコンクリートの厚さが、防音の性能に比例しています。
それに対して木造アパートは、梁や柱は木で作ってあり、壁や床は構造用合板などで仕切られています。
壁と壁の間には、断熱材や筋交いがあるだけで、防音材が入っていない場合は、音を遮るものがありません。
そのため、上下左右の騒音がいわゆる筒抜け状態になるのです。
壁や床はただの目隠し的なもので、そもそも防音に重きを置いて作られていないものと思っておきましょう。
その分、木造アパートはマンションなどに比べて建築費が安いため、家賃が安いというメリットがあるのです。
つまり、家賃の安さで木造アパートを選んだ場合は、騒音は覚悟しなければならないものといえるでしょう。
木造アパートの上下階で一番多い騒音問題とは
では具体的に、木造アパートの上下階の騒音にはどのようなものがあるのでしょうか。
やはり一番多いのは、上の階の足音が下の階に響くというクレームです。
ある調査会社の実験で、木造アパートの2階の足音を1階で測定したところ、52.2dBだったそうです。
ちなみに騒音レベルの目安としては、静かなオフィスやレストランで50dB、地下鉄内が80dB、鉄道ガード下が100dBくらいです。
そして環境基準法では、住宅地においては昼間は55dB以下、夜間は45dB以下が望ましいと定められています。
基準からいえば、この数値は特別高いとはいえませんが、1階で聞いた人の印象によると「何が起こったんだ?」と感じたといいます。
また、あえてドスドス歩いた場合は、55.9dBで、その揺れとあまりの音の響きに衝撃を受けたそうです。
感じ方は人によって違うかもしれませんが、問題は「歩く」という特別ではない、日常的な動作で、すでに夜間の基準を超えているという点です。
夜、歩くだけでもうるさいのに、ドスドス歩いたり、物を落としたり、椅子を引いたりするとそれは騒音以外のなにものでもありませんね。
実験では、歩くだけでこのレベルならば、音を出している方はさほど実感がなくても、階下では体に音を感じるほどの騒音であると結論づけていました。
木造アパートの下の階からの騒音とは
ところで、上の階の騒音が下の階に響くのはよく聞く話ですが、下の階の音はどうでしょう。
木造アパートの場合は、上下左右ともコンクリートではありませんから、話し声などは筒抜けとよく聞きます。
特に、下の階から聞こえやすいのは声や音楽です。
これは下の階に住む人次第といえるでしょう。
声の大きな人、耳が聞こえにくい人などであれば、おのずと聞こえてくる声やテレビの音は大きくなるでしょう。
それ以外にも、悩み相談などをみると、壁を叩く音、ドアの開け閉めの音、ドタバタ走る音、水を使う音、すべて聞こえるといいます。
下の階の足音も普通に聞こえるため、今どの部屋に行ったなどがすぐわかるとの恐ろしい意見もあったほどです。
これは言い換えれば、他人にプライベートが筒抜けということです。
どうやら木造アパートでは、生活するだけで上下左右すべてに騒音をまき散らしている、そして聞かれていると思っておいた方がよさそうです。
では、騒音をまき散らさないように、また騒音から身を守るためには、具体的にどう対策するべきでしょう。
木造アパートの上下階の騒音に有効な対策とは
実は上下階の騒音実験には続きがあって、2階の床はフローリングだったのですが、床材を変えて実験してみたそうです。
フローリングは、畳やじゅうたんと比較して、音が響きやすいといわれています。
日常生活でよくあることですが、フローリングにスプーンなどを落とすと「ガチャーン」と音が響きますが、畳やカーペットでは、あまり音がしませんね。
これは、柔らかい床材に音や衝撃が吸収されるからです。
では、木造アパートの場合、単にカーペットを敷けばよいのかというと、そうでもありませんでした。
実験でまずわかったことは、防音カーペットを敷くと、上の階では途端に静かになったように感じますが、下の階ではそれほどでもないということです。
そこでいろいろ試した結果、カーペット1枚ではなく、異素材のものを組み合わせると騒音の軽減に効果があるということがわかりました。
特に、ゴム素材のジョイントマットを敷いた上に防音カーペットを敷いてみたところ、かなりの騒音が改善されたそうです。
普通に歩く音で29.6~34dB、ドスドス歩く音でも40dB前後まで、音が軽減できたということです。
上の階の人は、自分の出す騒音を軽減するためにも、素材違いの2重の敷物を敷くことをおすすめします。
なぜなら、下の階の人は、上の階からの騒音から身を守る方法がないからです。
木造アパートの下の階からの騒音にはどう対応するか
では、下の階からの騒音から身を守るためにはどうしたらよいでしょうか。
もちろん、2重の敷物は下の階の騒音も多少は低減します。
しかし、夜など床にじかに布団を敷いて寝ていては、階下の音に耳を近づけていることになります。
嫌でも話し声やテレビの音が耳に入ってくるでしょう。
よく簡単に、耳栓をすればよいなどといいますが、確かに耳栓をしていれば音を気にせず眠れるかもしれません。
しかし、起きるときには目覚ましのアラームなどが聞こえません。
決まった時間に勝手に目が覚めるような人でなければ、毎日のことなので、これは返ってストレスになってしまいます。
そこで、寝る際にはベッドや厚めのマットレスなどを使用して、耳と階下との距離を少しでもあけることが必要でしょう。
ベッドの下に衣類や本の収納ケースを置くなど、音を遮るものを置くことも有効です。
音の聞こえ方は、音との距離、そしてその間にある遮るものによってかわります。
音から体を遠ざける、音との間に緩衝材となるものを挟むことが対策といえるでしょう。
このように、木造アパートの上下階の騒音は、そもそもあるものとして対策することが必要になってきます。
木造アパートの上下階の一番の騒音対策は気遣い
しかし、実は木造アパートの騒音の一番有効な対策は、このような物理的なものではありません。
必要なのは、上下階お互いの気遣いです。
上の階の人は、下の階の人は上の階より騒音が多いはずと心得ましょう。
まずは自分が、下に音を響かせないよう対策しましょう。
そして、下の階の人も、下の階だから騒音に気を遣わなくてよいわけではありません。
上にも人が住んでいると心得て、声やテレビの音量には十分注意しましょう。
引っ越しした際など、上下の階に挨拶にいくなどして、ある程度知り合いになっておくことも有効でしょう。
また、在宅の時間帯や家族構成などの情報を交換するなどして、静かにするべき時間帯などを知っておかなくてはなりません。
すべての人が自分と同じ時間帯で生活しているわけはないですし、子供がいれば走り回ります。
住人同士仲良くなってしまえば、ある程度気を付け合うことができますし、注意しあうことも可能です。
お互いが気を付け、我慢するところは我慢して暮らす、それが一番必要な対策といえるでしょう。
自分でできる騒音対策をして、周囲に気遣いを
騒音が気になる人は、物件探しの際には、人のいる時間帯に内覧して、騒音の度合いを確かめるべきでしょう。
木造アパートでも、なかには騒音に気を遣い、壁に防音材などが入れてある場合もあります。
壁の構造などを不動産屋さんや大家さんに確認することも必要です。
そして入居したならば、自分でできる防音対策をして、周囲に気を遣って生活することが木造アパートでは大切といえるでしょう。