家を建てるとき、内装はもちろん、外壁もこだわりたいですよね。
外からうかがえる、おしゃれな窓や扉にあこがれるものです。
しかし、防火地域や準防火地域に建物を建設する場合、開口部を防火戸にする必要があります。
防火地域や準防火地域に建物を建設する場合でも、窓や扉をおしゃれなものにすることはできるのでしょうか。
防火地域や準防火地域に指定される場所とは?
建物が密集する地域では、防火地域や準防火地域に指定されていることがあります。
万が一火災が起きてしまった場合、隣の建物との距離が近いがゆえに、火が燃え移って周囲に被害が大きく拡がる可能性がありますよね。
こうしたことを防ごうと、建築基準法ではこうした地域に建物を建設する場合、外壁に設置される窓や扉などの開口部を防火戸を使用するように定めています。
おしゃれな窓にしたいと計画していても、防火地域や準防火地域では防火戸でなければならない場合もあるため注意しましょう。
では、具体的にどのような地域が当てはまるのでしょうか。
●防火地域
中心市街地や商業施設が立ち並び、建物が密集する人通りや交通量が多い場所が指定されます。
また、火災が起きたときに、緊急車両が通れる道路や線路沿いなども指定されていることが多いでしょう。
防火地域であるかどうかは、インターネットで調べることができます。
調べ方は、「◯◯(市・区・町・村) 防火地域」と検索してみてください。
●準防火地域
防火地域を囲むよう、広範囲に指定されている地域です。
建設制限が設けられているものの、その制限は防火地域よりもやや緩やかになります。
おしゃれな窓にはできない?それでも必要な防火設備
それでは、防火地域や準防火地域に指定されている場合、どんな規制があるのかみていきましょう。
防火地域に建設する建物が延べ床面積100平方メートルを超える場合、耐火建築物にする必要があり鉄筋コンクリート造や耐火や断熱性の高い材料で覆った鉄骨造に限ります。
また、延焼のおそれがある窓や扉などの外壁開口部を防火設備にするよう、定められているのです。
こうした開口部は防火戸や防火性の高い網入りのガラスを設置します。
扉であれば、鉄製にすることで防火戸になります。
しかし、おしゃれな窓を計画していた方からすると思ってもない条件かもしれません。
ただ、窓や扉などの開口部を閉鎖できることで、火災による火の燃え移りを留める時間を伸ばせるのも事実なのです。
延焼を防止し、遮断できる防火戸は、住宅が密集する防火地域では欠かせない規制であることが分かりますね。
準防火地域は準耐火建築物なら木造住宅も可能
一方準防火地域は、延べ床面積の違いにより規制が異なります。
①延べ床面積1500m²超の場合
②延べ床面積500m²超1500m²以下の場合
③延べ床面積500m²以下の場合
一般的な家庭の1戸建てであれば多くの場合③に当てはまりますので、③をもう少し深掘りしていきます。
【Ⅰ.1~2階の場合】規制なし
【Ⅱ.3階の場合】耐火または準耐火建築物または技術的基準適合建築物
【Ⅲ.4階以上】耐火建築物
防火地域では難しかった木造でも、2階までなら規制なく木造住宅が可能です。
3階であれば、主要構造部を耐火被覆し、準耐火建築物となれば木造住宅も可能です。
ただ窓などの開口部は隣地境界線、道路中心線からの距離で面積制限があるので確認しましょう。
準防火地域では、工夫次第で木造のおしゃれな家も叶えられることでしょう。
まずは、防火地域や準防火地域であるかどうかを確かめてみてください。
もうひとつ、防火地域と準防火地域をまたいでいる区域についてお話しします。
この場合、防火上の制限が厳しい地域の規制に沿って建設しなければなりません。
防火地域と準防火地域をまたいでいれば、防火地域で定められた規制によって建設する必要があります。
おしゃれな扉や窓が理想なら延焼線を避ける
防火地域と準防火地域による、建設制限についてお話ししてきました。
しかしそうした制限のなかでも、おしゃれな家を建てたいと思いますよね。
ここからは、防火地域でもできる木製のドアや窓のサッシを取り入れた事例をご紹介します。
まずは、延焼線がポイントです。
建物を土地いっぱいに建築するとなると、ほとんどの開口部を防火仕様のものにしなければなりません。
しかし、延焼の恐れのない部分に関しては、木製の扉やサッシにすることができます。
(例1)
奥行きのあるアプローチを設けて、延焼線にかからない場所に玄関を設けました。
緑を植えれば、自然を感じる素敵なアプローチになりますよ。
お好きなお花を植えてみるのもいいですね。
玄関にある木製の扉との相性も抜群です。
(例2)
延焼線にかからない場所に窓を設けました。
木製のサッシが、暖かな雰囲気を醸し出してくれます。
窓があると、昼間の雰囲気と夜の雰囲気を感じられますね。
おしゃれにしたい部分だけに費用をかける
延焼線を避けるにも、環境によっては避けられないこともあるでしょう。
そのようなときは、防火仕様のなかでおしゃれなものを取り入れることも検討してみてはいかがでしょうか。
防火仕様であれば延焼線を気にする必要もありませんし、防火地域でも準防火地域であっても取り入れることができます。
最近では、防火仕様の木製窓サッシや玄関ドアも増えてきました。
ただし、比較的高額なものが多いので、予算との兼ね合いでメインになる部分にだけ取り入れるのもいいでしょう。
また、予算的なことや家のコンセプトに合っていれば、袖壁(そでかべ)や庇(ひさし)をつけることも考え方の一つです。
袖壁は建物から外部へ突出している壁のため、防火や防音、目隠しといった用途がありますし、庇は日除けや雨除けになりますよ。
どちらも防火設備と認められるため、利用しない手はないですね。
袖壁によって囲われた玄関ポーチの奥には、木製の玄関ドアが暖かく迎え入れてくれます。
暖かみと品のある、おしゃれな外観になりますよ。
準防火地域ならではの網入りガラス!網なしで窓をクリアに!
最後に、窓ガラスについてお話しします。
防火地域や準防火地域ではケースによって違いはあるものの、外壁の開口部は延焼の恐れがあれば防火性にあるものを設置しなければならないことをお伝えしました。
防火ガラスといえば、網入りのガラスです。
金属の網が入っていて、火災の侵入を抑える効果が期待できます。
また、火災時にガラスが割れてしまったとしても、金属の網が入っているおかげで、ガラスの脱落を防ぐ働きもあるのです。
こうした効果がある網入りのガラスですが、せっかくなら視界をクリアにして景色を楽しみたいですよね。
実は、網の入っていない耐熱ガラスが一般住宅でも多く採用されるようになってきました。
特殊な加工と超強化処理がされているため、防火設備用の耐熱ガラスです。
そうなると火災時の破損が気がかりですが、破片は粒状になる構造のため、大きなガラス片でケガをするリスクは少ないでしょう。
網目がないガラス窓を取り入れることで、解放感のあるおしゃれな空間が生まれます。
このように、制限のあるなかでもできることはたくさんあるのです。
安心して暮らせるおしゃれな家
防火地域や準防火地域では、様々な規制があります。
しかし、それはあなたやあなたの家族を守るためのものなのです。
そして、条件があるなかでも、工夫次第でおしゃれな家を叶えられる可能性もあります。
おしゃれでなおかつ安心して暮らせる家を計画してみましょう。